
「人が足りない」「ベテランに仕事が集中する」「若手が続かない」。建設会社のこうした悩みを考えるとき、従業員の健康と働き方は切り離せません。
健康経営は、会社として健康を支える仕組みをつくり、継続して見直していく取り組みです。現場の安全、人材の定着、仕事の進め方を一緒に考えるきっかけになります。
まずは、休憩を取りにくい現場や、仕事が特定の人に集中する場面を一つ選び、何を変えられるかを考えてみましょう。この記事では、安全・人材定着・作業品質との関係と、現場で続けられる始め方を整理します。認定申請や入札加点の詳細は、別の記事で確認できます。
建設会社で健康経営に取り組む3つのメリット
安全な作業を支える
体調が悪くても言い出せない、忙しくて休憩が取れない。こうした状態を放置せず、作業前の確認や交代の相談ができる現場をつくることは、安全な作業を支える土台になります。
会社が見直せるのは、本人への声かけだけではありません。作業方法、暑さへの対応、休憩場所、無理のない人員配置なども対象です。厚生労働省も、心身の負担を軽減する職場改善には、労働災害や健康障害の防止などが期待できるとしています。厚生労働省「快適職場」
認定を取れば事故がなくなるわけではありません。設備の点検、作業計画、必要な教育などの安全対策と健康への配慮を、現場で実行できる形にすることが大切です。
暑い時期の現場では、水分補給の声かけだけでなく、暑さ指数(WBGT)などによるリスクの把握、作業や休憩の段取り、体調不良を報告する相手、作業から離れて対応する手順を確認します。厚生労働省のガイドラインに沿って、現場の作業条件に合う対策を選びましょう。職場における熱中症防止のためのガイドライン
技能者が働き続けやすい条件を整える
人手不足への対応では、採用とともに、今いる技能者が働き続けられる条件を整えることも重要です。健診を受ける時間を確保する、負担が偏る作業を見直す、困ったときの相談先を明確にするといった対応が考えられます。
ただし、健康施策だけで定着の問題が解決するとは限りません。賃金や休日、育成、上司との関係も含めて確認します。国の第11次建設雇用改善計画でも、若年者の入職・定着に向け、労働時間の適正化、処遇改善、育成などを組み合わせる方針が示されています。厚生労働省「第11次建設雇用改善計画」
確認漏れや手戻りを見直す
手戻りが起きたとき、作業した人の注意力だけを問題にしていないでしょうか。工程が詰まっていた、指示が曖昧だった、確認する時間がなかったなど、仕事の組み方にも目を向けたいところです。
健康経営を考えることで、疲れや負担の声を拾い、作業手順や引継ぎを見直す機会が生まれます。作業品質や採算への影響は自社で確かめる必要がありますが、人が無理をして補っている部分を把握することには意味があります。
経営者も従業員も自分の状態を整える

従業員だけでなく、経営者や職長も自分の状態に目を向けたいところです。「落ち着いて伝えたい」という思いがあっても、頭の中が焦りでいっぱいなら、言葉や対応がちぐはぐになることもあります。
指示を出す前に少し立ち止まる。自分が何を伝えたいのか整理する。相手の話を最後まで聞く。こうした時間を取れるように、打合せや引継ぎの進め方を見直すこともできます。
自分の状態に目を向ける方法の一つとして、HeartMathという選択肢もありますが、必要な医療や休養の代わりにはしません。相談体制や外部研修の選び方は、次の記事で詳しく確認できます。
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建設業のメンタルヘルス対策|職場環境・相談体制と健康経営の進め方
建設業のメンタルヘルス対策は、働く人の健康を守り、安心して相談できる現場をつくる取組です。採用や定着にも関わる要素ですが、給与や休日、安全管理の代わりになるものではありません。 「応募が来ない」「入社 ...
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一方、過大な業務や休憩不足は、会社が工程や人員配置を見直す課題です。個人の気持ちの整え方だけで解決しようとせず、相談体制や職場環境の改善と併せて考えます。厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
まず現場の困りごとを一つ改善する
最初から多くの施策を増やす必要はありません。重大な安全・法令上の問題はすぐに対応し、それ以外は現場の声を聞き、負担の大きいところから取り組みます。例えば、次のような始め方があります。
| 困りごと | 最初に見直すこと | 振り返りで確かめること |
|---|---|---|
| 休憩を取りにくい | 工程・交代要員・休憩場所を確認し、実際に休める段取りを決める。 | 決めた休憩が取れたか。取れない日には、何が妨げになったか。 |
| ベテランに仕事が集中する | 担当作業と教えられる作業を整理し、引継ぎや育成の時間を確保する。 | 負担の偏り、残業、確認待ちが変わったか。 |
| 健診を受ける日程が決まらない | 日程調整の担当者と連絡方法を決める。 | 対象者が受診できたか。その後に必要な対応へつながったか。 |
それぞれ「誰が進めるか」「いつ実施するか」「何を見て振り返るか」を決めます。残業時間、休憩の取りやすさ、受診状況、確認漏れの記録など、課題に合う項目で確認しましょう。数字だけでなく、現場で続けられるかという声も大切です。
施策を始めたからといって、仕事の成果まで一度に変わるとは限りません。
建設労働者67人を対象とした12週間の運動の比較試験では、有酸素能力は改善した一方、就労能力や生産性、病欠などに統計的に有意な改善は認められませんでした。
健康経営全体の効果を否定する結果ではなく、施策と課題を合わせ、結果を確かめる必要性を考える材料です。
健康情報の扱いにも注意が必要です。個人の診断結果を社内で広く共有せず、目的と取扱担当者を決めて必要な範囲で扱います。少人数の職場では、集計しても誰の情報か分かる場合があります。本人の意思やプライバシーに配慮し、必要に応じて産業保健の専門職へ相談してください。厚生労働省の指針にある健康情報の保護
社内だけで判断しにくいときの相談先
健康診断の結果への対応やメンタルヘルスの相談は、産業医などの専門職へつなぎます。労働者50人未満の小規模事業場では、地域産業保健センターが原則無料の産業保健サービスを提供しています。支援内容や利用条件は、所在地を担当する窓口で確認してください。地域産業保健センターの案内
相談するときは、「誰がどんな場面で困っているか」「会社で試した対応」「これから確認したいこと」を整理すると、必要な支援を相談しやすくなります。診断結果などの個人情報は、相談先の案内を受けて必要な範囲で扱いましょう。
取り組みを整えたら健康経営優良法人の認定へ
改善を続ける体制ができてきたら、健康経営優良法人の認定を検討できます。中小規模法人部門では、大まかに次の順序で準備します。
- 申請区分と健康宣言を確認する。加入する保険者に応じた健康宣言の方法を確認します。
- 当該年度の要件に沿って準備する。体制や取り組みを確認し、実施記録と申請書を整えます。
- 受付期間内に申請する。申請内容の審査を経て、日本健康会議が認定します。
2026年11月1日確認時点では、健康経営優良法人2027の中小規模法人部門の申請受付は終了しています。これから取り組む会社は、現行要件を参考に準備し、次回の公表内容を確認しましょう。
申請期間や要件は年度ごとに確認してください。一度の研修や特定の手法だけで、認定要件を満たすものではありません。公式の中小規模法人部門の申請案内
また、公共工事の入札で評価されるかは別の確認事項です。認定だけで全国一律に加点されたり、落札が保証されたりするわけではありません。
具体的な申請準備と、発注者ごとの入札評価の確認方法は、建設業の健康経営優良法人|入札加点の確認と認定申請の進め方にまとめています。まず現場を一つ良くすることから始め、認定の準備につなげていきましょう。
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建設業の健康経営優良法人|入札加点の確認と認定申請の進め方
健康経営優良法人の認定は、建設業の入札で評価される場合があります。ただし、認定すれば全国の入札で加点される、経審の点数が自動的に上がる、落札できるという制度ではありません。 行政書士 小野馨 先に確認 ...
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現場の課題と、相談したい範囲を整理する
休憩、仕事の偏り、健診の段取りなど、まず一つの現場で何を変えたいかを書き出してみてください。取り組みを整えながら、認定申請や入札への備えを別に確認していくと、目的を見失わずに進められます。
サクセスファン行政書士事務所へ相談する場合は、現在の取り組みと、認定や建設業の手続きのどこを相談したいかをお知らせください。具体的な対応範囲・費用は相談時に確認します。労務管理は社会保険労務士等、健康上の判断は産業医等の医療職へ相談するなど、役割を分けて進めます。
制度・資料の確認日:2026年11月1日。研究結果は対象者・施策・条件を踏まえて紹介しています。
