建設業許可の専任技術者!資格や実務経験の要件をプロが完全解説

こんにちは。おのっちです。

建設業許可を取得したいと考えたとき、多くの経営者様が最初にぶつかる、そして最も高く分厚い壁。

それが「専任技術者(センニンギジュツシャ)」の要件です。

「ウチの会社には長い経験がある職人がいるから大丈夫だろう」とタカをくくっていたら、書類が揃わずに申請を断念せざるを得なくなった……。

そんな悲しい事例を、私はこれまで数えきれないほど見てきました。

特に、急な退職で技術者が不在になってしまった場合の焦りは、言葉では言い表せません。

許可がなくなれば、500万円以上の工事を受注できなくなり、会社の売上に直結するからです。

まさに経営の生命線とも言えるこのテーマ。

この記事では、難解な法律用語を極力使わず、私が行政書士として現場で培った「生きた知識」と「実務の裏技」を交えて、徹底的にわかりやすく解説します。

「定款に日付がない」といった細かい悩みから、将来を見据えた採用戦略まで、あなたの疑問を全て解消するつもりで書きました。

これを読めば、あなたの会社が取るべき次の一手が必ず見えてくるはずですよ。

  • 専任技術者と現場の配置技術者の法的な違いと運用ルール
  • 国家資格、指定学科、実務経験の3つのルートの詳細な証明方法
  • 書類が足りない!というピンチを切り抜けるための実務テクニック
  • 2025年の法改正で変わる金額要件やテレワーク活用の最新情報

建設業許可の専任技術者に関する要件と役割

まずは、この制度の全体像を「解像度高く」理解しましょう。

単に「資格があればいい」という話ではありません。

法律がなぜこのポストを求めているのか、その本質を知ることで、イレギュラーな事態にも対応できる応用力が身につきます。

専任技術者と配置技術者の違いや役割

ここが一番の誤解ポイントであり、コンプライアンス違反(法令違反)が起きやすい場所です。

「技術者は技術者でしょ? 現場に行って何が悪いの?」と思われるかもしれませんが、建設業法ではこの二つを明確に、厳格に区別しています。

専任技術者(営業所専任技術者)の主戦場は、あくまで「営業所(オフィス)」です。

彼らの役割は、お客様と交わす工事請負契約の内容が技術的に適正かどうかを判断したり、見積もりの積算を行ったりすること。

ココがポイント

つまり、契約締結のプロフェッショナルとして、営業所に「常駐」していなければなりません。

一方で、配置技術者(主任技術者・監理技術者)の主戦場は「工事現場」です。

ココがポイント

彼らはヘルメットを被り、現場の工程管理、品質管理、安全管理を指揮します。

物理的に現場にいなければ仕事になりませんよね。

「じゃあ、専任技術者が現場に出たらどうなるの?」

答えはシンプルで、原則として建設業法違反になります。

専任技術者が現場に行ってしまえば、その間、営業所は技術的な管理者が不在(空っぽ)の状態になりますよね。

これは「専任」の義務を果たしていないと見なされるのです。

注意ポイント

ここだけは注意!特例の条件

ただし、例外もあります。「特例」として以下の条件を全て満たす場合に限り、専任技術者が現場の技術者(主任技術者)を兼ねることができます。

その営業所で契約した工事であること

  • 工事現場が営業所から近く、常に連絡が取れること(防災活動などに対応できる距離)
  • 専任を要しない現場であること(監理技術者が必要な大規模工事などはNG)

「近所の小さな現場ならOK」という認識でいる方も多いですが、解釈は自治体によって厳格さが異なります。必ず事前に手引きを確認してくださいね。

一般と特定建設業許可で異なる基準

建設業許可には「一般」と「特定」の2つの区分があります。

これ、単に会社の規模で決まるわけではありません。

「元請として、下請さんにどれくらいの金額の仕事を出すか」という一点で決まるんです。

この区分は、専任技術者に求められるスペックにも直結します。

  • 一般建設業許可:下請発注額が比較的少ない場合。2級施工管理技士や実務経験のみでも専任技術者になれます。これから許可を取る方の9割以上はこちらです。
  • 特定建設業許可:元請として多額の工事を下請に出す場合。責任が非常に重いため、原則として1級の国家資格などの高度な資格が必須となります。

「自分の会社はどっちに当てはまるんだろう?」

「知事許可と大臣許可の違いもよく分からない」

という方は、許可の区分について専門的に解説した以下の記事を必ずチェックしてください。

ここを間違えると、要件を勘違いして採用計画が狂ってしまうこともあるので要注意ですよ。

👉 建設業許可の種類と区分!一般と特定や知事と大臣許可などの違い

国家資格や指定学科による要件の確認

専任技術者として認められるためのルートは、大きく分けて「国家資格」「実務経験」「大臣認定」の3つがあります。私がお客様に強くおすすめしているのは、圧倒的に「国家資格ルート」です。

なぜなら、審査のスピードと確実性が段違いだからです。資格者証(合格証明書)のコピーを1枚提出すれば、それだけで「技術力あり」と認められます。面倒な過去の工事経歴の掘り起こしは一切不要。これ、実務では本当に天と地ほどの差があるんですよ。

対応する資格は、業種ごとに細かく紐づけられています。

業種 主な対応資格(例)
建築一式工事 1級・2級建築施工管理技士、1級・2級建築士
土木一式工事 1級・2級土木施工管理技士、建設機械施工技士
電気工事 電気工事施工管理技士、電気工事士(※実務経験要)
管工事 管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者(※実務経験要)
内装仕上工事 建築施工管理技士(仕上げ)、建築士、技能検定(内装)

特に「1級建築施工管理技士」や「1級土木施工管理技士」は、それ1つで10種類以上の業種の専任技術者をカバーできる万能資格です。これを持っている方が社内に一人いるだけで、事業拡大のチャンスが劇的に広がります。

(出典:国土交通省『営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧』)

指定学科の卒業による実務経験の短縮

「資格は持っていないけど、そういえば高校は工業科だったな……」

そんな社長、あるいは従業員さんはいませんか? もしそうなら、それは宝の山かもしれません。建設業法では、許可を受けようとする業種に関連する「指定学科」を卒業していれば、必要な実務経験の期間が大幅に短縮される特例があるんです。

通常、資格なしで専任技術者になるには「10年」の実務経験が必要ですが、これが以下のように短縮されます。

  • 大学(高等専門学校・旧専門学校含む)の指定学科卒:卒業後 3年以上 の実務経験
  • 高校(旧制中学含む)の指定学科卒:卒業後 5年以上 の実務経験

10年が3年や5年になるのは、採用戦略上とても大きいですよね。ただし、ここには注意点があります。最近の大学は学部学科の名称がおしゃれになりすぎていて、「社会環境デザイン学科」や「都市システム創成学科」など、名前だけでは土木なのか建築なのか判別できないケースが増えています。

この場合、卒業証明書だけでなく「成績証明書(履修単位がわかるもの)」を取り寄せ、行政庁の窓口で「このカリキュラムは土木工学に該当しますか?」と個別に照会をかける必要があります。私もよくこの事前協議を行いますが、意外と認められるケースが多いので、諦めずに確認することをおすすめします。

実務経験10年で証明する場合の書類

資格もなく、指定学科も出ていない。そんな場合の「最後の砦」が、10年間の実務経験による証明です。しかし、行政書士の間では、これを「ドキュメント・ウォー(書類戦争)」と呼んで恐れています。それくらい、証明の難易度が高いのです。

役所は「10年やってました」という口頭の申告は1ミリも信じてくれません。客観的な証拠書類のみが真実です。具体的には、以下の書類を10年分(例えば1年に1件ずつ、計10件以上)、期間の空白なく積み上げる必要があります。

  1. 工事の実績を証明する書類工事請負契約書、注文書、請求書(+通帳の入金記録)など。特に請求書の場合、「工事一式」というざっくりした品名では不採用になることが多く、見積書や図面を添付して「何の工事か」を立証しなければなりません。
  2. 在籍を証明する書類その工事期間中、申請者がその会社に在籍していたことを証明する公的書類。厚生年金の被保険者記録や、雇用保険の加入履歴などが求められます。

よくある失敗が、「10年前の書類なんて捨ててしまった」「前の会社が倒産していて連絡が取れない」「個人事業主時代の確定申告書がない」といったケースです。こうなると、どんなに腕の良い職人さんでも、書類上は「未経験」扱いになってしまいます。日頃からの書類整理がいかに重要か、痛感させられる瞬間です。

営業所における常勤性や専任の定義

「専任技術者」というからには、名義貸しは許されず、その営業所に常駐して職務に専念していなければなりません。これを「常勤性」と言います。

審査の現場では、以下のポイントで常勤性が厳しくチェックされます。

1. 通勤距離と生活実態

原則として、自宅から営業所まで公共交通機関等を使って片道2時間程度で通勤できることが目安です。「住民票は沖縄だけど、東京の営業所の専任技術者です」というのは、単身赴任などの合理的な理由と、東京での居住実態(アパートの賃貸契約書や公共料金の領収書)がない限り認められません。

2. 給与の支払い実態

無給では常勤とは認められません。法人の場合は役員報酬や給与賃金台帳、従業員の場合は健康保険証(事業所名が記載されたもの)や雇用保険証などで、「その会社に雇われていること」を証明します。

3. 在籍確認(実地調査)

最近は減りましたが、申請後に突然、行政庁の職員が営業所に電話をかけてきたり、直接訪問してきたりすることがあります。そこで「○○さんは今日は来ていません(というか普段もいません)」なんて答えようものなら、虚偽申請として大問題になります。専任技術者は、営業所の営業時間内は常にそこにいるのが基本ルールなのです。

建設業許可の専任技術者における実務と変更

無事に許可が取れた後も、安心はできません。建設業許可は「取って終わり」ではなく、維持管理していくものです。ここでは、日々の経営の中で直面する兼務の問題や、法改正への対応、そして絶対に避けたい「許可取り消し」のリスクについて解説します。

代表取締役や他業務との兼務の可否

日本の建設業者の大半は小規模事業者です。「社長が現場に出て、営業もして、経理もやる」なんて会社はざらですよね。そこで気になるのが、「社長(代表取締役)が専任技術者を兼ねることはできるのか?」という点です。

結論から言えば、可能です。むしろ、最もスタンダードな形です。

建設業許可には「経営業務の管理責任者(経管)」という必須ポストもありますが、これを「代表取締役」が務め、さらに「専任技術者」も兼任する。これは同一営業所内であれば全く問題ありません。いわゆる「一人親方の法人化」などはこのパターンですね。

また、一人の人間が「複数の業種」の専任技術者になることも可能です。例えば、一級建築士の資格を持っていれば、建築一式、大工、屋根、内装、タイル……といった関連業種の専任技術者を一人ですべてカバーできます。

絶対にやってはいけない「他法令」との兼務

ただし、絶対にNGなのが「他社の専任技術者」や「他の法律で専任を求められるポスト」との兼務です。

例えば、同じ人物が「A建設会社の専任技術者」でありながら、「B不動産会社の専任の宅地建物取引士」であることはできません。建築士事務所の「管理建築士」も同様です。これらは国のデータベースで照合されるため、隠していても必ず発覚し、最悪の場合は許可取り消し等の処分を受けます。

実務経験証明書や必要書類の書き方

実務経験で申請を行う場合、「実務経験証明書(様式第9号)」という書類を作成します。これは、あなたの技術者としての履歴書のようなものです。

書き方のポイントは、「申請しようとする業種に合致した内容かどうか」です。

例えば、「とび・土工工事」の許可を取りたいのに、証明書に書かれた工事内容が「戸建て住宅の基礎工事(コンクリート)」ばかりだったとします。これはOKです。しかし、「ブロック塀の設置」ばかりだと、「それはブロック工事の実績では?」と突っ込まれる可能性があります。業種ごとの工事内容の定義を正確に理解して記載する必要があります。

また、この証明書には、経験を積んだ当時の勤務先の「代表者印(実印)」が必要です。

これが最大の難関になることがあります。「前の会社を喧嘩別れで辞めたからハンコをもらいに行けない」「前の会社が倒産していて社長と連絡が取れない」……。こうなると、実務経験を証明する手段が絶たれてしまいます。私が常々「退職するときは飛ぶ鳥跡を濁さず、円満に」とお伝えしているのは、将来独立するときにこのハンコが喉から手が出るほど欲しくなるからなんです。

変更届の提出期限や不在時のリスク

専任技術者が退職したり、異動になったり、あるいは死亡してしまった場合。会社にとっては悲しんでいる暇もないほどの緊急事態です。建設業法では、専任技術者に変更があった場合、「2週間(14日)以内」に変更届を提出しなければならないと定められています。

これは他の届出(決算変更届の4ヶ月など)と比べても極めて短い期限です。もし14日を過ぎてしまうと、建設業法第50条に基づき、懲役や罰金、あるいは過料の対象となる可能性があります。

そして、罰金よりも怖いのが「許可の取り消し」です。

専任技術者は許可の「必須要件」です。つまり、技術者が不在の期間が1日でもあれば、その時点で要件を満たさなくなり、許可を取り消されてしまいます。一度取り消されると、5年間は再取得ができません。これは事実上の廃業宣告に近いものです。

「後任が見つかるまで待ってほしい」という言い訳は通用しません。常に「もし今の技術者が辞めたらどうするか」というリスク管理(セカンド技術者の育成や採用)をしておくことが、経営者の責任と言えるでしょう。

2025年の法改正による金額要件の緩和

建設業界はいま、歴史的な転換期を迎えています。資材価格の高騰や人件費の上昇(インフレ)に対応するため、2025年(令和7年)にかけて建設業法施行令が改正され、許可が必要な金額要件が引き上げられます。

具体的には、特定建設業許可が必要となる「下請契約金額の下限」が、以下のように変更されます(予定含む)。

区分 改正前 改正後(予定)
建築一式工事 7,000万円以上 8,000万円以上
上記以外の工事 4,500万円以上 5,000万円以上

これの何が重要かというと、「今まで特定許可が必要だったギリギリのラインの業者」が、「一般許可」でも対応できるようになる可能性があるということです。

特定許可を維持するためには、厳しい財産的基礎要件や1級資格者の確保が必要です。しかし、一般許可で済むのであれば、要件はグッと軽くなります。この改正を機に、あえて許可を「特定」から「一般」へ下げる(般特新規申請をする)というのも、コストダウンのための賢い経営戦略の一つと言えるでしょう。

(出典:国土交通省『建設業法施行令の一部を改正する政令について』)

テレワークの活用と常勤性に関する要件緩和

「営業所に毎日いなければならない」という常勤性のルールも、時代に合わせて変わりつつあります。働き方改革の一環として、国土交通省から「適正なテレワーク環境下であれば、常勤として認める」というガイドラインが出されました。

具体的には、以下の環境が整っていることが条件となります。

  • インターネット等を介して、営業所と常時連絡が取れること(Web会議システムやチャット等)
  • 工事関連のデータ(契約書、図面、台帳など)に、自宅等のテレワーク場所からセキュアにアクセスできること
  • 緊急時には速やかに営業所に出勤できる体制があること

これにより、育児や介護でフルタイム出社が難しい優秀な技術者や、通勤困難な地域に住むベテラン技術者を、「テレワーク前提の専任技術者」として雇用できる可能性が広がりました。人手不足に悩む建設業者にとっては、採用の母集団を広げる大きなチャンスです。ただし、自治体によって運用ルールが異なるため、導入前には必ず管轄の土木事務所等へ相談してください。

建設業許可の専任技術者を確保する重要性

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。最後に、私からあなたに伝えたいことがあります。

専任技術者は、単なる「許可を取るための駒」ではありません。彼らは、あなたの会社の技術力を対外的に証明する「看板」であり、工事の品質を担保する「守護神」です。技術者がいなくなれば、どんなに営業力があっても、どんなに資金があっても、建設業としての土俵に立ち続けることはできません。

昨今の採用難は本当に深刻です。ハローワークに求人を出しても、有資格者はなかなか来ません。だからこそ、今いる技術者を大切にし、待遇を改善すること。そして、未経験の若手社員に資格取得費用を補助するなどして、社内で時間をかけて育成すること。この「人への投資」こそが、最も確実な専任技術者対策です。

もし、「自分の経歴で許可が取れるか不安だ」「書類の書き方が分からない」という場合は、一人で悩まずに私たち専門家を頼ってください。複雑なパズルも、プロの視点でピースを組み替えれば、意外な解決策が見つかるものです。あなたの会社が許可を取得し、さらに大きく飛躍できることを心から応援しています。

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  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年2月行政書士開業。建設業許可申請の手続き実績100件以上。フットワークの軽さとサービス精神で、県内トップクラスの良心価格と実績を持っています。建設業許可は当事務所にお任せ下さい。みなさまのご依頼をお待ちしております!

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