

こんにちは。1番わかる建設業許可の教科書、
代表の行政書士の小野馨です。
建設業に携わっている方、あるいはこれから業界に入ろうとしている方なら、一度は
「建設業は儲からない」
「将来性がないからやめとけ」
といったネガティブな声を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ネットで検索しても、倒産増加や人手不足といった暗いニュースばかりが目について、不安になってしまいますよね。
私自身、多くの建設業者様のサポートをする中で、経営者様や現場の方々から同様の悩みをよくお聞きします。
でも、本当に建設業には未来がないのでしょうか?
実は、市場全体を見ると決してそうとも言い切れないのです。
今の時代、しっかりと利益を出して成長している「勝ち組」企業もたくさん存在します。
今日は建設業の将来性について真実をお伝えします!
- 倒産件数の増加データから読み解く建設業界のリアルな現状
- 2024年問題や重層下請構造が利益率に与えている影響の仕組み
- 2030年の市場予測と生き残るために必要なDXや経営戦略
- ホワイト企業やニッチトップとして成功するための具体的な方法
建設業が儲からない理由と将来性を徹底分析
まずは、なぜ今これほどまでに「建設業は儲からない」「厳しい」と言われているのか、その根本的な原因を掘り下げていきましょう。
感情論ではなく、客観的なデータや業界特有の構造を知ることで、漠然とした不安の正体が見えてきますよ。
倒産件数の増加に見る業界の厳しい現状
「仕事はあるのに会社が潰れる」という不思議な現象が、今の建設業界では起きています。
帝国データバンクなどの調査によると、2024年の建設業の倒産件数は過去10年で最多のペースで推移しており、非常に厳しい状況にあることがわかります。
ここで注目したいのは、倒産の理由です。
注意ポイント
昔のように「不景気で仕事がない」から倒産するのではなく、現在は「物価高倒産」や「人手不足倒産」が急増しているのです。
今の建設業を襲う三重苦
- 資材高騰:ウッドショックやアイアンショック以降、建材価格が上がり続けています。
- 人件費高騰:職人さんが足りず、労務費を上げないと現場が回りません。
- 価格転嫁の遅れ:コストが上がっているのに、請負金額に反映できていないケースが多いです。
つまり、売上(工事の受注)はあるけれど、経費がかかりすぎて利益が残らない、あるいは人がいなくて工事が完了できない、という状態で資金繰りに行き詰まるケースが多いんですね。
つまり、物価高と人手不足ですね。
これが最近「建設業は儲からない」と言われる最大の要因の一つです。
2024年問題が経営に与える深刻な影響
ニュースでも話題になった「2024年問題」。これは、時間外労働の上限規制が建設業にも適用されたことを指します。
働く環境が良くなること自体は素晴らしいのですが、経営的な視点で見ると、これまで「現場の頑張り(長時間労働)」でなんとか間に合わせていた工期が、物理的にこなせなくなることを意味します。
労働時間が減れば、当然1日に進む工事の量は減りますよね。すると、工期が延びて仮設材のリース料や現場管理費などのコストが余計にかかってしまいます。また、「残業が減って給料が減るなら辞める」という職人さんの離職や、「人を増やさないと回らないのに採用できない」というジレンマも発生しています。
この規制に対応できない企業は、「これ以上受注できない」という事態に陥り、売上の上限が決まってしまうため、経営が苦しくなっているのです。
「やめとけ」という評判と離職率の真実
ネットで建設業について調べると、「やめとけ」「きつい」という言葉がサジェスト(予測変換)に出てきてドキッとしませんか?
いわゆる「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージは根強く、これが若手入職者の減少につながっています。特に施工管理(現場監督)の仕事は、激務や人間関係のストレスから「辞めたい」と感じる方が多いのも事実です。
しかし、データをよく見てみると、建設業の離職率は他産業と比べて「極端に高い」わけではありません。宿泊・飲食サービス業などに比べれば低い水準です。問題なのは、入ってくる若手が少なすぎて、高齢化による引退(自然減)のスピードに追いついていないことなんです。
現場のリアルな声
「給料はいいけど休みがない」「昔気質の職人さんとの板挟みが辛い」といった人間関係や労働環境への不満が、離職の主な引き金になっています。逆に言えば、ここを改善できている企業には人が集まっているんですよ。
一人親方が儲からない構造的な原因
個人事業主として働く「一人親方」の方々からも、「最近儲からない」という声をよく聞きます。
これには、2023年から始まったインボイス制度の影響が大きく関係しています。免税事業者だった一人親方に対し、消費税分の値下げ交渉が行われたり、課税事業者への転換で事務負担や税負担が増えたりしているからです。
また、企業側が社会保険加入逃れのために無理やり一人親方化させる「偽装請負」の問題も、国が厳しく取り締まるようになりました。これにより、実質的な労働者として扱われていた一人親方の立場が危うくなり、適正な単価で仕事を受けられなくなっているケースも見受けられます。
利益を圧迫する重層下請構造の弊害
日本の建設業特有の「ピラミッド型構造(重層下請構造)」も、利益が出にくい大きな原因です。
元請け(ゼネコンなど)が工事を受注し、1次下請け、2次下請け、3次下請け……と仕事が降りていく過程で、各社が管理費や利益を差し引きます(いわゆる中抜き)。
当然、下の階層に行けば行くほど、実際に現場で汗を流す職人さんの手元に残る工事単価は低くなります。
| 階層 | 役割 | 収益構造の課題 |
|---|---|---|
| 元請け | 全体管理・発注 | 比較的利益を確保しやすいが、責任も重い |
| 1次・2次下請け | 部分施工管理 | 中間マージンが発生し、下位へのしわ寄せ要因に |
| 3次以降・職人 | 実作業 | 単価が極限まで削られ、利益確保が困難 |
この構造の中にいる限り、下請け企業は価格決定権を持ちにくく、「言われた金額でやるしかない」という弱い立場になりがちです。これが「働いても儲からない」を生み出す構造的な病理と言えます。
建設業は儲からない?将来性を高める改革案
ここまで厳しい現実ばかりお話ししてしまいましたが、ここからは「希望」のお話です。実は、建設業の市場そのものは決して暗くありません。やり方を変えれば、建設業はこれからも十分に「稼げる産業」であり続けるのです。
2030年に向けた市場規模と人材需要予測
「将来性」を考える上で一番大切なのは、市場(需要)があるかどうかですよね。
結論から言うと、建設需要は2030年に向けても底堅く推移すると予測されています。高度経済成長期に作られた道路や橋、トンネルなどのインフラが一斉に老朽化し、その更新や修繕工事が爆発的に増えるからです。また、災害対策(国土強靭化)や、半導体工場などの民間設備投資も活発です。
一方で、2030年には建設技術者が数万人規模で不足するという予測もあります。これはピンチであると同時に、生き残った企業にとっては「完全な売り手市場」になるというビッグチャンスでもあります。
「工事をお願いしたいけど、できる会社がいない」という状況になれば、当然、工事単価は適正化され、利益率は上がっていきます。
建設業界の平均年収と稼げる職種の実態
「建設業は稼げない」というのは、実は一部の側面しか見ていないかもしれません。
大手ゼネコンやプラントエンジニアリング企業などでは、30代で年収800万〜1000万円を超えるプレイヤーも珍しくありません。実は、全産業平均と比べても給与水準が高い職種はたくさんあるんです。
特に、1級施工管理技士などの国家資格を持つ人材は引く手あまたで、転職市場でも年収アップの事例が相次いでいます。「資格×経験」を持つ人材にとっては、むしろ今、最も「稼げる」タイミングが来ていると言えるでしょう。
建設DX市場の拡大と生産性向上のカギ
これからの建設業で利益を出すための最強の武器、それが「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
国土交通省も「i-Construction」として推進していますが、ドローンを使った測量や、設計データと連動したICT建機による自動施工などは、もはやSFの世界の話ではありません。
中小企業でもできるDXの第一歩
- 施工管理アプリの導入:図面や写真をスマホで共有し、「事務所に戻って書類作成」をなくす。
- ウェアラブルカメラ:遠隔地から現場を確認し、移動時間をゼロにする(遠隔臨場)。
- 勤怠管理のデジタル化:職人さんの出面管理を自動化し、集計の手間を省く。
実際に、クラウド型の施工管理アプリを導入して、1人あたり月8.5時間の業務時間を削減した中小企業の事例もあります。ITツールでムダを省いた分だけ、そのまま利益率アップにつながるんですよ。
ホワイト企業ランキングの特徴と共通点
将来性のある企業、つまり「若手が集まる企業」には共通点があります。いわゆる「ホワイト企業」としての特徴です。
ホワイト企業ランキングの上位に来るような会社は、「完全週休2日制(土日休み)」を徹底していたり、健康経営優良法人の認定を取得して従業員の健康管理に投資していたりします。給与が高いだけでなく、「休める」「安心して長く働ける」環境があるかどうかが、今の求職者が企業を選ぶ決定的な基準になっています。
「うちは現場があるから無理だ」とあきらめるのではなく、DXや工期の調整で休みを確保しようと努力している姿勢が見える会社に、未来の担い手は集まってくるのです。
積極的なM&Aと多角化経営の成功事例
最近では、自社の成長のためにM&A(企業の合併・買収)を活用する建設会社が増えています。
後継者がいない同業他社を買収することで、不足している職人さんや有資格者を一気に確保したり、新しいエリアに進出したりする戦略です。採用活動に何年もかけるより、会社ごと引き受ける方が早いという判断ですね。
また、建設業だけでなく、不動産業や介護事業、再生可能エネルギー事業などに多角化するケースも成功事例として増えています。建設業は景気の波を受けやすいので、ストックビジネス(毎月定額が入る事業)を持つことで経営を安定させる狙いがあります。
勝ち組になるためのニッチトップ戦略
大手と同じ土俵で価格競争をしても、中小企業は疲弊するだけです。そこで注目したいのが「ニッチトップ戦略」です。
「食品工場の床改修なら誰にも負けない」「文化財の補修技術がある」「特定のエリアの管工事に特化する」といったように、狭い分野でもいいので「ここならあの会社」というポジションを確立することです。
専門性が高ければ高いほど、価格競争に巻き込まれにくくなり、高い利益率を確保できます。下請け構造から脱却し、元請けとして直接仕事を受けるチャンスも広がりますよ。
建設業は儲からない?将来性と勝機まとめ
今回の記事では、「建設業 儲からない 将来性」というキーワードの裏側にある真実について解説してきました。
この記事のまとめ
- 建設業の倒産は増えているが、それは「変化に対応できない企業」が淘汰されている過渡期だから。
- 「儲からない」原因は、資材高・人手不足・重層下請構造などの構造的な問題にある。
- 2030年に向けてインフラ更新などの需要は底堅く、生き残った企業は「売り手市場」で利益を出せる。
- DXによる生産性向上、ニッチトップ戦略、ホワイト化への取り組みが勝敗を分けるカギになる。
建設業は今、明治以来の大きな転換期にあります。「儲からない」と嘆くだけの旧態依然としたやり方を続けるか、新しい技術や戦略を取り入れて「稼げる建設業」へと生まれ変わるか。その分かれ道に立っていると言えるでしょう。
もし、建設業許可の取得や経営事項審査(経審)の点数アップ、あるいはM&Aや事業承継についてお悩みがあれば、ぜひ専門家にご相談ください。正しい戦略で、この激動の時代を一緒に勝ち抜いていきましょう。
