「自社の白ナンバー車で、この荷物を運んでよいのか」。確認する順番は、ナンバーの色だけではなく、誰の依頼で、どの業務として運び、何に対してお金を受け取るのかです。
他人から依頼を受け、有償で貨物を運送する事業には、事業の種類に応じた許可・届出が必要です。一方、自社商品の配送など、自己の販売・製造等と一体となる運送まで、白ナンバーだから一律に違法になるわけではありません。
この記事では、2026年4月からの荷主側の規制、判断に必要な資料、適法な運送に切り替える手順を整理します。軽自動車での事業を予定している方は、先に黒ナンバー・軽貨物の開業手続きをご覧ください。
運送業の無許可営業(白トラ)は何が問題になる?
一般貨物の許可と、軽貨物の届出を分ける
一般貨物自動車運送事業を無許可で経営することは禁止されています。軽貨物の事業は一般貨物と同じ許可制度ではありませんが、貨物軽自動車運送事業の経営届出等を済ませずに営業してよいわけでもありません。
一般貨物の無許可経営は、貨物自動車運送事業法第70条により、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、またはその両方の対象となります。ただし、一般貨物、特定貨物、軽貨物では手続きと適用条文が異なります。すべてを「同じ罰則」「白ナンバーなら必ず違法」とまとめないことが大切です。
罰則や欠格事由は貨物自動車運送事業法の現行条文に沿って確認します。処罰歴等がある場合は、罪名・刑の種類・執行の終了時期等によって許可申請への影響も変わるため、資料を添えて個別に相談してください。
また、他社の許可証や事業者名を借りれば営業できる、というものではありません。車両の名義だけでなく、実際に事業を経営し、運送契約や運行を管理する主体も確認する必要があります。
2026年4月からは、違法な運送を委託する荷主等も対象
2025年に公布されたトラック適正化二法の一部が、2026年4月1日に施行されました。無許可・無届出等で貨物自動車運送事業を経営する者に運送を委託する行為が禁止され、荷主等も新たに処罰の対象になります。
国土交通省の案内では、違法な白トラを利用した荷主等は100万円以下の罰金に処されることがあるとされています。関与が疑われる荷主等へのトラック・物流Gメンによる是正指導もあります。
これは、すべての白ナンバー配送を新たに禁止した制度ではありません。また、取引が必ず即時解除される、発覚すれば必ず廃業する、といった結果まで一律に決まっているわけではありません。
制度の施行区分と資料は国土交通省「トラック適正化二法について」、荷主側の規制は近畿運輸局の改正トラック法案内で確認できます。
自社配送・ガソリン代・建設現場の運搬はどう判断する?
ココがポイント
「運賃」という名目を付けていなくても、運送の対価を受け取る実態があれば検討が必要です。逆に、白ナンバーで荷物を積んでいるという外見だけでは、無許可営業とは判断できません。
| 状況 | 先に確認すること |
|---|---|
| 自社で販売・製造した商品の配送 | 販売等の業務と一体の運送か、独立した運送サービスを請け負っているか |
| 他社の荷物を運び、ガソリン代・協力費を受け取る | 契約、請求内訳、反復状況から、実質的に運送の対価となっていないか |
| 建設工事、残土・廃棄物等の運搬 | 誰が何の業務を請け負い、運搬がその業務と一体か。廃棄物処理法等の別の許可も必要か |
| 他社の緑ナンバー・名義を借りる | 名義貸し等に当たらないか。許可を持つ会社が実際に経営・運行管理する契約か |
実費・無料という表示だけで結論を出さない
「利益を乗せていない」「請求書は協力費にした」という説明だけでは、許可不要とは決まりません。誰が依頼し、運送を引き受ける条件として何を受け取るのかを、実際の取引で確認します。
自社の販売・製造・修理等に付帯して行われ、独立した運送業務ではないものについては、許可等を要しない場合があります。この境界は契約の名称ではなく、業務の実態に即した個別判断です。
建設工事・廃棄物の運搬は契約全体を持参する
工事の一環なのか、運送だけを別に請け負うのかで、確認すべき点が変わります。「建設業許可があるから、他社の荷物を有償で運んでも問題ない」とは限りません。
国土交通省は、建設事業の具体例を自家用ダンプカーの取扱いに関する建設事業Q&Aで示しています。工事・収集運搬・処分の契約書、作業範囲、代金の内訳を用意し、自分の取引がどの例に近いかを整理してください。貨物運送の許可が不要でも、廃棄物処理法等の義務がなくなるわけではありません。
無許可の疑いがあるとき、どこに何を相談する?
まず一つの取引を、書類と図で説明できるようにする
最寄りの地方運輸局・管轄運輸支局の貨物運送を担当する窓口に、許可・届出の要否を相談します。単に「白ナンバーで運んでよいですか」と尋ねるより、次の資料があると判断に必要な事情を伝えやすくなります。
- 依頼者、契約相手、実際に運ぶ会社を記した取引の流れ
- 運ぶ物、積込先・配送先、頻度、使用車両の車検証情報
- 契約書、見積書、請求書と、運送・作業・商品代金の内訳
- 取得済みの許可証・届出控え、営業所と車庫の所在地
- 今後引き受ける予定の仕事と、開始を希望する時期
資料を確認したうえで「この取引に必要な手続きは何か」「許可・届出までの間はどの形なら運送できるか」を分けて質問してください。回答を受けた日、窓口、説明した前提も記録します。前提が変われば、その回答を別の取引へそのまま当てはめないでください。
申請中でも営業できる、とは考えない
必要な許可等を受けていないと分かった場合は、その運送を続けたまま申請だけ進めるのではなく、対象業務の停止・適法な事業者への委託などを相談します。新たな許可を取得しても、過去の違反がなかったことになるわけではありません。
既に行政から連絡が来ている場合は、指定された期限と求められた資料を確認し、契約書や運行記録を改変せず保管してください。捜査や刑事責任への対応は、行政書士の許認可手続きとは分けて弁護士に相談する必要があります。
ココに注意
無許可営業中の事故について「保険は必ず出ない」とも、「任意保険があるから大丈夫」とも断定できません。用途、告知内容、契約条件や事故の事情を保険会社に確認します。事故が起きたときは、救護・警察への連絡など必要な対応を優先してください。
正規の許可取得へ進むときの準備と相談先
一般貨物の新規許可では、車両、営業所・車庫、人員・管理体制、資金計画等をまとめて確認します。「誰でも資金2,000万円あれば足りる」「車庫の道路幅は全国一律6メートル」といった固定条件で物件や車両を契約しないでください。
車種・事業形態・地域の審査基準と実際の費用により、必要な準備が変わります。資金も、証明書を出す瞬間だけ口座に用意すればよいというものではありません。申請先の現行基準に沿って、調達方法と維持すべき期間を確認します。
順番は、①事業区分の確認→②営業所・車庫と人員等の見通し→③資金計画→④申請書類と開始までの工程です。物件の適合性が分からないまま賃貸契約や車両購入を先行させると、後から計画変更が必要になることがあります。
許可を取得した後の点検については、巡回指導・行政監査に備える書類の整理も参考にしてください。許可取得と、営業開始後の安全管理・記録は別々に準備します。
当事務所への相談では、現在の取引と車両・営業所等の状況を伺い、役所への事前相談、必要資料の整理、申請書類の作成・提出、補正対応につながる準備をお手伝いします。相談時点で許可や審査期間、取引継続を保証するものではありません。
まずは「誰から何を頼まれ、何を運び、何の代金を受け取っているか」をお知らせください。必要な手続きと、先に確認すべき事項を整理してから、依頼するか検討できます。
