建設業許可の種類と区分!一般と特定や知事と大臣許可などの違い

こんにちは。おのっちです。

建設業の経営者様からよく相談されるのが、「許可を取りたいけれど、種類が多くてどれを選べばいいかわからない」というお悩みです。

「一般」と「特定」の違いや、「知事許可」と「大臣許可」の区別は、建設業法特有の複雑なルールがあり、ベテランの社長様でも混同されていることが少なくありません。

ここを間違えると、せっかく苦労して許可を取っても受注したい規模の工事ができなかったり、最悪の場合は法令違反になってしまったりするリスクさえあります。

実は、許可の種類は会社の規模だけで決まるものではなく、これから「どのような契約形態で工事を請け負うか」によって決まるのです。

この記事では、建設業許可専門の行政書士として、許可の種類の選び方から、一般と特定の決定的な違い、申請にかかる費用相場まで、実務のポイントを噛み砕いて解説します。

特に2025年(令和7年)の法改正で変更された新しい金額基準についても触れていますので、最新の情報を手に入れてくださいね。

  • 一般建設業と特定建設業の区分の基準と選び方
  • 特定建設業許可が必要になる下請契約の金額ライン
  • 知事許可と大臣許可の申請にかかる法定費用と報酬相場
  • 許可換えや業種追加に必要な手続きとコスト

建設業許可の種類で一般と特定の違い

建設業許可を取得する際、最も重要なのが「一般建設業」と「特定建設業」という区分の選択です。この2つは、単に会社の売上規模で決まるものではありません。

「元請として工事を受注し、その工事をどの程度下請に出すか」という、お金の流れと契約関係によって決まります。

まずは、それぞれの定義と判断基準をしっかりと理解しましょう。

一般建設業と特定建設業の区分の基準

結論から言うと、地域密着で工事を行う多くの中小建設業者さんは、「一般建設業許可」を取得することになります。

なぜなら、特定建設業許可は「元請として、かなり大規模な工事を下請に出す」という限定的なシチュエーションで必要になるものだからです。

一般建設業許可は、軽微な建設工事(税込500万円未満など)を超える工事を請け負うために必要な許可です。

よくある誤解ですが、一般建設業許可であっても、請け負う工事の金額自体に上限はありません。例えば、元請として1億円のビル建設工事を受注し、すべて自社で施工する場合や、下請を使わずに施工する場合は、一般建設業許可で全く問題ありません。

また、下請業者として工事に参加する場合も、どれだけ金額が大きくても一般建設業許可で対応可能です。

ポイント

【ここがポイント】
区分の決め手は「元請として受注した工事について、下請業者に発注する金額の合計」です。自社施工がメインなら、受注金額が数億円でも「一般」でOKですよ。

一方、特定建設業許可は、発注者から直接工事を請け負う「元請」の立場で、多額の工事を下請に出す場合に必要となる許可です。

これは、下請負人を保護し、工事の適正な施工を確保するために、元請業者に対してより厳しい財産的基礎や技術力を求めているからです。

もし下請負人が倒産したり、支払いが滞ったりすれば、さらにその下の職人さんたちにまで被害が及んでしまいますよね。

そうしたリスクを防ぐための「特別な許可」だと考えてください。

特定建設業許可が必要な工事の規模

では、具体的にいくら以上の工事を下請に出すと「特定」が必要になるのでしょうか。この金額のラインが、許可区分を選ぶ最大の基準となります。

2025年(令和7年)の建設業法施行令改正により、この基準額が引き上げられました。現在は、元請業者が下請負人に対して締結する下請契約の請負代金の額の合計が、以下の基準以上になる場合に特定建設業許可が必要です。

工事の種類 下請契約の合計額(税込) 必要な許可
建築一式工事
(大規模な新築・増改築など)
8,000万円以上
(※改正前は7,000万円)
特定建設業
8,000万円未満 一般建設業
上記以外の建設工事
(内装、電気、土木、管工事など)
5,000万円以上
(※改正前は4,500万円)
特定建設業
5,000万円未満 一般建設業

この金額は「1社あたり」ではなく、「その工事に関して契約した下請業者全員の合計額」である点に注意してください。例えば、内装工事を元請で受注し、A社(クロス)に3,000万円、B社(床)に2,500万円発注した場合、合計5,500万円となり、一般建設業許可では法令違反(無許可営業)となってしまいます。

【注意】
この基準額には、下請業者に支給する材料費(元請が購入して支給するもの)は含まれませんが、消費税は含んで計算します。ギリギリの金額を攻めるのはリスクが高いので、事業計画に合わせて余裕を持った区分選択をおすすめします。

(出典:国土交通省『建設業法施行令の一部を改正する政令について』)

財産的基礎要件と8000万円の基準

特定建設業許可は、下請業者への支払い責任を全うできるだけの強固な財務体質が求められます。万が一、元請が倒産しても下請への支払いが滞らないよう、一般建設業許可に比べて、財産的基礎要件が非常に厳しく設定されています。

一般建設業であれば、「自己資本が500万円以上」あるいは「500万円以上の資金調達能力(銀行の残高証明書)」があればクリアできます。しかし、特定建設業では、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 資本金の額が2,000万円以上あること
  • 自己資本の額が4,000万円以上あること
  • 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること

ここでよく検索される「8000万円」というキーワードですが、これは先述した「建築一式工事における特定許可が必要な下請発注額(税込)」の基準値(改正後の8,000万円)を指すことが多いです。「大規模な下請発注(約8,000万円規模)をするなら、それに見合う財務基盤(資本金2,000万円、自己資本4,000万円など)を持っていてくださいね」というのが制度の趣旨です。

【おのっちの補足】
特定建設業の財産要件は、申請直前の決算書の数字のみで判断されます。一般建設業のように「残高証明書」で一時的に証明することはできません。また、5年ごとの更新時にもこの基準を満たし続ける必要があるので、経営のハードルはかなり高いですよ。赤字続きだと更新できない可能性があります。

専任技術者の資格要件と実務経験

営業所に配置する「専任技術者」の要件も、一般と特定では大きく異なります。ここがクリアできずに特定許可を断念するケースも多いんです。

一般建設業の場合は、2級施工管理技士や、一定の実務経験(10年、または指定学科卒+3〜5年程度の実務経験)があれば専任技術者になることができます。2級資格は比較的取得しやすく、実務経験者も社内にいることが多いため、対応しやすいと言えるでしょう。

一方、特定建設業の場合は、原則として「1級」の国家資格者(1級施工管理技士、一級建築士など)が必要です。「2級+実務経験」では認められないのが大きな違いです。 例外的に、指定建設業(土木、建築、電気、管、鋼構造物、舗装、造園)以外の業種については、一般建設業の要件に加え、元請として4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的実務経験があれば認められる特例ルートもありますが、証明の難易度は非常に高いのが現実です。

特に「指定建設業」の7業種については、特例ルートが一切認められず、必ず一級国家資格者等が必要となります。特定許可を目指すなら、まずは一級資格者の確保が最優先課題となりますね。

下請契約の金額と元請の指導監督義務

特定建設業許可を取得するということは、単に大規模な工事ができる権利を得るだけではありません。下請負人を保護するための重い義務(指導監督義務)を負うことになります。これを怠ると、行政処分の対象となります。

主な義務は以下の通りです。

  • 施工体制台帳の作成義務:現場に入る全ての下請業者(二次、三次下請含む)を把握し、体系図や台帳を作成する必要があります。
  • 下請代金の支払い期日:下請負人からの引渡し申し出から50日以内、かつできる限り短い期間内に支払わなければなりません。
  • 支払いの現金化:手形期間の短縮など、下請負人の資金繰りに配慮する必要があります(一般に60日サイト以内の手形など)。
  • 指導義務:下請負人が建設業法違反をしないよう、法令遵守の指導を行う責任があります。

「うちは下請けいじめなんてしないから大丈夫」と思っていても、事務処理の遅れや台帳の不備が建設業法違反とみなされることもあります。特定許可を目指すなら、現場管理だけでなく、経理や総務のバックオフィス体制強化も必須条件と言えるでしょう。

欠格要件や誠実性の審査基準の解説

最後に、一般・特定共通の土台となる「欠格要件」と「誠実性」についてです。これは「許可を与えてはいけない人」を排除するための基準です。どんなにお金があっても、技術があっても、ここがダメなら許可は絶対に下りません。

過去に建設業法違反で処分を受けたり、禁錮以上の刑に処せられたりした場合、その刑の執行が終わってから5年間は許可を受けることができません。また、審査の対象は法人の役員や個人事業主本人だけでなく、支店長などの令3条の使用人、さらには実質的に経営を支配している相談役や顧問、5%以上の株主なども含まれます。

特に最近はコンプライアンスが重視されており、暴力団排除の動きも厳格です。申請時には警察庁への照会も行われます。「誠実性」については、請負契約に関して詐欺や脅迫などの不正行為をするおそれがないことが求められます。建設業は信用が第一。日頃からの法令遵守は、許可維持の生命線ですよ。

建設業許可の種類ごとの費用と相場

「許可を取りたいけれど、結局いくらかかるの?」というのは、経営者として一番気になるところですよね。建設業許可にかかる費用は、役所に払う「法定費用(実費)」と、行政書士に依頼する場合の「報酬」の2つで構成されています。許可の種類(知事か大臣か)によって金額が変わるので、しっかりシミュレーションしておきましょう。

知事許可と大臣許可の申請区分の違い

費用を見る前に、「知事許可」と「大臣許可」の区分をおさらいしましょう。これは工事をする場所ではなく、「営業所がどこにあるか」だけで決まります。

  • 都道府県知事許可:一つの都道府県内のみに営業所(本店、支店など)がある場合。例えば、東京都内に本店と3つの支店があっても、全て都内なら「東京都知事許可」です。
  • 国土交通大臣許可:二つ以上の都道府県にまたがって営業所がある場合。例えば、東京本店と神奈川支店がある場合は「国土交通大臣許可」になります。

よくある誤解ですが、「知事許可だと他県で工事ができない」ということは一切ありません。知事許可でも北海道から沖縄まで、全国どこの現場でも施工可能です。ただし、他県に「契約締結権限を持つ営業所」を作りたい場合にのみ、大臣許可が必要になります。単なる現場事務所や資材置き場なら、営業所には該当しないので知事許可のままで大丈夫ですよ。

新規取得や更新申請にかかる法定費用

役所に納める手数料(法定費用)は以下の通りです。これは誰が申請しても必ずかかる実費です。現金や証紙、登録免許税などで納めます。

申請の種類 知事許可 大臣許可 備考
新規許可 90,000円 150,000円 知事は証紙等の場合あり
大臣は登録免許税
更新
(5年ごと)
50,000円 50,000円 収入印紙や証紙
業種追加 50,000円 50,000円 既存許可に業種を加える場合

注意点として、一般建設業と特定建設業を同時に更新する場合は、それぞれ手数料がかかるため、合計10万円(5万+5万)が必要になります。業種追加の場合も同様で、一般を持っている状態で特定を追加する場合は「新規」扱いとなり、高い手数料がかかるケースもあるので注意が必要です。

行政書士報酬の相場や費用の内訳

建設業許可の手続きは書類が膨大で複雑なため、行政書士に依頼するのが一般的です。報酬額は自由化されており事務所によって異なりますが、一般的な市場相場の目安は以下の通りです。

  • 新規許可(知事・一般):10万円 〜 15万円程度
  • 新規許可(知事・特定):15万円 〜 20万円程度
  • 新規許可(大臣):20万円 〜 30万円以上
  • 更新申請:5万円 〜 8万円程度

「少し高いな…」と感じるかもしれませんが、この報酬には、許可が取れるかどうかの事前診断、法務局や税務署での公的書類の収集代行、数十枚に及ぶ申請書類の作成、行政庁への代理申請・補正対応などがすべて含まれています。特に「実務経験の証明」が必要な難しい案件(10年分の契約書をひっくり返すような作業)などは、追加報酬が発生することもあります。

目先の安さだけで選ぶと、後から追加料金を取られたり、大事な更新期限の管理をしてくれなかったりするリスクもあります。将来の経営事項審査(経審)や入札参加まで見据えて、建設業に特化した専門家を選ぶのが、結果的にコストパフォーマンスが良いですよ。

許可換え新規や業種追加の申請手続き

事業が拡大すると、許可の内容を変更する必要が出てきます。許可の種類を変える手続きには主に以下のパターンがあります。

まず、営業所を他県に増やす場合の「許可換え新規」。例えば「東京都知事許可」から「国土交通大臣許可」に変える場合などがこれに当たります。これは実質的に新規申請と同じ扱いになるため、法定費用(知事→大臣なら15万円)や審査期間(大臣許可なら3〜4ヶ月)も新規同様にかかります。また、許可番号も新しくなります。

次に、工事の種類を増やす「業種追加」。例えば「内装工事だけでなく、建築一式もやりたい」という場合です。こちらは手数料5万円で済みますが、追加する業種の専任技術者要件を満たしている必要があります。実務経験で証明する場合、また10年分の資料が必要になることもあるので、資格取得と合わせて戦略的に計画しましょう。

建設業許可の種類と区分選びのまとめ

今回は建設業許可の「種類」について、一般と特定の区分や、知事と大臣の違いを中心にお話ししました。最後に要点を整理します。

【まとめ】

  • 「一般」か「特定」かは、元請として下請に出す金額の合計(税込5,000万円/8,000万円以上か)で決まる。
  • ほとんどの中小事業者は「一般建設業」でスタートして問題ない。
  • 「特定」は財産要件(資本金2,000万・自己資本4,000万等)が非常に厳しく、更新時も維持が必要。
  • 費用は知事許可(新規9万円)か大臣許可(新規15万円)かで異なる。
  • まずは自社の現状と将来の事業計画(下請けの使い方)を見極めることが大切。

建設業許可は取って終わりではありません。5年ごとの更新や、毎年の決算変更届など、継続的な管理が必要です。自社に最適な許可区分がわからない、証明書類が揃うか不安という方は、ぜひ一度専門家に相談してみてくださいね。正しい許可戦略で、事業をさらに飛躍させましょう!

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  • この記事を書いた人

行政書士 小野馨

平成17年2月行政書士開業。建設業許可申請の手続き実績100件以上。フットワークの軽さとサービス精神で、県内トップクラスの良心価格と実績を持っています。建設業許可は当事務所にお任せ下さい。みなさまのご依頼をお待ちしております!

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