こんにちは。おのっちです。
「建設業許可を取りたいけど、一体いくらかかるんだろう?」
「行政書士に頼むと高いし、自分でやれば9万円だけで済むのかな?」
そんなふうに電卓を叩きながら悩んでいませんか。
建設業許可の費用は、申請時に役所に払うお金だけではありません。
実は、見落としがちな証明書の取得費や、許可を取った後に毎年かかり続ける維持費こそが、皆さんの資金繰りを圧迫する隠れた要因なんです。
この記事では、建設業許可の専門家として、表面的な金額だけでなく、5年、10年と事業を続けていくために必要な「本当のコスト」を包み隠さずお話しします。
安さだけで判断して後悔しないよう、賢い投資の基準を一緒に見ていきましょう。
- 知事許可と大臣許可で異なる法定手数料の正確な金額
- 行政書士報酬の市場相場と「安すぎる」事務所のリスク
- 申請前に意外とかさむ「公的証明書」の実費シミュレーション
- 許可取得後にかかり続ける5年間のランニングコスト総額
建設業許可の費用内訳と法定実費
建設業許可を取得するためには、まず「法定費用」と呼ばれる実費が必要です。
これは、自分で申請しても、行政書士に依頼しても、誰がやっても1円も安くならない「役所に支払うお金」です。
まずは、このベースとなる金額をしっかりと把握しておきましょう。
知事許可と大臣許可の法定手数料
建設業許可の費用において、最初にかかる大きな出費が申請手数料です。
これは許可の区分(誰に許可をもらうか)によって金額が明確に決められています。
ここを間違えると予算が大きく狂ってしまうので、まずは自分の会社がどちらに該当するかを確認してくださいね。
まず、一つの都道府県内のみに営業所を置く「知事許可」の場合、新規申請の手数料は90,000円です。
これは「手数料」という扱いになります。多くの自治体では、現金ではなく「収入証紙(その県専用の金券のようなもの)」を購入して申請書に貼り付ける形で納付します。
ただし、東京都のように現金納付が原則の地域や、大阪府のようにコンビニ納付やPay-easy(ペイジー)に対応している先進的な自治体も増えています。
自分の管轄する役所がどの支払い方法に対応しているか、事前にホームページ等でチェックしておきましょう。
次に、二つ以上の都道府県に営業所を展開する「大臣許可」の場合、新規申請には150,000円が必要です。
こちらは手数料ではなく「登録免許税」という税金の扱いになるため、収入証紙ではなく、郵便局や銀行で税金として納付し、その領収書を申請書に貼り付けます。
金額が大きいので、資金繰りには注意が必要ですよ。
【返金不可の落とし穴に注意!】
この法定費用は、あくまで「審査を受けるための手数料」です。万が一、審査に落ちて不許可になったり、要件不足で途中で申請を取り下げたりした場合でも、一切返金されません。「とりあえず出してみよう」という軽い気持ちで申請して9万円や15万円をドブに捨てることのないよう、要件確認は石橋を叩くように慎重に行う必要があります。
行政書士報酬の相場と価格変動
次に、専門家である行政書士に依頼する場合の報酬(手数料)についてです。
ここは法律で決まった金額があるわけではなく「オープン価格」なので、事務所によってピンキリですが、適正な相場を知っておくことが大切です。
「高いな」と感じるかもしれませんが、その中身を知れば納得できる部分も多いはずです。
一般的に、最も多い「知事許可(新規・一般)」のケースであれば、報酬の相場は10万円〜15万円(税別)の範囲に収まることが多いです。
これより極端に安い(例えば7万円台など)事務所もネット上には存在しますが、その場合は「書類作成のみ」で、役所への提出や面倒な公的証明書の収集は自分で行わなければならない「セルフサービス」のケースがほとんどです。
行政書士報酬の価格帯別サービス範囲比較
| 価格帯 | 相場目安 | サービス内容の特徴 |
|---|---|---|
| 格安帯 | 7万〜9万円 | 書類作成のみ代行。証明書収集や、最も手間のかかる「実務経験の裏付け資料(過去の請求書探しなど)」の整理は顧客自身が行う必要がある場合が多い。 |
| 標準帯 | 10万〜15万円 | フルサポート型。証明書の代理取得、要件診断、役所との事前協議、補正対応まで一貫して行う安心プラン。ほとんどの方がここを選びます。 |
| 高付加価値帯 | 16万円以上 | 10年実務経験などの難関案件や、特急での申請、特殊な組織再編を伴うケース。コンサルティング要素が強くなります。 |
このように、報酬額の違いは「自分がどれだけ動くか」という手間に直結します。
忙しい社長さんが、自分の時間を確保するために「全部丸投げしたい」という場合は、目先の安さよりもサービス範囲の広い「標準帯」以上の事務所を選ぶのが無難ですよ。
申請に必要な証明書の実費一覧
「9万円の手数料だけ用意すればいいんでしょ?」と思っていると、意外な出費に驚くことになります。
建設業許可の申請書には、内容の裏付けとして、法務局や市区町村役場で取得する「公的な証明書(原本)」を大量に添付しなければなりません。
これが地味にお金がかかるんです。
例えば、役員が3名の法人で申請する場合を詳しくシミュレーションしてみましょう。
新規許可取得時の実費総額シミュレーション
具体的には以下のような証明書が必要です。
(出典:法務省『登記事項証明書等の請求にはオンライン請求が便利・お得です』)
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書):1通600円(オンライン請求なら480円)。法人の場合は必須です。
- 身分証明書(本籍地の市区町村で取得):1通300円〜600円程度。役員全員分が必要です。「破産者でないこと」を証明する書類です。
- 登記されていないことの証明書(法務局で取得):1通300円。これも役員全員分必要です。「成年被後見人等でないこと」を証明します。
- 納税証明書(県税事務所など):1通400円程度。法人事業税などに未納がないかを証明します。
- 残高証明書(銀行で取得):1通500円〜2,000円程度。500万円の資金要件を証明するために必要です。
これらを合計すると、証明書代だけで4,000円〜5,000円、人数が多ければ1万円近くになります。
さらに、郵送で取り寄せる場合は「定額小為替」の手数料(1枚200円)や往復の郵送料もかかります。予算を組むときは、法定費用(9万円)にプラスして、1万〜1.5万円程度の実費を予備費として見ておくのがスマートです。
自社申請と代行依頼のコスト比較
「行政書士に払う15万円がもったいないから、自分でやろう!」という社長さんもいらっしゃいます。
そのガッツは素晴らしいですし、痛いほど気持ちはわかります。創業期は1円でも節約したいですよね。
でも、そこには「見えないコスト(機会費用)」が潜んでいることを忘れてはいけません。
初めての方がゼロから「建設業許可の手引き(100ページ以上あります)」を読み込んで申請書を作成し、法務局・県税事務所・銀行・役所を回って書類を集め、平日の昼間に土木事務所の窓口へ行って交渉する……。
ココに注意
この一連の作業にかかる時間は、平均して80時間以上とも言われています。
しかも、プロでない人間が作った書類が一発で受理されることは稀で、不備を指摘されて修正のために2回、3回と窓口に通うことになります。
【機会損失の考え方】
もし社長の時給を3,000円(安すぎるかもしれませんが)と考えた場合、80時間費やせば24万円の人件費がかかっている計算になります。これでは、行政書士に15万円払って依頼するよりも高くついてしまうことになりますよね。さらに、その間、社長が本業の営業や現場に出られないことで、売上が下がるリスクも考えなければなりません。
「時は金なり」。プロに任せて最短で許可を取り、その浮いた時間で500万円の工事を一本でも多く取った方が、結果的に会社に残るお金は多くなるはずです。経営判断として、どちらが得かじっくり考えてみてくださいね。
格安行政書士の注意点と選び方
「それでもやっぱり安い方がいい」という場合も、業者選びは慎重に行いましょう。格安事務所の中には、「許可を取ったらそれっきり」というスタンスのところもありますが、建設業許可は取ってからが大変なんです。
一番怖いのは「更新忘れ」です。建設業許可は5年ごとに更新が必要ですが、格安事務所の中には、5年後の更新時期に案内(リマインド)を送ってくれないところがあります。日々の業務に追われて気づいたら許可期限が切れていた……なんてことになれば、また新規で9万円払って取り直しです。許可番号も変わってしまい、取引先からの信用もガタ落ちしてしまいます。
目先の数万円の安さよりも、以下のポイントを確認してください。
- 「5年後の更新案内を必ずしてくれるか」
- 「毎年の決算届もサポートしてくれるか」
- 「業種追加などの相談に乗ってくれるか」
こういった、長い付き合いができるパートナーかどうかを見極めることが、将来的なトラブルを防ぐカギになります。安物買いの銭失いにならないよう、しっかりと見極めてくださいね。
建設業許可の費用と維持管理費
許可は「取ったらゴール」ではありません。そこからがスタートです。車検と同じように、建設業許可にも維持費(ランニングコスト)がかかります。ここを計算に入れていないと、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。事業計画の中に、しっかりと維持費を組み込んでおきましょう。
### 5年ごとの更新手続きと手数料
建設業許可の有効期限は5年間です。これを過ぎると許可は効力を失います。更新の手続きは、有効期限の30日前までに行う必要があります。
更新にかかる法定手数料は、知事許可・大臣許可を問わず一律で50,000円です。新規の時よりは少し安くなりますね。行政書士に依頼する場合の報酬も、新規取得時よりは安くなる傾向があり、相場としては5万〜8万円程度です。つまり、5年に一度、トータルで10万〜13万円程度のまとまった出費が発生することを覚えておいてください。毎月2,000円ずつでも積み立てておくと安心ですよ。
決算変更届の提出にかかる経費
建設業者特有の義務として、毎年の決算終了後4ヶ月以内に「決算変更届(事業年度終了届)」を提出しなければなりません。
これは税務署に出す確定申告とは別物で、土木事務所などに「今期はこれくらいの工事をしました」と報告するものです。
これをサボると、5年後の更新申請を受け付けてもらえません。これ、本当に重要です。
この届出自体には法定費用(手数料)はかかりません(※一部自治体を除く)。
しかし、書類作成を行政書士に依頼する場合、年間3万〜5万円程度の報酬がかかるのが一般的です。
5年間で計算すると15万〜25万円。
実は、更新費用よりもこの毎年の届出費用の方が、トータルの負担額は大きくなるんです。「毎年コストがかかる」ということを認識しておいてくださいね。
業種追加や般特新規の追加料金
事業が順調に拡大し、「今は内装工事だけだけど、建築一式工事もやりたい」となった場合は「業種追加」の手続きが必要です。これには手数料が50,000円かかります。
おのっちの節約テクニック
業種追加(5万円)を単独で行うと高いですが、5年ごとの「更新(5万円)」のタイミングに合わせて同時に申請すると、手数料を合算できたり(合計10万円で済むケースや、自治体によっては調整されることも)、行政書士報酬の「同時申請割引」が適用されたりして、トータルコストを抑えられることがあります。
急ぎでなければ、更新時期を狙うのも一つの賢い戦略ですよ。
また、元請としての受注額が増え、下請けに出す金額が4,500万円を超えるようになる場合、「一般建設業」から「特定建設業」へ切り替える必要があります。
これを「般特新規(はんとくしんき)」と呼びます。これは新規申請と同じ扱いになるため、手数料は90,000円かかります。
法人成りや事業承継の認可コスト
個人事業主からスタートして、途中で法人化(法人成り)する場合、以前は個人の許可を一度廃業して、法人で取り直す必要がありました。
しかし、2020年の法改正で、事前の「認可」を受けることで許可番号や実績をそのまま引き継げる制度(事業承継)ができています。
この承継認可の手数料は、多くの自治体では無料(0円)ですが、手続きが非常に複雑です。
事業譲渡契約書の作成や、株主総会議事録の整備などが必要になるため、行政書士報酬は新規許可と同等か、それ以上(15万〜25万円以上)かかるケースが多いです。
「許可番号を変えたくない」「空白期間を作りたくない」「公共工事の実績を消したくない」という場合は、このコストをかける価値が十分にあります。
経営事項審査を受ける際の負担
公共工事の入札に参加したい場合は、許可に加えてさらに「経営事項審査(経審)」を毎年受ける必要があります。これもコストがかかります。
- 経営状況分析手数料:約1.3万円(登録分析機関に支払い)
- 経営事項審査手数料:約1.1万円〜(都道府県に支払い)
- 行政書士報酬:10万〜15万円程度(決算届+分析+経審のセット)
これらを合わせると、公共工事を狙う企業は、許可の維持費だけで年間15万〜20万円程度の予算確保が必要になります。
民間工事だけなら経審は不要ですので、自社の戦略に合わせて判断してください。
### 建設業許可の費用総額まとめ
いかがでしたか?最後に、建設業許可にかかる費用の全体像をざっくりまとめておきましょう。
これから許可を取る皆さんの「投資計画」として参考にしてください。
- 初期費用(新規):法定費用9万〜15万 + 報酬10万〜15万 = 約20万〜30万円
- 維持費用(5年間):更新費 + 毎年の決算届 = 約30万〜40万円
- 自社申請のリスク:目先の10万円を節約するために、20万円以上の時間と労力を失う可能性がある
建設業許可は、決して安い買い物ではありません。
しかし、500万円以上の大きな工事を受注できるようになり、対外的な信用も得られるための「投資」と考えれば、そのリターンは十分に大きいはずです。
目先の金額だけでなく、長期的なコストパフォーマンスと安心を買うつもりで、最適な方法を選んでくださいね。
