「産業廃棄物を県外へ運ぶ場合、何県の許可が必要なのか」
「途中で通過する県の許可も取らなければいけないのか」
「会社がある県の許可は必ず必要なのか」
複数の都道府県にまたがって産業廃棄物を収集運搬するとき、最初に迷いやすいのがどの地域の許可を取ればよいのかという問題です。
結論からいうと、車両が走る都道府県をすべて数えて許可を取得するわけではありません。
積替え保管を伴わない通常の運搬では、まず、
- どこで産業廃棄物を積み込むか
- どこで積み卸すか
- 途中の県は通過するだけか
- 積替え保管をする場所があるか
を整理します。
特に「運搬のみ」の場合、許可地域を考える基本は産業廃棄物の積卸しを行う区域です。愛知県の2026年3月更新の公式案内でも、この考え方が明示されています。
産業廃棄物収集運搬業許可そのものの基本から確認したい方は、先に「産業廃棄物収集運搬業許可とは」の解説を読むと全体像をつかみやすくなります。
産業廃棄物収集運搬業許可とは?制度の意味と基本をわかりやすく解説
産業廃棄物収集運搬業許可は複数県でどこまで必要?
まず、代表的なケースを整理すると次のようになります。
| ケース | 基本的な確認先 |
|---|---|
| A県で積込み → B県を通過 → C県で積卸し | A県・C県 |
| 本店はA県、B県で積込み → C県で積卸し | B県・C県を中心に確認 |
| A県とB県でそれぞれ積込み → C県で積卸し | A県・B県・C県 |
| A県で積込み → B県で積替え保管 → C県で積卸し | A県・C県に加え、B県の積替え保管場所を管轄する行政庁を別途確認 |
ポイントは、**「何県を走るか」ではなく「どこで何をするか」**です。
産業廃棄物収集運搬業の許可は、廃棄物処理法第14条第1項に基づく手続です。環境省も、産業廃棄物の収集または運搬を業として行おうとする者を許可手続の対象として案内しています。
A県で積み、B県を通過し、C県で降ろす場合
たとえば、
A県で積込み → B県を通過 → C県で積卸し
という運搬であれば、まずA県とC県の許可を確認します。
B県で積込みも積卸しもせず、単に通過するだけなら、B県を走ることだけを理由として許可対象へ加えるものではありません。
埼玉県の2026年9月11日更新の公式案内でも、排出事業所または搬入する処分場等が県外の場合、それぞれの区域を管轄する都道府県知事等の許可が必要とされています。
そのため、
「3県を走るから3県分」
ではなく、実際の運搬内容から必要な申請先を切り分けることが大切です。
自社に必要な許可地域を判断する5つの確認
1.どこで産業廃棄物を積み込むか
排出事業場など、産業廃棄物を実際に積み込む場所を書き出します。
複数県の取引先から収集する予定なら、
- A県の排出事業場
- B県の排出事業場
- C県の排出事業場
というように、積込み地域を分けて整理します。
「関東一円」「西日本全域」といった営業エリアではなく、実際にどこで産業廃棄物を受け取る予定なのかまで具体化するのがポイントです。
2.どこで積み卸すか
次に、処分施設など、産業廃棄物を実際に積み卸す場所を整理します。
積込み地と積卸し地が別の都道府県なら、それぞれについて許可を確認します。
複数の処分先を利用する予定がある場合は、処分先ごとに運搬ルートを分けて整理すると判断しやすくなります。
3.途中の地域は本当に「通過だけ」か
運搬途中の都道府県について、
- 積込みをしない
- 積卸しをしない
- 積替え保管もしない
のであれば、単に道路を走行する地域として切り分けます。
「トラックが県内を走る」という事実と、「その県で収集運搬業を行う」ということを混同しないようにしましょう。
4.積替え保管をする場所がないか
途中で産業廃棄物を積み替えたり、一時的に保管したりする場合は、単なる通過とは扱いが異なります。
埼玉県の公式案内でも、収集した廃棄物を積み替えるため一時的に保管する場合は、その積替え保管場所を管轄する都道府県知事または政令で定める市長の許可が必要とされています。
したがって、
A県で積込み → B県で積替え保管 → C県で積卸し
というケースを、
「A県とC県だけ確認すればよい」
と判断することはできません。
5.都道府県と政令市等のどちらが許可行政庁か確認する
積替え保管を伴わず、一つの政令市等の区域を越えて収集運搬する場合は、原則として都道府県が許可事務を行う仕組みがあります。
一方で、
- 一つの政令市等の区域内だけで業を行う場合
- 政令市等の区域内で積替え保管を行う場合
- 既存許可の内容との関係を確認する必要がある場合
などには例外があります。
埼玉県の公式案内でも、この許可合理化と例外が整理されています。
最終的な申請先は、実際に事業を行う地域の最新公式情報で確認してください。
小野馨の一言
複数県の許可を考えるときは、最初から「何県分申請するか」を数えるより、まず運搬ルートを書き出して「どこで積む・どこで卸す・途中で何をする」を整理すると考えやすくなります。県の数ではなく、実際の運搬内容から確認していくことがポイントです。
本店や営業所がある県の許可は必ず必要?
本店や営業所があるという理由だけで、その都道府県の収集運搬業許可が必ず必要になるわけではありません。
許可地域を考える中心は、会社所在地そのものではなく、実際に収集運搬業を行う区域です。
たとえば、
- 本店はA県
- B県で積込み
- C県で積卸し
- A県では積込みも積卸しもしない
という場合、本店所在地だけを理由にA県を許可対象と判断するものではありません。
ただし、本店や主たる事務所の所在地が、その都道府県内でどの窓口へ申請するのかを決める要素になる場合はあります。
したがって、
「どの地域の許可が必要か」
と、
「どの窓口へ申請するか」
は分けて考えましょう。
全国で仕事をするなら47都道府県すべての許可が必要?
「将来的には全国で仕事をしたい」というだけで、最初から47都道府県すべての許可が必要になるとは限りません。
まず見るのは、現在実際に予定している積込み地と積卸し地です。
たとえば現在予定している仕事が、
- A県の現場 → C県の処分場
- B県の現場 → C県の処分場
であれば、まずA県・B県・C県について許可関係を確認します。
その後、新しい県で積込みや積卸しをする仕事が増える場合は、その新しい運搬ルートについて許可を追加で確認します。
「将来の営業エリア」と「現在実際に予定している運搬ルート」を分けて整理すると、必要な申請範囲を考えやすくなります。
必要な許可地域が分かったら各行政庁の申請手続きを確認する
必要な許可行政庁を整理できたら、次は実際の申請準備です。
ここで、
複数県だから同じ申請書類をコピーして、それぞれ提出すればよい
とは考えない方が安全です。
各行政庁の最新公式案内で、
- 申請窓口
- 最新の申請手引き
- 申請書・様式
- 必要書類
- 提出・受付方法
- 予約の要否
- 公的手数料と納付方法
- 処理期間など申請スケジュールに関する情報
を確認します。
たとえば東京都では、2026年時点で窓口・郵送などの申請方法、申請予約、申請書類、手数料等を公式ページで案内しています。
東京都環境局「産業廃棄物収集運搬業及び処分業の許可申請・届出等」
つまり、
必要な許可行政庁を整理する
↓
各行政庁の最新手引きを確認する
↓
共通して準備できるものと、行政庁ごとに異なるものを分ける
という順番で進めると、手戻りを減らしやすくなります。
必要書類の全体像から整理したい方は、次の記事も参考になります。
自分で申請を進めたい場合は、申請準備の流れをまとめた記事もあります。
申請や相談の前に整理しておくとよい情報
自分で申請を進める場合も、行政窓口や専門家へ相談する場合も、先に次の情報を整理しておくと話を進めやすくなります。
- 産業廃棄物を積み込む予定の地域
- 積み卸す予定の地域・処分先
- 想定している運搬ルート
- 途中で積替え保管をするか
- 現在すでに持っている収集運搬業許可
- 今後追加する予定の営業地域
複数の運搬ルートがある場合は、1ルートずつ、
積込み地 → 経由地 → 積卸し地
の順番で書き出してみてください。
「どこの許可が必要なのか分からない」という状態でも、ここまで整理できれば、行政庁や専門家へ確認するときに必要な論点を伝えやすくなります。
自分で申請するか、専門家へ相談するか
必要な許可地域が整理できれば、自社で各行政庁の公式案内を確認しながら申請準備を進めることもできます。
一方、
- 積込み地・積卸し地が多い
- 複数の運搬ルートがある
- 申請する行政庁が多い
- 積替え保管が関係する
- 政令市等との許可関係を確認する必要がある
- 各行政庁の違いを整理する時間を取りにくい
といった場合は、行政窓口や産業廃棄物収集運搬業許可を扱う行政書士へ確認しながら進める方法もあります。
専門家への依頼が必須ということではありません。
自社で確認できるところと、個別判断や申請準備を支援してほしいところを分けるのが一つの考え方です。
自社の運搬ルートで必要な許可を整理しにくい方へ
この記事を読んでも、
- 積込み地と積卸し地が複数あり、必要な許可行政庁を整理できない
- 政令市等が関係し、どこへ申請するのか判断しにくい
- 積替え保管を予定している
- 複数県の申請準備をどう進めるか迷っている
という場合は、まず予定している運搬ルートを整理したうえでお問い合わせください。
相談前に「積込み地・積卸し地・積替え保管の有無・現在持っている許可」を整理しておくと、確認すべきポイントを共有しやすくなります。
まとめ|「何県必要か」ではなく、まず運搬ルートを整理する
産業廃棄物収集運搬業を複数県で行う場合、必要な許可地域を判断するときの出発点は、車両が走る県の数ではありません。
まず、
- どこで積み込むか
- どこで積み卸すか
- 途中は通過するだけか
- 積替え保管をする場所があるか
- どの行政庁が許可を行うか
を整理します。
そこまで分かれば、自社はどこの許可を確認すればよいのかが具体的になってきます。
その後、対象となる行政庁ごとに最新の申請手引き、必要書類、手数料、受付方法等を確認して申請準備へ進みましょう。
産業廃棄物収集運搬業許可の制度全体をもう一度確認したい場合は、基本解説から整理できます。


