

行政書士の小野馨です。
今回は、「建設業許可の検索完全ガイド」について解説します。
これから取引やリフォームを依頼しようとしている会社について、
- 本当に信頼できる会社なのか
- 建設業許可を正しく取得しているか
を確認しようとしていませんか?
建設業許可の有無は、企業の信頼性を測る上で欠かせないチェックポイントです。
しかし、いざ国土交通省の検索システムを使おうとすると、「会社名を入れてもヒットしない」「エラーが出る」「表示された記号(特-4や般-29など)の意味がわからない」といった壁にぶつかりがちです。
このシステムは一般的な検索サイトとは仕組みが異なり、少し扱いづらいのが難点です。
ポイント
実は、この検索システム特有の「クセ」さえ知っていれば、検索ミスによる誤解を防げるだけでなく、過去の行政処分歴や社会保険の加入状況といった、企業の「内情」まで詳しく把握することが可能になります。
この記事では、建設業許可の専門家である行政書士が、プロ直伝の「正しい検索手順」と「情報の読み解き方」を徹底解説します。
正しいリサーチ方法を身につけて、後悔のない取引先選びにお役立てください。
- 国土交通省の公式システムを使った正しい検索手順と、エラーを出さない入力の裏ワザ
- 許可番号の数字や記号(般・特)の読み方からわかる、許可の有効期限と企業規模
- ここを見れば安心!行政処分歴や社会保険加入状況など、信頼性を深掘りするチェック方法
- 「名前を入れても出てこない!」と焦る前に確認すべき、検索にヒットしない4つの正当な理由
建設業許可の検索に役立つシステムの活用
建設業者の情報を調べる際、インターネット上には様々な民間サイトや企業リストが存在しますが、情報の正確性と最新性において最も信頼できるのは、やはり国(国土交通省)が運営している公式データベースです。
それが「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」です。
これは私たち行政書士も業務で必ず使用する「一次情報」の宝庫です。
しかし、この公的システムは、誰でも無料で使える反面、少しユーザーインターフェースが古かったり、入力ルールが厳格だったりと、初めて使う方には少々ハードルが高いのも事実です。
「使いにくいから」と諦めてしまうのはもったいない!
ここでは、メインとなる検索システムの基本的な使い方から、検索を成功させるための入力のコツ、さらには企業のコンプライアンス意識をチェックするためのネガティブ情報の調べ方まで、画面の向こう側のあなたに代わって詳しくガイドしていきますね。
国土交通省の公式システムの使い方
まず、日本全国の建設業者を検索するために使うのが、国土交通省が運営する「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」というサイトです。
名前が少し長いですが、通称「国交省検索システム」などと呼ばれています。
ポイント
このシステムは、かつては都道府県ごとにバラバラに管理されていたデータを一元化し、北海道から沖縄まで、大臣許可業者・知事許可業者を問わず横断的に検索できるようにした画期的なプラットフォームです。
このシステムにアクセスすると、トップ画面には「建設業者」「宅建業者」「マンション管理業者」など、いくつかのボタンが並んでいます。
ここで迷わず「建設業者」のボタンをクリックしてください。
実はこのシステム、不動産屋さん(宅建業者)の情報も同じシステム内で管理されているため、入り口を間違えると「建設会社を探しているのに不動産屋しか出てこない」という事態になってしまいます。
検索画面に進むと、「許可区分」や「大臣・知事コード」、「商号」、「代表者名」など、たくさんの入力項目が並んでいて圧倒されるかもしれません。
ですが、安心してください。全ての項目を埋める必要は全くありません。
参考
基本的には「商号(会社名)」か「許可番号」のどちらか一つ、あるいは「地域(都道府県)」と「業種」の組み合わせだけで十分に検索可能です。
データは定期的に更新されていますが、都道府県知事許可の業者については、各都道府県庁でのデータ入力から国交省のシステムに反映されるまでに、多少のタイムラグ(数週間~1ヶ月程度)が発生することがあります。
「昨日許可が降りたはずなのに載っていない」という場合は、このタイムラグが原因ですので、少し待ってから再検索してみると良いでしょう。
プロの豆知識:データの信頼性について
このシステムに掲載されている情報は、各事業者が行政庁(国や県)に提出した申請書類に基づいています。つまり、行政の審査を通った公的なデータであるため、民間サイトの情報よりも圧倒的に信頼性が高いと言えます。(出典:国土交通省『建設業者・宅建業者等企業情報検索システム』)
会社名や許可番号での正確な調べ方
いざ検索してみると「あれ? 会社名は合っているはずなのに出てこない…」というトラブルに直面することがよくあります。
私のお客様からも「先生、あの会社検索しても出ないんですけど、無許可なんですか?」と相談を受けることがありますが、その原因の9割は「入力方法の間違い」にあります。
この公的システムは、Google検索のような「あいまい検索」があまり得意ではありません。
一字一句間違えずに、システムのルールに従って入力する必要があるのです。
ここで、検索を成功させるための重要なポイントを解説します。
会社名(商号)検索の鉄則ルール
検索ボックスに会社名を入力する際、「株式会社」や「有限会社」、「合同会社」といった法人格は絶対に入力してはいけません。
例えば、「株式会社日本建設」という会社を探したい場合、入力欄に「株式会社日本建設」と入れて検索ボタンを押すと、エラーになるか、該当なしと表示されてしまいます。
ココがポイント
正しくは、法人格を除いた「日本建設」という文字だけを入力する必要があります。
これ、意外と知らない方が多い落とし穴なんです。
また、入力欄には「商号又は名称(全角カナ検索)」と「商号又は名称(漢字検索)」の2つのフィールドがあります。
- 漢字検索:正式名称がはっきり分かっている場合に使います。ただし、「沢」と「澤」、「斎」と「齋」などの旧字体の違いも厳密に区別されるため、漢字が難しい会社の場合はヒットしないことがあります。
- 全角カナ検索:読み仮名で検索します。漢字が不確かな場合や、漢字でヒットしない場合は、こちらを使うのがおすすめです。「ニホンケンセツ」のようにカタカナで入力しましょう。
そして、もしあなたが相手の会社の名刺や請求書を持っていて、そこに「許可番号」が記載されているなら、迷わず番号検索を使ってください。
「第〇〇〇〇〇号」という数字の部分(5桁~6桁)を入力するだけで、同名の他社と混同することなく、ピンポイントでその会社の情報を呼び出すことができます。
これが最も確実で手っ取り早い方法ですよ。
29業種や地域から一覧を探す手順
特定の会社を探すのではなく、「自宅の近くで電気工事ができる会社を知りたい」「隣の県で解体工事を頼める業者リストを作りたい」といった、新規開拓のニーズもありますよね。
そんな時に便利なのが、このシステムの「地域」と「業種」を組み合わせた絞り込み検索機能です。
建設業許可は、工事の種類によって29種類の業種に細かく分かれています。
「建設業許可を持っています!」と言っても、全ての工事ができるわけではありません。
参考
例えば、「土木工事」の許可しか持っていない会社に「内装リフォーム」を頼むのは、専門外(かつ500万円以上なら無許可営業)になってしまいます。
システム上の「業種指定」という項目には、「土」「建」「大」「左」……といった漢字一文字の略号が並んでいます。
これらにチェックを入れることで、その業種の許可を持っている業者だけをピックアップできます。
主要な業種と略号の関係を整理しましたので、参考にしてください。
| 業種コード | 略号 | 業種名 | 主な工事内容の例 |
|---|---|---|---|
| 010 | 土 | 土木一式工事 | 道路、トンネル、橋梁などの総合的なインフラ工事 |
| 020 | 建 | 建築一式工事 | ビル建設、新築住宅の総合的な建築工事 |
| 080 | 電 | 電気工事 | コンセント増設、照明設備、発電設備の設置 |
| 170 | 塗 | 塗装工事 | 外壁塗装、屋根の塗り替え |
| 190 | 内 | 内装仕上工事 | 壁紙(クロス)張り、フローリング、間仕切り変更 |
| 290 | 解 | 解体工事 | 家屋の取り壊し、内装解体(スケルトン工事) |
検索の手順としては、まず「都道府県」のプルダウンから探したい地域(例:東京都)を選択し、次に「市区町村」まで絞り込みたい場合は住所の一部を入力します。
そして、依頼したい工事の業種(例:内装仕上なら「内」)にチェックを入れて検索ボタンを押します。
こうすることで、「東京都千代田区で、内装工事の許可を持っている正規の業者一覧」がズラリと表示されます。
これを活用すれば、飛び込み営業やポータルサイトだけに頼ることなく、国のお墨付きがある地元の優良業者を自力で見つけることができるんです。
まさに「知る人ぞ知る」活用法ですね。
行政処分歴などネガティブ情報の確認
新しい取引先を選定する上で、最も気になるのが「コンプライアンス(法令遵守)」の問題です。
「この会社、過去に手抜き工事で営業停止になっていないかな?」「不正行為をするような会社じゃないかな?」という不安は、契約前に必ず払拭しておきたいですよね。
実は、国土交通省は通常の業者検索システムとは別に、「ネガティブ情報等検索サイト」という専用のデータベースを公開しています。
ここでは、過去5年間に建設業法違反などで行政処分(指示処分、営業停止処分、許可取消処分)を受けた業者の情報を検索・閲覧することができます。
使い方は少し注意が必要です。通常の検索システムと異なり、会社名だけで検索しようとすると、同名の会社が全国に多数ある場合に特定が難しくなります。
そのため、「処分を受けた年月日」や「本店所在地」などの情報と組み合わせて検索する必要があります。
もし、通常の検索システムで相手の会社の「本店所在地」を確認できたら、その都道府県を選択して検索をかけるとスムーズです。
検索時の心構えと注意点
このサイトに情報が掲載されている=過去5年以内に何らかの法令違反があった、という事実を示します。
逆に言えば、ここに掲載されていなければ、少なくとも直近5年間は大きな行政処分を受けていない(=健全に運営されている可能性が高い)という一つの証明になります。
ただし、行政処分情報は「過去5年分」しか掲載されません。
それ以前の情報は削除されてしまうため、創業の古い会社であれば、ネット上の口コミや風評なども併せてリサーチすることをお勧めします。
それでも、国が公式に発表している「処分歴なし」という事実は、取引判断における大きな安心材料になるはずです。
(出典:国土交通省『建設業者・宅建業者等企業情報検索システム(ネガティブ情報等検索サイト)』)
社会保険加入状況のチェックポイント
近年、建設業界の健全化に向けて国が最も力を入れているのが、「社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)への加入」の徹底です。
かつては社会保険に入っていない会社も多かったのですが、現在は許可の要件としても非常に厳しくチェックされるようになりました。
検索システムの業者詳細画面を開くと、下の方に「保険加入状況」という欄があります。
ここは必ず目を通してください。以下の3つの区分のいずれかが表示されています。
- 加入:法律に従って適切に加入している状態。最も健全です。
- 未加入:加入義務があるにもかかわらず、加入していない状態。コンプライアンス上のリスクがあります。
- 適用除外:従業員数が少ない個人事業主など、法律上加入義務がない状態。これは違法ではありません。
理想的なのは、雇用・健康・年金のすべてが「加入」(もしくは正当な理由での「適用除外」)になっていることです。
もし「未加入」の表示がある場合、その会社は法令違反の状態にある可能性が高いだけでなく、現場に入場させてもらえない(元請から断られる)リスクも抱えています。
特に、これから就職や転職を考えている方にとっては、この欄は自分の生活を守るための命綱です。
「加入」となっていれば、福利厚生がある程度しっかりしている会社だと判断できます。
逆に、法人なのに「未加入」となっている場合は、ブラックな労働環境である可能性を疑った方が良いかもしれません。
データ反映のタイムラグに注意
一点補足ですが、知事許可業者の場合、都道府県によっては保険情報のシステム反映に時間がかかっていることがあります。
実際には加入済みでも、画面上はデータなしや未加入のままになっているケースも稀にありますので、どうしても気になる場合は直接会社に確認するのが確実です。
建設業許可の検索結果の見方と注意点
ここまでは検索システムへの「入り方」をお伝えしましたが、ここからは検索結果として出てきた情報の「読み解き方」について深掘りしていきます。
画面に表示される専門用語や数字の羅列は、実はその企業の歴史、規模、そして将来性を示す重要なデータの宝庫です。
「特-4」とはどういう意味なのか?
なぜ名前が出てこない場合があるのか? プロの視点で、その暗号を解読していきましょう。
許可番号の意味と更新時期の読み解き
検索結果で最も重要なのが「許可番号」です。
例えば、「東京都知事許可(般-4)第123456号」という表記があったとしましょう。この文字列を分解すると、驚くほど多くの情報が得られます。
まず注目すべきは、カッコの中にある数字、上記の例で言えば「(般-4)」の「4」という数字です。
これは、その許可を新規取得、または更新した「年度(和暦)」を表しています。「4」は「令和4年度」を意味します。
建設業許可の有効期限は、許可が降りた日から5年間と決まっています。
つまり、この数字を見るだけで、その会社の許可がいつまで有効なのかを瞬時に計算できるのです。
計算式は簡単です。「表示されている年度 + 5年」が次の更新時期です。
令和4年度に取得していれば、令和9年度頃までは有効だということがわかります。
ポイント
ここがプロのチェックポイント!
もし検索結果の数字が「29(平成29年)」や「30(平成30年)」など、5年以上前の古い年度のまま止まっていたら要注意です。
その会社は、許可の更新手続きを忘れて許可を失効させてしまったか、あるいは廃業してしまっている可能性があります。
現役バリバリの業者であれば、必ず直近5年以内の年度が表示されているはずですよ。
また、一番後ろの「第〇〇〇〇〇号」という番号は、その会社に割り振られた固有のIDです。
この番号は、原則として会社が存続する限り変わりません(知事許可から大臣許可へ変わる場合などを除く)。
つまり、番号が若い(桁数が少ない)会社ほど、古くから建設業を営んでいる歴史ある企業であると推測することができます。
