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産業廃棄物許可の基礎知識

産廃収集運搬業の許可は債務超過でも取れる?役員借入金の扱いと必要書類

「貸借対照表の純資産がマイナスになっている。これでは産業廃棄物収集運搬業の許可を取れないのだろうか」

「負債の多くは社長が会社に貸したお金だ。それでも債務超過として審査されるのだろうか」

このような場合、債務超過というだけで、全国一律に許可申請ができなくなるわけではありません。 ただし、産業廃棄物収集運搬業の許可には、事業を的確かつ継続して行うための「経理的基礎」が必要です。債務超過の内容や申請先の審査基準によっては、追加の資料や専門家が作成する説明書等を求められます。

また、役員借入金があることと、そのうち返済不要な負債として説明・証明できることは別です。社長から借りているお金だからといって、全国どこでも自己資本と同じように扱われるわけではありません。

この記事では、貸借対照表での債務超過額の確認方法、役員借入金の考え方、東京都・大分県の公表基準、申請前に準備する資料を順番に解説します。

1.産廃収集運搬業の許可は債務超過でも取れる?まず決算書で確認すること

債務超過は貸借対照表のどこを見れば分かる?

債務超過とは、会社の負債が資産を上回っている状態です。まず、直近の貸借対照表(バランスシート)で、「資産の部の合計」「負債の部の合計」「純資産の部の合計」を確認してください。

関係は次のように整理できます。

純資産=資産の総額-負債の総額

例えば、次の決算内容だったとします。

貸借対照表の項目 金額(説明用の例)
資産の総額 800万円
負債の総額 900万円
純資産の額 ▲100万円
債務超過額 100万円

この場合、負債が資産を100万円上回るため、債務超過額は100万円です。これは説明用の仮例であり、許可審査の金額基準ではありません。

会社に現金預金が残っていたり、資本金を計上していたりしても、それだけで債務超過ではないとは判断できません。貸借対照表全体の資産と負債の差額を見る必要があります。

産業廃棄物収集運搬業の許可では、事業を的確かつ継続して行うための経理的基礎が審査されます。具体的な考え方は、次の環境省通知で確認できます。

環境省の2020年3月30日付「許可事務等の取扱いについて」(PDF)は、利益の計上状況、自己資本比率、将来の収益見込みなどを踏まえる考え方を示しています。自己資本比率が10%を超えることも望ましい指標の一つですが、10%を超えれば自動的に許可、10%以下なら自動的に不許可という全国共通の判定式ではありません。

なお、同通知が自己資本比率10%以下でも容認の余地に言及している部分には、「少なくとも債務超過ではない」ことなどの条件があります。その記述だけを根拠に、債務超過の会社も一律に認められると考えることはできません。

つまり、債務超過の会社は、資産・負債の状態に加え、申請先が何を条件に審査するかを確認することが重要です。

経理的基礎全般の見方は、産業廃棄物収集運搬業の「経理的基礎」の解説で確認できます。

赤字決算と債務超過は、同じ意味ではない

赤字と債務超過は、確認する決算書が異なります。

比較すること 赤字決算 債務超過
主に見る書類 損益計算書 貸借対照表
確認する内容 一定期間に利益が出たか 決算日時点で資産より負債が多いか
関係する判断 利益の推移、収益の見込みなど 純資産、負債の内訳、返済条件など

前期が黒字でも、過去からの損失などによって債務超過が続いている会社があります。反対に、前期が赤字でも、それまでの利益の蓄積などによって純資産がプラスの会社もあります。

したがって「今期は黒字だから債務超過の問題はない」「赤字だから必ず債務超過だ」と判断しないでください。損益計算書と貸借対照表を分けて確認することが出発点です。

赤字や連続赤字の審査について詳しく知りたい場合は、赤字決算でも産廃許可を取得できるかを解説した記事をご覧ください。

2.社長・役員からの借入金は、債務超過の審査でどう扱われる?

役員借入金は、会社から見れば負債に当たる

社長が自分のお金を会社へ貸し付けた場合、会社側では借入金として計上することがあります。いわゆる「役員借入金」です。

社長自身は「会社のために入れたお金で、急いで返してもらうつもりはない」と考えているかもしれません。しかし、返済義務のある借入金は、社長・役員からの資金であっても会社の負債です。

例えば、会社の負債900万円のうち200万円が社長からの借入金だったとしても、その事実だけで負債が700万円に減るわけではなく、純資産のマイナスが解消するわけでもありません。

なお、会社が役員へお金を貸している「役員貸付金」は、これとは資金の流れが逆です。貸借対照表や借入金の明細を確認するときは、誰が誰に貸しているのかを取り違えないようにしてください。

「返済不要な負債」が問題になる場合は、金額と証明を分けて考える

一方、申請先によっては、債務超過の追加書類を判定するときに、負債のうち「返済不要な負債」があるかを確認することがあります。東京都の手引がその例です。

ここで大切なのは、次の三つを別々に確認することです。

  • 借入金の残高: 会社が役員などから、いくら借りているか。
  • 返済不要とされる額: その残高のうち、債権者の意思を確認できる資料で、いくらを返済不要と説明できるか。
  • 債務超過額: 直近決算期の資産・負債の差額がいくらか。

この三つは同じ金額とは限りません。借入金が200万円あっても、その全額を返済不要と説明できるとは限らないためです。

また、許可審査で返済不要な負債として説明することは、会計帳簿上の負債を勝手に消してよいことを意味しません。 債務免除や資本への振替などを実行する場合の会計・税務・会社法上の取扱いは、許可の追加書類判定と区別する必要があります。

東京都で返済不要な負債を説明するときは、債権者の書面が重要

東京都の産業廃棄物収集運搬業許可申請の手引(新規・更新申請用、PDF)では、後述する判定に該当した場合、返済不要な負債について債権者の意思を確認できる書面を提出するよう案内しています。

手引が示す主な内容は、申請日時点で債権者が会社に貸している金額、そのうち返済不要な金額を記載し、債権者名義で東京都知事宛に作成して、債権者が押印するというものです。これに加えて「借入金・支払利子の内訳書」も求められます。

つまり、口頭で「社長のお金なので返済しません」と説明するだけでは、東京都の手引が求める証明に代わりません。

ただし、東京都でもすべての債務超過法人にこの書面が必要なわけではありません。 まず法人税の納税状況などを確認する判定順序があるため、次の章で自社に当てはまる区分を確認しましょう。

3.自治体で異なる債務超過の審査基準と追加書類

債務超過の会社に必要な追加書類は、全国一律ではありません。ここでは、役員借入金との関係が分かりやすい東京都と、損益の状況によって資料が分かれる大分県を例に説明します。

以下は各自治体が公表する対象条件での取扱いです。 別の自治体へ申請する場合に、そのまま当てはめないでください。

東京都:最初に法人税の納税状況を確認する

東京都の新規・更新申請用の手引では、経理的基礎の追加書類を、概ね次の順番で判定します。

① 直近の法人税納税額と直近3年間の未納税額を確認

直近の法人税納税額が1円以上で、かつ直近3年間に未納税額がない場合は、この判定による経理的基礎の追加書類は不要です。

一方、直近納税額が0円、または直近3年間に未納税額がある場合は、次の確認に進みます。納税額0円は、それだけで税金の滞納を意味するものではありません。

② 直近決算期の貸借対照表で債務超過かを確認

①の条件を満たさず、直近決算期が債務超過でなければ、この判定による追加書類は不要です。債務超過であれば、③へ進みます。

③ 返済不要な負債の有無・額を確認

債務超過の場合、直近決算期の貸借対照表に記載された負債の中に「返済不要な負債」があるか、その合計額が債務超過額以上かを確認します。

①②の判定を経て債務超過に該当した場合 追加書類の区分
返済不要な負債があり、その合計額が債務超過額以上 追加書類「ア」
返済不要な負債がない、または合計額が債務超過額未満 追加書類「イ」

追加書類「ア」は、「返済不要な負債の額及びその負債が返済不要であることが分かる書類(任意書式)」と「借入金・支払利子の内訳書」です。債権者の意思を確認できる書面には、前述の記載事項・名義・押印が求められます。

追加書類「イ」は、中小企業診断士・公認会計士・税理士のいずれかが作成した「経理的基礎を有することの説明書」と、その作成者の資格を証明する書類です。手引では、債務超過となった時期と理由、債務超過額、解消策、利益への影響、解消の見込み等を説明することが求められています。

例えば、直近決算期の債務超過額が100万円で、会社に役員借入金200万円があったとします。法人税納税状況の最初の条件を満たさず、東京都の③まで進む場合、重要なのは借入金200万円という総額ではありません。適切に証明できる返済不要額が100万円以上かどうかです。

  • 返済不要と証明できる額が80万円なら、債務超過額100万円に届かないため、追加書類「イ」の区分です。
  • 返済不要と証明できる額が120万円なら、債務超過額100万円以上となるため、追加書類「ア」の区分です。

いずれも東京都の判定順序のうち③まで進むことを前提とした説明用の仮例です。役員借入金が存在するだけで「ア」になるわけではなく、必要な書面によって返済不要額を示せることが前提です。また、この区分は追加書類の種類を決めるものであり、許可の可否を示すものではありません。

「ア」「イ」のいずれも、必要な追加書類を提出しただけで許可が確約されるわけではありません。 また、手引では「イ」の説明書が必要な申請者がこれを提出しない場合、不許可処分になる旨が示されています。

東京都の判定方法や提出書類は、東京都環境局の産業廃棄物処理業許可申請案内と、収集運搬業の新規・更新申請用手引(「10 注意事項(4)財政能力」、PDF)で確認できます。

大分県:債務超過に加えて、直前3年間の損益も確認する

大分県では、営業実績が3年以上ある法人について、直前期の自己資本比率・債務状況と、直前3年間の損益平均値などを組み合わせて追加書類を判定しています。

直前期が債務超過である法人に関係する区分を抜き出すと、次のとおりです。

直前3年間の損益平均値 直前期の当期利益 大分県の追加書類
0円以上 ― 説明書+長期財務計画
0円未満 0円以上 説明書+長期財務計画
0円未満 0円未満 診断書+長期財務計画

※大分県の公表する「営業実績3年以上の法人」で、直前期が債務超過の区分に限った整理です。利益の名称・期間は同県の基準に合わせています。

ここでいう説明書は、正式には「(様式1)経理的基礎を有することの説明書」です。あわせて提出するのは「(様式2)長期財務計画」で、いずれも申請者自身が作成して差し支えないとされています。

一方、診断書が必要な区分では、公認会計士または中小企業診断士が作成した診断書に、長期財務計画を添えます。東京都の「専門家が作成する説明書」と、大分県の「申請者も作成できる説明書」は、名称が似ていても同じ書類ではありません。

さらに、大分県では営業実績が3年未満の場合は別基準です。法人については、その区分に応じた財務関係書類に加え、診断書と長期財務計画が求められます。「設立から3年」と「営業実績3年」を自動的に同じ意味にしないで、申請先の定義で確認してください。

大分県の審査基準や様式は、大分県の産業廃棄物処理業等の許可申請案内「6 経理的基礎について」で確認できます。

決算がまだ3期分そろっていない会社は、設立3年未満の法人が産廃許可を申請する場合の確認ポイントも参考にしてください。

結局、診断書は必ず必要なのか?

債務超過だから必ず診断書、という説明は正確ではありません。

東京都では条件により、返済不要な負債を証明する書類になる場合と、資格者作成の説明書になる場合があります。大分県では営業実績と損益によって、申請者作成可能な説明書と、資格者作成の診断書に分かれます。

したがって、「まず診断書を依頼する」のではなく、「申請先の基準で、自社に必要な追加資料の種類を確定する」順番が合理的です。追加書類を作成する人の資格や様式についても、その自治体の案内で確かめてください。

4.債務超過の会社が申請前に確認・準備する順番

まず自社の数字と借入金の状況を、一枚のメモに整理する

いきなり診断書の作成を依頼したり、資本変更を検討したりする前に、手元の財務資料から次の情報を整理しましょう。

  1. 申請先と申請内容: どの都道府県・政令市へ、新規・更新のどちらを申請するか。積替え・保管の有無も整理する。
  2. 直近決算期の貸借対照表: 資産合計、負債合計、純資産額、債務超過額を確認する。
  3. 損益の状況: 直前期の利益と、求められる場合に備えて直近数期の損益を把握する。
  4. 法人税の納税状況: 東京都のように先に納税内容を判定する申請先では、直近の納税額と未納税額の有無を分けて確認する。
  5. 役員借入金の内容: 貸主ごとの借入残高、返済条件、返済予定、返済不要とされる額、根拠となる書面の有無を整理する。
  6. 営業実績年数: 申請先が「営業実績3年以上/3年未満」で基準を分けていないか確かめる。

これは、すべての自治体で上記6項目のメモを提出しなければならないという意味ではありません。申請先の公式基準を読み、自社に必要な資料を過不足なく選ぶための整理方法です。

環境省の許可事務通知でも、資金の調達について、借入先、融資条件、借入残高、年間返済額、返済期限、利率などを把握する考え方が示されています。借入金が多い場合には、金額だけでなく、返済負担と事業継続の見通しを整理しておくと状況を説明しやすくなります。

申請先の公式基準と照合してから、追加書類を手配する

自社の数字が分かったら、申請先の公式手引や経理的基礎の判定資料を確認してください。

たとえば東京都に申請する場合は、最初から返済不要の証明書を作るのではなく、法人税の納税状況 → 直近決算期の債務超過 → 返済不要な負債の有無・額の順に照合します。

大分県で営業実績3年以上の法人に該当する場合は、直前期の債務状況 → 直前3年間の損益平均値 → 直前期の当期利益を、公表基準に当てはめます。

基準を読んでも自社の該当区分が分からなければ、申請先へ次のように問い合わせると、確認したい点が伝わりやすくなります。

「産業廃棄物収集運搬業の新規(または更新)申請を予定している法人です。直近決算期は資産○円、負債○円、債務超過額○円です。役員からの借入金が○円あり、返済条件を確認しています。この場合、経理的基礎の追加書類はどの判定区分になりますか。必要な書類の名称、作成者の資格、確認する決算期を教えてください。」

※この問い合わせ文は確認事項の整理例です。必ず全項目を伝える必要があるという趣旨ではありません。

申請先で追加書類の種類を確認した後に、指定の様式や必要な資格に沿って作成するのが基本です。決算後に借入金の返済条件や資本の状況が変わった場合も、直前決算期の数字が自動的に置き換わると考えず、どの時点の資料で確認されるのかを申請先に尋ねてください。

役員借入金の債務免除、増資、DES(債務の株式化)などには、許可申請とは別に会計・税務・会社法上の検討が必要な場合があります。許可のために急いで処理を決めるのではなく、必要に応じて会計・税務等の専門家と検討してください。

まとめ|債務超過額・借入金・申請先の判定順序を確認する

産業廃棄物収集運搬業の許可では、債務超過であることだけを理由に、全国一律の結論を出すことはできません。 審査では、事業を継続できる経理的基礎があるかが問題になります。

社長や役員からの借入金も、借入金という名前だけで審査上の扱いが決まるわけではありません。まず貸借対照表で債務超過額を確認し、借入金の残高・返済条件・証明できる内容を整理し、申請先が公表している条件に沿って必要な追加資料を確かめることが大切です。

自社の決算内容がどの判定区分に当たるか判断しにくい場合は、申請先の窓口へ具体的な財務状況を伝えて確認する方法があります。産廃許可申請の進め方や資料の整理について個別に相談したい方は、お問い合わせフォームから、申請先と現在分かっている決算状況をお知らせください。

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