
- 500万円ギリギリの工事だけど、消費税分くらいオーバーしてもバレないだろう
- 元請けの社長とは長い付き合いだから、許可がなくても目をつぶってくれている
もし、あなたが今、少しでもこのような「甘い考え」を持っているとしたら……。
厳しいことを言うようですが、今すぐその考えを捨ててください。
2025年現在、建設業界のコンプライアンス(法令遵守)は、かつてないほど厳格化されています。
「バレなきゃいい」は通用しません。
バレた瞬間、あなたの会社は社会的信用を失い、最悪の場合、廃業に追い込まれることになります。
この記事では、建設業法違反(無許可営業)に対する震えるほど重い「罰則」と、一度処分を受けると地獄を見る「5年間の欠格期間」、そして意外なところから発覚する「バレる理由」について、包み隠さず解説します。
この記事でわかること
- 懲役3年・罰金300万円という刑事罰の現実
- 会社を即死させる「5年間の欠格期間」の恐ろしさ
- 「応援」「人工出し」は違法?請負と派遣の境界線
- グリーンサイトやインボイスで「無許可」がバレる仕組み
- 万が一違反してしまった場合の正しい対処法
建設業法違反の罰則規定と「5年間の欠格期間」の恐怖
まず、結論から申し上げます。 許可を受けずに500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上など)の工事を請け負うことは、単なるルール違反ではなく、刑法犯罪と同じ「犯罪行為」です。
建設業法第47条には、無許可営業を行った者に対して、非常に厳しい罰則規定が設けられています。これは「知らなかった」では済まされない、経営者としての重大な責任です。
懲役3年以下または300万円以下の罰金
無許可営業を行った場合、建設業法第47条に基づき、以下の刑罰が科せられます。
ここで、この罰則がいかに重いものであるか、3つの視点から深掘りしてみましょう。
① 中小企業を直撃する「300万円」の破壊力
「300万円」という金額を聞いて、どう感じますか?
「まぁ、痛いけど払えるかな」と思う社長さんは少ないはずです。
多くの個人事業主や中小建設業者にとって、利益ベースで300万円を捻出するには、売上で言えば数千万円規模の仕事が必要です。
それが、たった一度の過ちで「罰金」として消えてしまうのです。これは経営基盤を揺るがす致命傷になりかねません。
② 実刑もあり得る「懲役刑」と「併科」の恐怖
ただお金を払えば済むと思ったら大間違いです。
法律には「懲役刑」も規定されています。 悪質な常習犯であったり、組織的に隠蔽工作を行っていたりした場合は、執行猶予がつかずに実刑判決が出る可能性もゼロではありません。
経営者が逮捕されたとなれば、新聞やネットニュースに名前が載り、家族や従業員に多大な迷惑をかけることになります。
さらに恐ろしいのが「併科(へいか)」です。
これは「懲役刑」と「罰金刑」の両方をダブルで食らうことを意味します。
刑務所に入り、さらに財産も没収される。これが国が決めたペナルティなのです。
③ 会社も罰せられる「両罰規定」
「俺が罰金払って責任を取るから、会社は勘弁してくれ」 これも通りません。
建設業法第53条には「両罰規定(りょうばつきてい)」があります。 実際に違反行為を行った「行為者(社長や現場責任者)」が罰せられるだけでなく、「法人(会社そのもの)」に対しても最大300万円の罰金刑が科せられます。
つまり、最悪のケースでは、社長個人に300万円、会社に300万円、合わせて最大600万円ものキャッシュが一瞬にして吹き飛ぶことになります。
(出典:e-Gov法令検索『建設業法 第47条(罰則)』)
「執行終わりから5年間」許可が取れない欠格期間
金銭的な罰則も確かに痛いですが、建設業者にとって真の意味で「死刑宣告」に等しいのが、この「欠格期間(けっかくきかん)」です。
もし無許可営業で検挙され、「罰金刑以上」の刑が確定したとしましょう。
「罰金を払ったから、これで罪滅ぼしは終わり。
心機一転、ちゃんと許可を取って頑張ろう!」 そう思って役所に申請に行っても、窓口で門前払いを食らいます。
なぜなら、建設業法第8条において、「禁錮以上の刑、または建設業法違反で罰金刑を受けた者は、その刑の執行が終わってから5年間は許可を受けることができない」と定められているからです。
5年間できないこと
- 新規の建設業許可申請(絶対に受理されません)
- 500万円以上の工事の請負(再び無許可営業になります)
- 他の建設業者の役員になること(その会社まで許可取り消しになります)
事実上の「廃業宣告」である理由
想像してみてください。今日から5年間、500万円以上の工事を一切請け負えない状況を。
公共工事への入札参加資格も当然失いますし、民間の元請け業者からも「欠格事由に該当する会社」として取引停止処分を受けるでしょう。
売上は頭打ちになり、成長意欲のある従業員は「この会社に未来はない」と辞めていき、金融機関からは融資を引き上げられる。
「5年待てばいい」のではなく、5年も待てずに会社が倒産してしまうのが現実なのです。
役員の連鎖的被害(他の会社も巻き添えに)
この欠格要件の恐ろしいところは、ウイルスのように感染する点です。
例えば、A社の社長が建設業法違反で罰金刑を受けたとします。
すると、A社は許可を取り消されます。 もし、この社長が、友人の会社であるB社の取締役も兼任していたらどうなるでしょうか?
なんと、「欠格要件に該当する役員がいる」という理由で、何の関係もないB社の建設業許可まで取り消されてしまうのです。
自分の過ちが、仲間や取引先まで巻き込んで破滅させてしまう。これが建設業法の厳しさなのです。
抜け道は存在するのか?
よく「社長を辞任して、妻を社長にして新会社を作ればバレないのでは?」と考える方がいますが、役所は甘くありません。
実質的に支配しているのが本人(違反者)であると判断されれば、新会社の許可も下りませんし、申請書類には賞罰の履歴を正直に書く義務があります。
虚偽記載をすれば、それこそ別の罪に問われます。一度ついた「×(バツ)」は、5年間消えることはないのです。
(出典:国土交通省『建設業許可の欠格要件について』)
うっかり違反しやすい「500万円の壁」の落とし穴
「うちは500万円もいかない小規模工事ばかりだから関係ない」 そう油断している方ほど危険です。実は、無許可営業で摘発されるケースの多くは、悪意のある確信犯ではなく、法律の解釈を間違えていた「うっかり違反」なのです。
ここで改めて、多くの社長が勘違いしている「500万円の計算ルール」を徹底的に叩き込んでおきましょう。
①「税抜価格」で判断してしまう罠
商売人の感覚だと、売上といえば「税抜」で考えることが多いですよね。
しかし、建設業法の500万円基準は、すべて「消費税込み」で判断します。
例えば、税抜460万円の工事契約を結んだとします。
「500万円行ってないからセーフ!」と思いますよね?
でも計算してみてください。 460万円 × 1.1(消費税10%)= 506万円 はい、アウトです。
この時点で、あなたは無許可営業の実行犯になってしまいます。
見積書を作成する段階で、必ず「税込金額」を確認する癖をつけてください。
②「材料費」を含めずに計算してしまう罠
これが一番多いトラブルの元です。いわゆる「施主支給(せしゅしきゅう)」や「注文者支給」のケースです。
参考
例えば、施主がこだわりのシステムキッチン(市場価格200万円)を自分で購入し、あなたがその設置と内装工事を請負金額350万円(税込)で引き受けたとします。
あなたの契約書の金額は350万円ですから、一見すると許可は不要に見えます。
しかし、建設業法施行令第1条の2には明確にこう書かれています。
「注文者が材料を提供する場合は、その市場価格及び運送賃を請負代金の額に加えたものを基準とする」 つまり、法律上の工事金額は以下のようになります。
材料費(200万円)+ 工事費(350万円)= 合計550万円 > 500万円 結果、許可が必要な工事となり、無許可営業が成立してしまうのです。
これは、形式的に契約金額を安く見せて許可逃れをすることを防ぐためのルールです。
「材料はあっち持ちだから」という言い訳は通用しません。
③「工期を分けて」契約してしまう罠
一つのリフォーム工事なのに、契約書を意図的に分割する手口です。
「解体工事で250万円」「内装工事で300万円」と契約書を2枚に分けて、どちらも500万円未満に見せかける行為。
これ、実態として「一連の工事」であれば、合計550万円の工事を無許可で請け負ったとみなされます。
工期が連続していたり、施工場所が同じだったりすれば、言い逃れはできません。
むしろ、脱法行為として悪質性が高いと判断され、より重い処分を受ける可能性があります。
「応援」や「人工出し」は建設業法違反?
現場で日常的に行われている「応援(人工出し)」。
「今日は人が足りないから、お宅の若い衆を3人貸してくれよ」といったやり取りです。 これも、実は法的に非常にグレー、あるいは真っ黒な領域になるリスクをはらんでいます。
ここでは「建設業法」だけでなく、「職業安定法」や「労働者派遣法」という別の法律の壁が立ちはだかります。
「請負」と「派遣」の決定的な違い
建設業において認められているのは、原則として「請負契約」だけです。 請負契約とは、「仕事の完成」に対して責任を負うものです。
そして、職人への指揮命令は、雇用主であるあなたが行わなければなりません。
しかし、応援の実態はどうでしょうか?
応援に来た職人さんが、元請けの現場監督の指示で動き、タイムカードのように働いた時間(1日いくら)でお金をもらう。
そして、仕事の完成責任は負っていない。 これは、法律上は「請負」ではなく「労働者派遣」とみなされます。
建設業務への派遣は法律で禁止されている
ここで大問題が発生します。労働者派遣法により、「建設業務への労働者派遣」は禁止されているのです。
つまり、実態が派遣である「人工出し」を行うことは、違法派遣(偽装請負)として摘発されるリスクがあるのです。
| 項目 | 適法な請負(工事) | 違法な派遣(人工出し) |
|---|---|---|
| 指揮命令権 | 自社の職長が指示する | 元請けや他社の監督が指示する |
| 報酬の対価 | 仕事の完成に対して支払う | 労働時間(人工)に対して支払う |
| 道具・資材 | 自社で負担・用意する | 元請けのものを借りて使う |
注意ポイント
これが摘発されると、「職業安定法第44条(労働者供給事業の禁止)」違反として、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
さらに、もしその応援部隊が実質的に工事の一部を請け負っていると判断され、その金額規模が大きければ、当然ながら「無許可営業」の問題も浮上するダブルパンチとなります。
「昔からの慣習だから」で済まされる時代ではありません。コンプライアンスの波は、現場の隅々まで押し寄せているのです。
(出典:厚生労働省『労働者派遣事業・職業紹介事業等』)
なぜバレる?無許可営業が発覚する5つのルートと対処法
「昔からこのやり方でやってきたし、バレたことなんてないよ」
ベテランの社長さんほどそう言いますが、時代は変わりました。
今はデジタル化が進み、行政機関同士のデータ連携も強化されています。
アナログな隠蔽工作は通用しません。
ここでは、無許可営業が発覚する代表的なルートをご紹介します。
ルート①:グリーンサイトやCCUSによるシステム検知
今、最も発覚リスクが高いのがこのパターンです。
ポイント
大手ゼネコンや中堅建設会社の現場では、安全書類作成サービス「グリーンサイト」や、国が推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の導入が必須になりつつあります。
これらのシステムは非常に優秀です。
会社情報や作業員名簿を登録する際、許可の有無を入力する必須項目があります。
もし、システム上で「無許可」と登録されているのに、施工体制台帳上の請負金額が500万円を超えているデータが入力されたらどうなるでしょうか?
システムによっては自動的にエラーが出たり、アラートが表示されたりします。
元請けの担当者が目視で見落としていたとしても、デジタルの監視網が「この業者は金額オーバーしていますよ」と教えてしまうのです。
システム登録ができない=現場に入場できない、という事態にも直結するため、隠し通すことは不可能です。
ルート②:インボイス制度と税務調査の強化
インボイス制度の導入により、請求書やお金の流れの透明化が劇的に進みました。
これが建設業法違反の発覚にどう繋がるのでしょうか?
答えは「税務調査」です。
税務署の職員は、プロ中のプロです。税務調査に入った際、売上の金額だけでなく、「どんな取引内容か」を細かくチェックします。
そこで「○○工事一式 600万円」という請求書の控えが見つかったとします。
調査官はふと思います。
「おや、この会社は建設業許可の登録免許税や証紙代を経費計上していないな。
許可証のコピーもない。無許可でこの規模の工事をやっているのか?」と。
実は、税務署と国土交通省・都道府県の間には情報連携のルートが存在します。
注意ポイント
悪質な法令違反の疑いがある場合、税務署から管轄の土木事務所へ通報(情報提供)が行われるリスクがあるのです。
「税務署は税金さえ払えばいい」というのは過去の話。お上は繋がっているのです。
ルート③:ライバル業者や退職者による「タレコミ」
感情的なトラブルが引き金になるケースも、実は非常に多いです。
「あいつのところ、許可もないのにデカい仕事を安く取っていったぞ。ズルいじゃないか」と面白く思わない競合他社。
あるいは、給料未払いや待遇に不満を持って辞めた元従業員。
注意ポイント
こういった人々が、正義感あるいは復讐心から、土木事務所の窓口や「公益通報窓口(駆け込み寺)」に匿名で通報します。
「○○建設が、××町の現場で無許可工事をやっています。工期はいつまでです」
具体的な場所と証拠写真付きで通報されれば、役所も「知りませんでした」では済みません。
立ち入り検査が行われ、現行犯で御用となります。 敵は外にいるとは限りません。
日頃の誠実な経営が、最大のリスクヘッジになるのです。
ルート④:銀行融資の審査
運転資金や設備投資のために銀行へ融資を申し込む際、建設業者であれば必ずと言っていいほど「建設業許可証」の提出を求められます。
「持っていません」と答えると、銀行マンの目は厳しくなります。
さらに決算書を見て、500万円を超える売上が恒常的に計上されていれば、「この会社は、法令違反(コンプライアンス違反)の状態で営業している」と認定されます。
銀行にとって、コンプライアンス違反は「反社会的勢力」との取引に近いリスクとして扱われます。
法令違反企業にお金を貸す銀行はありません。新規融資が断られるのはもちろん、最悪の場合、既存の融資の引き上げ(貸し剥がし)や、一括返済を求められるリスクすらあります。
無許可営業は、資金繰りの悪化に直結するのです。
ルート⑤:現場での労災事故発生時
これが一番悲惨で、かつ逃れようのないパターンです。
現場で職人が大怪我をしたり、死亡事故が起きたりした場合、警察と労働基準監督署が徹底的な捜査を行います。
「誰の責任か」を明確にする過程で、契約関係や施工体制台帳が洗いざらい調べられます。
そこで無許可営業が発覚すればどうなるか。
労災隠しや労働安全衛生法違反での立件に加え、建設業法違反でも立件され、逮捕・報道という最悪の結末を迎えます。
事故の補償問題に加え、刑事罰、行政処分と、会社が存続できる可能性は限りなくゼロに近くなるでしょう。
もし「無許可状態」に気づいたらどうすべきか
ここまで読んで、「やばい、うちの今の現場、アウトかもしれない…」と冷や汗をかいている方もいるかもしれません。
万が一、ご自身の会社が違反状態にあることに気づいたら、どうすればよいのでしょうか。
絶対にやってはいけないのは「隠蔽(隠すこと)」と「強行(そのまま続けること)」です。
① 直ちに工事契約を見直す
現在進行中の工事があるなら、すぐに元請け業者や発注者に正直に事情を説明してください。
ポイント
契約金額を減額(工事内容を分割するのではなく、施工範囲を縮小して適正な金額にする)して500万円未満に収めるか、あるいは許可を持っている他の業者に工事の一部を譲るなどの対応が必要です。
当然、信用は傷つきますし、損害賠償を請求されるかもしれません。
しかし、逮捕されて5年間の欠格期間を食らい、会社が消滅するよりは、はるかにマシです。
② 正規の許可取得に向けて動く
トラブル処理が終わったら、あるいはトラブルになる前に、一日も早く「正規の建設業許可」を取得する準備に入ってください。
「いつかバレるかもしれない」とビクビクしながら経営するストレスから解放される唯一の方法は、正々堂々と許可というパスポートを手にすることだけです。
「でも、過去に無許可工事をしていた実績は、実務経験として認められるの?」
これは非常にデリケートで難しい問題です。
原則として、違法な工事の実績は経験年数として認められません。
ポイント
しかし、500万円未満の適法な工事の実績だけで10年分を証明できる可能性もありますし、資格者を雇うことで実務経験の壁をクリアできるかもしれません。
過去の清算をし、未来へ進むためには、法律の知識と高度な実務ノウハウを持った行政書士の判断が不可欠です。
ご自身で判断して墓穴を掘る前に、まずは専門家にご相談ください。
私たち行政書士には法律上の守秘義務がありますので、ご相談内容を警察や役所に通報することは絶対にありません。安心してご相談ください。
まとめ:無許可のリスクをゼロにして、胸を張れる経営を
無許可営業のリスクについて、かなり厳しい現実をお伝えしました。 最後に要点を整理します。
ポイントまとめ
- 罰則は「懲役3年・罰金300万円」で、会社と社長の両方が罰せられる。
- 一度処分を受けると「5年間」は許可が取れず、事実上の廃業となる。
- 500万円の基準は「税込・材料費込」で、うっかり違反が多い。
- システム、税務署、銀行、通報など、バレるルートは四方八方にある。
- リスクを背負い続けるより、許可を取って「安心」と「信用」を手に入れよう。
建設業許可は、単に「大きな工事ができる」だけの権利ではありません。
それは、あなたの会社が「法律を守るホワイトな企業である」という証明書であり、従業員やその家族、そして取引先を守るための「盾」なのです。
「うちは取れるのかな?」「過去の経歴が心配だ」 そんな不安をお持ちの方は、ぜひ一度、建設業許可のプロフェッショナルにご相談ください。
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