産業廃棄物の積替え保管を検討するとき、「自社に土地があるから、そこをヤードにすればよい」と考えるのは早計です。
積替え保管場所には、囲い・掲示板・飛散や流出の防止・保管量などの基準があります。さらに、取り扱う廃棄物の種類や候補地の自治体によって、追加の確認事項が生じることもあります。
そのため、候補地を契約したり設備を整えたりする前に、
候補地 → 保管する廃棄物 → 保管方法 → 必要な設備 → 保管量 → 地域独自の手続
という順序で確認していくことが重要です。
なお、そもそも自社の計画が「積替え保管あり」に当たるのか、自社ヤードへ持ち込む場合をどう考えるのかから確認したい方は、積替え保管の基本と「あり・なし」、自社ヤード利用時の考え方から先に整理すると分かりやすくなります。
※上記の積替え保管サブピラーは、正しい公開URL確定後に内部リンクを設定します。
産業廃棄物収集運搬業許可そのものの要件や仕組みから確認したい方は、産業廃棄物収集運搬業許可の完全ガイドで全体像を確認できます。
積替え保管施設にはどのような基準がある?
積替え保管は、運搬途中の産業廃棄物を自由に置いておくための仕組みではありません。
積替えに伴って保管する場合は、積替え後の運搬先があらかじめ決まっていること、適切に保管できる量を超えないこと、廃棄物の性状が変化する前に搬出することなどが前提になります。
そのうえで、積替え保管場所について主に確認したいのが次の項目です。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 囲い | 保管場所の周囲、囲いに荷重がかかる場合の安全性 |
| 掲示板 | 大きさ、廃棄物の種類、管理者、保管上限など |
| 飛散・流出等の防止 | 飛散、流出、地下浸透、悪臭への対策 |
| 汚水対策 | 必要に応じた底面・排水設備 |
| 屋外保管 | 容器を使わない場合の積上げ方法・高さ |
| 保管量 | 1日当たりの平均的な搬出量を基準とする上限 |
| 廃棄物の種類 | 石綿・水銀など種類に応じた追加措置 |
| 地域基準 | 自治体独自の構造基準・事前手続等 |
すべての施設へ同じ設備を機械的に設置すればよいわけではありません。
何を、どのような状態で、どのくらい保管する予定なのかによって必要な施設計画を整理します。
保管基準の公的な内容については、和歌山県「産業廃棄物処理基準(運搬途中の保管)」でも確認できます。
積替え保管場所で確認したい主な保管基準
囲いと掲示板
積替え保管場所には、周囲に囲いを設けます。
産業廃棄物の荷重が囲いへ直接かかる構造の場合は、その荷重に対して構造耐力上安全な囲いである必要があります。
単にフェンスで敷地を囲めばよいと考えるのではなく、廃棄物をどこまで積むのか、囲いへ荷重がかかるのかまで含めて考える必要があります。
また、保管場所の見やすい位置には、縦・横それぞれ60cm以上の掲示板を設けます。
積替え保管場所では、主に、
- 産業廃棄物の積替えのための保管場所である旨
- 保管する産業廃棄物の種類
- 管理者の氏名または名称・連絡先
- 必要な場合の最大保管高さ
- 積替えのための保管上限
などを表示します。
ここで注意したいのは、掲示板を置くことだけではなく、実際の保管計画と掲示内容が一致していることです。
飛散・流出・地下浸透・悪臭を防ぐ
積替え保管場所では、産業廃棄物が、
- 飛散する
- 流出する
- 地下へ浸透する
- 悪臭を発生させる
ことを防ぐための必要な措置を講じます。
さらに、保管に伴って汚水が生じるおそれがある場合は、公共用水域や地下水の汚染を防止するため、排水設備や不浸透性の底面などが必要になります。
ねずみ、蚊、はえその他の害虫等が発生・生息しないようにすることも保管基準の一つです。
ただし、
「積替え保管施設なら、全国どこでも全面コンクリート舗装が必須」
という意味ではありません。
廃棄物の性状や保管方法、自治体独自の施設基準などによって、必要となる構造は変わります。
同様に、すべての積替え保管施設へ全国一律で屋根が必要というわけでもありません。
候補地を検討するときは、「コンクリートにすれば大丈夫」「屋根を付ければ大丈夫」と設備単体で判断するのではなく、予定する廃棄物と保管方法に適した施設になっているかを確認します。
囲い・掲示・汚水対策などの保管基準については、東京都環境局「自ら処理する場合」も参考になります。
屋外で容器を使わず保管する場合は高さにも基準がある
屋外で容器を用いずに産業廃棄物を保管する場合は、積み上げる高さにも基準があります。
たとえば、廃棄物が囲いに接しない場合は、保管範囲の境界などから50%勾配以下となるように保管します。
構造耐力上安全な囲いに廃棄物を接して保管する場合には、
- 囲いの内側2mまでは、囲いの上端より50cm低い線以下
- それより内側は、その位置から50%勾配以下
という考え方があります。
数字だけではイメージしにくいため、実際の施設計画では、囲いの位置と保管範囲、積上げ高さを図面上で確認すると分かりやすくなります。
廃棄物の種類によって追加の保管方法が必要になる
積替え保管施設では、すべての産業廃棄物を同じ方法で保管できるわけではありません。
たとえば、石綿含有産業廃棄物では、他の物と混合しないための仕切りや、覆いなどによる飛散防止措置が必要になります。
水銀使用製品産業廃棄物についても、他の物と混合しないよう仕切り等を設ける必要があります。
特別管理産業廃棄物では、さらに廃棄物の性状に応じた保管基準が関係します。
したがって候補地を検討するときは、
「何種類の産業廃棄物を保管する予定なのか」
を早い段階で整理しておくことが重要です。
土地や施設を先に決めてから品目を当てはめるより、取り扱う廃棄物の種類と保管方法を先に具体化した方が、必要な設備を検討しやすくなります。
積替え保管できる量には上限がある
積替え保管場所には、好きなだけ産業廃棄物を置いておけるわけではありません。
積替えのために保管できる数量は、原則として、
その保管場所における1日当たりの平均的な搬出量 × 7
を超えないようにします。
「7日分」と「7日間」は意味が違う
ここは特に誤解しやすいところです。
「7日分」という基準は、
7日間までなら保管してよい
という意味ではありません。
あくまで、保管できる数量の上限を計算するための基準です。
たとえば、1日当たりの平均的な搬出量が10トンであれば、原則的な数量上限を考える際には、
10トン × 7=70トン
という形で考えます。
一方で、積替え保管には、廃棄物の性状が変化する前に搬出するという条件もあります。
つまり、
「数量が7日分以内だから、いつまでも保管できる」
という考え方はできません。
平均的な搬出量は、原則として前月の総搬出量を前月の総日数で割る方法で算定します。
新しく保管場所を使用する場合など、前月実績がまだない期間については、計画搬出量を用いる考え方があります。
保管量を決めるときは、「ヤードにどれだけ置けるか」ではなく、実際にどれだけ搬出できる事業計画なのかと合わせて考えることが重要です。
保管数量の考え方や平均的な搬出量の算定については、環境省「廃棄物処理法等の一部改正について」で確認できます。
候補地を決める前に自治体独自の施設基準・手続を確認する
ここまで説明した基準だけを満たせば、全国どこの土地でも積替え保管施設にできるとは限りません。
自治体によっては、廃棄物処理法上の基準に加えて、独自の構造基準や維持管理基準、事前手続などを設けていることがあります。
実際に、積替え保管施設について、
- 建屋内で行うこと
- 不透水性舗装
- 屋根
- 流出防止設備
- 悪臭対策
- 囲いの構造
など、独自の具体的な基準を設けている自治体があります。
そのため、
土地を購入・賃借する
↓
施設を整備する
↓
最後に行政庁へ確認する
という順番では、手戻りが生じる可能性があります。
候補地が見つかった段階で、まずその場所を管轄する行政庁の最新情報を確認し、
その土地で予定する積替え保管施設について、どの基準・条例・事前手続を確認すべきか
を整理することが重要です。
積替え保管場所をどの行政庁が管轄するのか確認したい方は、産業廃棄物収集運搬業許可の申請先・許可権者の考え方も確認してください。
大阪で候補地を検討している場合は大阪の積替え保管に関する地域手続・施設確認、兵庫で検討している場合は兵庫の積替え保管に関する地域手続・施設確認というように、実際の施設所在地に合わせて地域固有の確認へ進みます。
積替え保管施設の申請では図面や使用権原も確認される
積替え保管を含む収集運搬業の許可申請では、施設について具体的に説明する資料が必要になります。
全国的な申請案内では、事業用施設について、
- 平面図
- 立面図
- 断面図
- 構造図
- 設計計算書
- 付近の見取図
などが示されています。
また、施設を所有していない場合は、その施設を使用する権原を有していることを示す書類も必要になります。
つまり、積替え保管施設は、
「土地があります」
というだけではなく、
「この土地を使用でき、この位置にこの設備を配置し、この方法で産業廃棄物を保管します」
という具体的な施設計画として整理していく必要があります。
なお、自治体によって追加書類や様式が異なるため、実際の申請では施設所在地を管轄する行政庁の最新申請案内を確認します。
行政庁へ確認する前に整理したい8項目
候補地について行政庁へ相談するときは、単に、
「この土地で積替え保管できますか?」
と聞くだけでは、具体的な確認が難しくなります。
少なくとも、次の内容を整理しておくと確認しやすくなります。
- 積替え保管場所の所在地
- 土地・建物の所有関係や使用権原
- 保管する産業廃棄物の種類
- 容器を使うか、屋外で保管するか
- 予定する保管量と1日当たりの搬出量
- 囲い・掲示・床面・排水等の施設計画
- 搬入車両・搬出車両と施設内の動線
- 積替え保管場所で実際に行う作業
特に最後の「その場所で何をするのか」は重要です。
単純な積替え・保管だけなのか、それ以外の作業も予定しているのかによって、別の制度確認が必要になることがあります。
選別・破砕・圧縮なども予定している場合は、積替え保管と中間処理の違いを確認し、予定している作業がどのように扱われるのか整理しておきましょう。

候補地が具体化したら次の確認へ進む
ここまで整理できたら、候補地について行政庁の基準・条例・事前手続を確認し、必要な施設計画を具体化していきます。
産業廃棄物収集運搬業許可そのものの要件や申請全体の位置づけを確認したい場合は、産業廃棄物収集運搬業許可の完全ガイドへ戻って全体像を整理できます。
また、
- そもそも積替え保管あり・なしのどちらを検討するのか
- 自社ヤードへ持ち込む場合をどう考えるのか
- 一時的な保管が積替え保管に関係するのか
から確認したい場合は、産業廃棄物収集運搬業許可の「積替え保管」とは?あり・なしを判断する考え方へ戻って確認すると分かりやすくなります。
積替え保管の候補地・施設計画でお困りの方へ
積替え保管を検討する場合は、囲いや掲示板などの設備だけでなく、保管する産業廃棄物の種類・保管量・施設の使い方・候補地を管轄する行政庁の基準まで含めて確認する必要があります。
特に、
- この土地で積替え保管を検討できるのか
- どのような施設・設備を準備すればよいのか
- 行政庁へ相談する前に何を整理すればよいのか
- 積替え保管を含む収集運搬業許可をどのように進めればよいのか
といった点で迷っている場合は、土地の契約や施設整備を進める前に確認しておくことが重要です。
当事務所では、産業廃棄物収集運搬業許可や積替え保管に関するご相談を承っています。
計画段階でも構いませんので、まずは現在検討している内容をお聞かせください。



