「電気工事業の登録はしているけれど、大きな工事を受けるには建設業許可も必要なのか」「第二種電気工事士の免状があれば、許可を取れるのか」。電気工事では、名前の似た制度が重なるため、自社に足りない条件が分かりにくくなります。
単独の電気工事を1件税込500万円以上で請け負う場合は、原則として「電気工事業」の建設業許可が必要です。 ただし、建設業許可だけで、電気工事業法の登録・届出や作業者の資格までそろうわけではありません。500万円未満の工事でも、別制度の手続きや資格の確認は残ります。
まずは「どの工事を請け負うか」「自社で何を施工するか」「誰が担当するか」を分けて考えましょう。今の許可・登録の状況と免状を手元に置くと、申請前に確認することを絞れます。
| 確認すること | 制度・資格 | 何を見て判断するか |
|---|---|---|
| 工事を請け負う | 建設業許可 | 工事の内容と請負金額。単独の電気工事は税込500万円以上で原則必要。 |
| 電気工事を事業として施工する | 電気工事業法の登録・届出等 | 自社施工の有無・対象設備・建設業許可の有無。500万円未満でも確認が必要。 |
| 人が実際に作業する | 電気工事士等の作業資格 | 作業する設備・工事内容と免状等の種類。許可や登録だけで作業資格を満たすわけではない。 |
この3つは、どれか一つを選ぶ関係ではありません。受注内容・施工体制・担当者に必要な条件を、それぞれ見ていきましょう。
電気工事業の建設業許可が必要になる工事と500万円の基準

建設業許可の電気工事業は、発電設備、送配電設備、構内電気設備などを設置する工事に対応する業種です。建物内の配線や照明設備の工事なども、具体的な施工内容から判断します。
単独で請け負う電気工事については、工事1件の請負代金が税込500万円未満なら建設業法上の「軽微な建設工事」、500万円以上なら原則として許可が必要な工事となります。500万円ちょうどは「未満」には入りません。
金額を確認するときは、見積書の税抜金額だけで判断しないでください。例えば、税抜460万円の電気工事は、消費税率10%で税込506万円となり、500万円未満ではありません。
また、注文者が材料を支給する場合は、その市場価格と運送賃を加えて判断します。同じ工事を正当な理由なく複数の契約に分けた場合も合算するため、請求書を分けるだけで許可が不要になるわけではありません。金額の考え方は、国土交通省の建設業法FAQで確認できます。
なお、電気工事業の登録をしていても、建設業法上の金額制限がなくなるわけではありません。逆に、建築一式など別業種の建設業許可があるからといって、単独の電気工事をその許可だけで受けられるとは限りません。今後受けたい工事の内容・金額と、許可通知書に記載された業種を照らし合わせることが出発点です。
建設業許可と電気工事業の登録・届出は別に確認する
建設業許可は、一定規模以上の工事を請け負うための制度です。一方、電気工事業法は、対象となる電気工事を事業として行う際の登録・通知等や、作業を管理する体制を定めています。
したがって、「建設業許可か、電気工事業登録か」の二択ではありません。自社で法の対象となる電気工事を反復継続して施工する場合には、請負金額とは別に、扱う電気工作物と建設業許可の有無から手続きを確認します。
電気工作物と建設業許可の有無で4区分に分かれる
| 自社で施工する電気工事の対象 | 建設業許可なし | 有効な建設業許可あり |
|---|---|---|
| 一般用電気工作物等を含む | 登録電気工事業者:登録 | みなし登録電気工事業者:開始届出 |
| 対象となる自家用電気工作物のみ | 通知電気工事業者:開始通知 | みなし通知電気工事業者:開始通知 |
「一般用電気工作物等」には、一般用電気工作物のほか、小規模事業用電気工作物も含まれます。「住宅なら一般用、工場なら自家用」と建物の名前だけで決めず、施工する設備の区分を確認してください。一般用電気工作物等と自家用電気工作物の両方を扱う場合は、表の上段で考えます。
ここでいう自家用電気工作物は、電気工事業法の対象となるものに限ります。最大電力500kW以上の需要設備などは、この表だけで判定せず、所管窓口へ確認してください。4区分の概要は神奈川県の登録・届出案内、対象範囲や自社施工の扱いは大阪府の電気工事業申請の手引で確認できます。
なお、表の「建設業許可あり」は、電気工事業以外の有効な建設業許可も含みます。ただし、これは登録等の区分を決めるための扱いです。単独の電気工事を税込500万円以上で請け負うための業種許可とは、分けて考えてください。この点は富山県の電気工事業の手続案内にも示されています。
すべて他者に下請施工させ、自社では電気工事を行わない場合などは、電気工事業法上の登録等の対象から外れる扱いがあります。「電気工事を受注した」という事実だけで登録の要否を決めず、実際の施工体制まで確認しましょう。自社施工がないことと、建設業法上の許可が不要であることは別の話です。
建設業許可を取った後も、切替・変更の手続きがある
登録電気工事業者が建設業許可を取得しても、必要な届出が自動で済むわけではありません。みなし登録電気工事業者への切替に伴う手続きや、従来の登録に関する手続きを、登録先へ確認します。
みなし登録・みなし通知の開始に関する届出・通知は、開始後遅滞なく行う扱いです。また、みなし登録電気工事業者が建設業許可を更新した場合には、電気工事業法側の変更届も確認が必要です。例えば兵庫県の電気工事業の案内では、許可取得時と更新時の手続きが分けて案内されています。
許可取得までを予定表に入れるだけでなく、「取得後、どこへ何を届けるか」まで一緒に整理しておきましょう。
電気工事士の資格と、営業所技術者等・主任電気工事士の条件
「電気の資格を持っている」というだけでは、どの制度の条件を満たすか分かりません。次の3つの役割を区別すると、必要な人材と資料を整理できます。
| 資格・役割 | 何のための人か・確認する条件 |
|---|---|
| 電気工事士等 | その人が実際に行える電気工事の範囲を確認する資格です。免状等の種類と、作業する設備・工事内容を照らし合わせます。 |
| 営業所技術者等(従来の専任技術者) | 建設業許可の営業所に置く技術者です。申請する業種と一般・特定の区分に対応する資格や経験が必要です。 |
| 主任電気工事士 | 電気工事業法上、一般用電気工作物等の電気工事を行う営業所で、作業の管理を担う人です。第一種電気工事士、または第二種電気工事士免状交付後に必要な実務経験が3年以上ある人が基本となります。 |
電気工事施工管理技士の資格が建設業許可の技術者要件に対応していても、それだけで電気工事士としての作業資格や主任電気工事士の条件を代わりに満たすわけではありません。また、「電気主任技術者」と「主任電気工事士」も別の名称・役割です。
同じ人が複数の役割を担う場合も、それぞれの資格要件と勤務実態等を確認します。作業資格は兵庫県の電気工事士の案内、主任電気工事士は大阪府の電気工事業申請の手引が確認先になります。
第二種電気工事士は、免状だけでなく取得後の経験を確認する
一般建設業の電気工事業で、営業所技術者の資格・経験を検討する際の代表例は次のとおりです。
- 1級または2級電気工事施工管理技士
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士の免状交付後、電気工事に関する実務経験が3年以上ある人
- 第一種・第二種・第三種電気主任技術者の免状交付後、電気工事に関する実務経験が5年以上ある人
これはすべての取得ルートを並べた一覧ではありません。資格以外に学歴と実務経験などを検討する場合もあり、申請先の資格区分表と証明資料で確認します。資格・経験の代表例は、近畿地方整備局の建設業法関係資料に掲載されています。
第二種電気工事士の場合は、免状の交付日と、その後に経験した電気工事の内容が確認の出発点です。同じ「3年以上」でも、営業所技術者と主任電気工事士は別制度のため、経験の内容と証明資料をそれぞれ確認します。第一種電気工事士についても、試験に合格しただけなのか、免状が交付されているのかを区別してください。
また、資格が必要な電気工事に、必要な免状等がないまま直接従事した期間は、建設業許可の実務経験として数えられません。「電気の現場に長くいた」という説明だけでは足りず、担当した工事と作業内容の確認が必要です。施工管理などを含む経験の扱いは一律ではないため、経歴を分けて申請先に確認します。この取扱いは国土交通省の建設業許可事務ガイドラインに示されています。
資格・経験のルートや証明資料を詳しく確認したい方は、営業所技術者等の記事へ進んでください。
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なお、上の資格例は一般建設業を検討するためのものです。電気工事業は「指定建設業」の一つなので、特定建設業では技術者の条件が異なります。一般・特定の選び方を確認する場合は、次の記事で切り分けられます。
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電気に関係する設備でも、建設業許可の区分がすべて電気工事業になるとは限りません。設備全体の呼び名ではなく、自社が請け負う施工範囲を見ます。
太陽光発電設備と屋根一体型パネル
太陽光発電設備の設置は電気工事に区分されます。一方、屋根一体型の太陽光パネルを設置する工事は屋根工事です。「屋根に載せるから屋根工事」「太陽光だから全部電気工事」と決めず、パネルの構造と施工する範囲を図面・見積内訳で確認します。
LANなどの通信設備と電源配線
LANやデータ通信設備などは、電気通信工事の区分を検討します。通信設備と一緒に電源配線も施工するなら、通信部分と電源部分の内容を分けて整理してください。「電気通信工事業」は「電気工事業」と別の業種です。
空調設備と、その電源工事
通常の建物の空調設備を設置する工事は管工事に区分されます。空調機器・冷媒配管の施工と、電源配線などの電気工事を区別し、契約上どこまで請け負うかを確かめます。
これらの区分は、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインに示されています。複数の工事が組み合わさる場合には、主となる工事と附帯工事の関係も確認が必要です。他業種との比較や附帯工事の考え方は、29業種一覧で整理できます。
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建設業許可の業種を分けることと、個々の作業に必要な電気工事士等の資格・電気工事業法上の手続きを確かめることは、別々に進めてください。
申請前にそろえる情報と、手続きを進める順序

申請書を書き始める前に、次の情報をそろえると、必要な手続きと不足資料を確認しやすくなります。すべてが一律の必須提出書類という意味ではなく、申請先へ相談するための準備です。
- 受けたい工事の範囲と金額:見積内訳、図面、注文者からの支給材料、自社で施工する部分と外注する部分。
- 現在の許可・登録の状況:建設業許可通知書、電気工事業の登録証や届出・通知の控え。許可がある場合は業種と有効期間。
- 担当者の資格と経験:免状・合格証、交付年月日、勤務先・在籍期間、担当した電気工事の内容。
- 経験を裏付ける資料:契約書・注文書などの工事内容が分かる資料と在籍資料。必要に応じて、当時の勤務先の許可・登録状況。
- 営業所の所在地と実態:契約を扱う拠点と、電気工事の施工・作業管理を行う拠点がどこか。
とくに経験を使う場合は、年数だけを先に数えるより、「どの工事を、いつ、どの立場で担当したか」を整理することが大切です。免状の交付日と工事の時期を並べると、資格取得後の経験を説明しやすくなります。正式な提出資料の種類や部数は、申請先の手引きに従ってください。
費用・期間も合わせて見通したい方は、共通要件記事の「費用と期間」の説明で、法定費用・審査期間・申請前の準備期間に分けて確認できます。
兵庫・大阪では、建設業許可と電気工事業法の窓口を分けて確認
建設業許可の申請先と、電気工事業法の登録・届出等の窓口は別に確認します。営業所という言葉も、建設業法では契約等を行う拠点、電気工事業法では電気工事の作業管理を行う拠点というように、判断する実態が異なります。
兵庫県の電気工事業法上の手続きは、兵庫県「電気工事業を営む方へ」から、担当窓口と必要な手続きを確認できます。
大阪府では、電気工事業登録等の受付窓口が2026年10月1日から大阪府電気工事工業組合本部へ変更されています。以前の案内を使うのではなく、大阪府「電気に関する申請」で現在の提出先を確かめてください。
なお、現場が県外にあるという理由だけで、その県への電気工事業登録が追加で必要になるわけではありません。営業所の所在地や作業管理体制から所管を確認します。複数県に営業所を置く場合は、都道府県だけでなく、所管の産業保安監督部等への確認が必要です。
電気工事業の許可申請を進めるときは、請負工事に必要な建設業許可、施工事業者の登録・届出等、担当者の資格・経験の3つを、別々に確認してからつなげて考えましょう。
「登録はあるが、次の工事を受けるには何が必要か」「第二種電気工事士としての経験をどの資料で示すか」で迷う場合は、今の許可・登録の状況と工事内容を整理してご相談ください。
