貨物軽自動車安全管理者は、四輪以上の軽自動車で貨物運送事業を行う事業者が、営業所ごとに選任する安全管理の担当者です。2025年4月から制度が始まり、車両1台・事業主1人でも対象になります。
ただし、対応時期は事業の経営届出をした日によって異なります。また、警察署に届け出る「安全運転管理者」とは別の制度です。まずは自分の期限を確認し、講習・選任・届出を順番に進めましょう。
最初に確認する3点
・ 経営届出は2025年3月末まで? 4月以降?既存事業者の選任の経過措置は2027年3月までです。
・ 選任できる人の要件を満たしている?原則として所定の講習が必要です。運行管理者資格者証を持つだけで免除にはなりません。
・ 講習だけで終わっていない?選任後は、営業所を管轄する運輸支局等へ遅滞なく届け出ます。「15日以内」と取り違えないでください。
貨物軽自動車安全管理者とは?対象と対応期限を確認
この制度の目的は、軽貨物の運行に必要な安全管理を継続して行うことです。管理者は、点呼や勤務時間の管理、運転者への指導、記録の保存などを担当します。届出を提出するだけの役職ではありません。
対象は四輪以上の軽自動車を使用して貨物を運送する事業者です。法人か個人か、車両が1台か複数台かで対象から外れるものではありません。営業所ごとに1人を選任し、他の営業所の貨物軽自動車安全管理者を兼務することはできません。
経営届出をした日で、選任時期が変わります
| 事業者の区分 | 講習・選任の対応 |
|---|---|
| 2025年3月末までに経営届出 | 講習受講・選任は2027年3月までの経過措置があります。直前に集中しないよう、講習日と選任予定日を決めて進めます。 |
| 2025年4月以降に経営届出 | 経営届出後、事業を開始する前までに速やかに選任します。既存事業者と同じ2027年3月まで待てる制度ではありません。 |
経過措置は、安全対策すべてを先送りしてよいという意味ではありません。点呼や業務の記録など、すでに実施が必要な事項は別に確認してください。制度全体と経過措置は、国土交通省の安全対策強化の案内にまとめられています。
1人で開業する場合と、バイク便の場合
1人で運営する場合は、基本的に事業主本人が必要な要件を満たして管理者になります。配偶者など家族従業者から選任することも可能ですが、実際に安全管理を行える体制が必要です。名前だけ借りて、業務を行わない人を置くことでは対応できません。
三輪の軽自動車・二輪の自動車を用いるバイク便には、貨物軽自動車安全管理者の選任義務はありません。ただし、事故記録や国への事故報告など、別の義務までなくなるわけではありません。
経営届出をした日が分からない場合は、届出書の控えを確認します。控えが見つからなければ、事業者名と営業所所在地を整理して管轄運輸支局へ確認してください。日付が不明なまま「自分は経過措置の対象」と決めつけないことが大切です。
選任できる人の要件と、講習を間違えないための確認
貨物軽自動車安全管理者に選任できるのは、次のいずれかに該当する人です。
1. 貨物軽自動車安全管理者講習を、選任の日の前2年以内に修了した人。
2. 上記の講習を修了し、さらに貨物軽自動車安全管理者定期講習を、選任の日の前2年以内に修了した人。
3. 同じ事業者が一般貨物・特定貨物の運送事業も営む場合に、その事業の運行管理者として現に選任されている人。
選任後は、原則として選任の日を起点に2年以内ごとに定期講習を受講します。講習の修了日だけでなく、選任日と次の受講時期を管理しましょう。選任要件と様式は、近畿運輸局の貨物軽自動車安全管理者の案内でも確認できます。
「運行管理者の資格を持っている」だけでは免除されない
3番目の特例は、運行管理者資格者証の保有だけを条件としているのではありません。その軽貨物事業者が一般貨物・特定貨物の事業も営み、本人がその事業で運行管理者に選任されていることが必要です。
例えば、以前の勤務先で運行管理者だった人が、独立して軽貨物だけを始める場合、資格者証を持っているという理由だけで講習を省くことはできません。特例を使う場合は、現在の選任状況を証明する書類を管轄窓口に確認してください。
現に運行管理者として選任されている間は定期講習も免除されますが、その運行管理者でなくなった場合には取扱いが変わります。退職・異動・役職変更の際は、軽貨物側の講習や管理体制も確認しましょう。
講習の申込みでは、名称・受講方法・修了証を確認
申込先は、国土交通大臣の登録を受けた講習機関です。NASVAなどが実施する「運行管理者等指導講習」の基礎講習・一般講習とは別なので、名称を取り違えないようにしてください。
・ 初めての選任に必要な講習か、選任後の定期講習か
・ 対面・オンライン等の受講方法と、本人確認に必要なもの
・ 受講料・日程・受講完了条件・修了証明書の受取方法
選任前の講習は5時間以上、定期講習は2時間以上が基準です。空き日程や受講方法は機関によって異なります。国土交通省の登録講習機関一覧から確認し、修了証明書を受け取った後に選任・届出へ進みます。
希望日の講習が取れなければ、別の登録機関や受講方法を確認します。新規開業で事業開始前の選任に間に合わない場合は、未選任のまま始めてよいとは判断せず、開業日程を管轄窓口に相談してください。
届出は「遅滞なく」。選任から1週間以内の提出に備える
貨物自動車運送事業法第36条の2では、選任・解任の届出を遅滞なく行うと定めています。国土交通省の解釈・運用では、遅くとも1週間以内に届け出るよう指導する扱いです。1週間待ってよいという意味ではなく、選任したら速やかに提出します。警察の安全運転管理者の「15日以内」を、この制度に当てはめてはいけません。
「講習を修了した」「社内で担当を決めた」「届出を提出した」は別の段階です。講習の修了証を受け取っただけでは、選任の届出は完了していません。根拠となる運用は、国土交通省「輸送安全規則の解釈及び運用」第33条の2(PDF、本文33ページ)で確認できます。
用意する情報と添付書類
営業所の所在地を管轄する運輸支局等の最新様式を使います。近畿運輸局では、選任・変更・解任の様式と、個人事業主用・法人用の記載例が公開されています。
・ 届出者:事業者の氏名・名称、住所、法人の場合は代表者氏名。
・ 営業所:名称・所在地・連絡先。
・ 管理者:氏名・生年月日・選任年月日、兼職がある場合は職名と職務内容。
・ 講習:登録講習機関名、修了年月日、修了番号など、修了証明書に記載された内容。
・ 添付:選任要件に応じた講習修了証明書・定期講習修了証明書の写し。運行管理者の特例では、その選任状況を証明する書類を確認。
氏名や日付の転記を照合し、添付の文字が読めるか確認します。提出用だけでなく、事業者側の控えも残してください。届出後に管理者や届出事項を変更した場合、解任した場合も、必要な届出を行います。
兵庫県の提出先は「検査・整備・保安部門」
兵庫県の貨物軽自動車安全管理者の届出先は、神戸運輸監理部 兵庫陸運部 検査・整備・保安部門です。所在地は〒658-0024 神戸市東灘区魚崎浜町34-2です。
事業開始の経営届出を扱う兵庫陸運部監査部門と、同じ手続きだと思わないようにしてください。ほかの都道府県も含め、近畿運輸局の届出先一覧(PDF)で確認できます。窓口に行く・郵送する場合は、受付時間、必要部数、控えの返送方法を提出先に確認してから準備します。
届出漏れに気づいた場合
実際の経営届出日・講習修了日・選任日を整理し、管轄窓口へ速やかに相談してください。日付をさかのぼらせたり、していない講習・選任をしたことにしたりしてはいけません。追加説明が必要かは、個別の状況と窓口の案内に従います。
e-Gov電子申請は、送信後の確認まで行う
貨物軽自動車安全管理者の届出は、e-Govによるオンライン提出に対応しています。紙の窓口提出・郵送も可能です。自分が期限内に確実に進められる方法を選びましょう。
e-Govのログインには、e-Govアカウント・GビズID・Microsoftアカウントという選択肢があります。GビズIDだけが必須というわけではありません。2026年7月版の国土交通省マニュアルでは、パソコンにe-Gov電子申請アプリケーションを準備する手順が案内されています。スマートフォンだけで申請の入力・提出が完了するものではありません。
1. 利用環境を準備:公式案内で対応するパソコン環境・アプリ・アカウントを確認する。
2. 手続き名を確認:貨物軽自動車安全管理者の選任等の届出を選び、提出先と添付書類を確認する。警察の安全運転管理者や、一般貨物の運行管理者の手続きと取り違えない。
3. 入力・添付:届出内容と修了証明書等を照合し、読み取れるファイルを添付して送信する。
4. 控えを保存:提出した申請書の控え・到達番号等を保存する。
5. 処理状況を確認:通知や補正依頼を確認し、必要な修正を行う。手続き完了の記録も保存する。
到達番号が出たことと、内容に不備がなく確認を終えたことは同じではありません。送ったままにせず、マイページの処理状況を確認してください。利用方法と最新マニュアルは、国土交通省の自動車運送事業オンライン申請案内から確認できます。
エラーで送信できない場合は、画面に表示された内容と発生日時を控え、システム操作はe-Govのサポート、書類の内容・提出先は管轄運輸支局に問い合わせます。送信できたか不明な場合は、先に提出履歴を確認し、重複提出を避けましょう。回答待ちで期限が迫るときは、窓口・郵送での対応も提出先に相談してください。
警察署の「安全運転管理者」とは別制度。台数だけで一律に判断しない
名前は似ていますが、貨物軽自動車安全管理者は国土交通省側の制度、安全運転管理者は道路交通法に基づく都道府県公安委員会側の制度です。一方を届け出たから、自動的にもう一方の届出も済むわけではありません。
似た名称を区別するための確認表
| 制度 | 対象・確認先 |
|---|---|
| 貨物軽自動車安全管理者 | 四輪以上の軽自動車で貨物運送事業を行う事業者。1台でも対象。営業所の所在地を管轄する運輸支局等へ。 |
| 安全運転管理者 | 原則、使用の本拠ごとに定員11人以上の自動車1台以上、またはその他の自動車5台以上など。対象外となる事業所もあるため、管轄警察署へ確認。 |
| 運行管理者 | 一般貨物・旅客などの運送事業で設けられる別制度。軽貨物の安全管理者の講習・届出と混同しない。 |
警察庁の案内では、運行管理者等を置く自動車運送事業者など、対象外となる事業所も示されています。したがって、「黒ナンバーが5台あれば、どんな事業所でも必ず二重届出」とは説明できません。軽貨物だけを営む事業者でも5台以上になる場合は、安全運転管理者の選任が必要になることがあるため確認が必要です。
確認するときは、使用の本拠、車両の台数・用途・乗車定員、一般貨物等の兼業の有無、現在選任している管理者を一覧にして、管轄警察署へ伝えます。基準の確認には警察庁「安全運転管理者制度の概要」(PDF)を利用できます。
両方の制度の対象となる場合、同一人物による兼務は妨げられていません。ただし、それぞれの要件を満たし、それぞれの提出先へ届け出る必要があります。警察側の選任届は選任から15日以内です。講習・必要書類・期限を一つにまとめて扱わず、別々に管理してください。
選任後に続ける安全管理と、記録の保存期間
管理者の選任後も、事業者の安全確保の責任がなくなるわけではありません。毎日の運行前後に行うこと、定期的に行うこと、事故時に行うことを分けて準備します。
点呼はアルコールだけでなく、体調と運行の安全を確認
乗務前後の点呼では、アルコール検知器による酒気帯びの確認を行います。乗務前は体調や日常点検など、乗務後は車両・道路・運行の状況など、必要な事項を確認し、記録します。検知器は有効に作動する状態で保ちます。1人で事業を行う場合も、自ら確認して運行の可否を判断します。
睡眠不足、強い疲労、体調不良などで安全な運転ができないおそれがある場合は、配送予定を優先して運行しないでください。飲酒がないという確認だけで、運行してよいことにはなりません。
点呼記録には、運転者・実施者、車両、日時、方法、確認事項、必要な指示などを残します。国土交通省の軽貨物向け点呼記録簿の例を使うと、必要な項目を確認しやすくなります。
日報は1年、台帳は退職したらすぐ捨ててよいわけではない
主な記録と保存の考え方
| 記録 | 主な内容・保存期間 |
|---|---|
| 点呼記録 | 運行前後の確認・指示等。1年間保存。 |
| 業務記録(日報) | 運転者、車両、開始・終了・休憩の日時と地点、距離、主な経過地点等。1年間保存。 |
| 事故の記録 | 事故の概要・原因・再発防止策等。3年間保存。 |
| 指導・監督の記録 | 実施日時・場所・内容・実施者と受けた人等。3年間保存。 |
| 貨物軽自動車運転者等台帳 | 運転者情報、特別な指導・適性診断の状況等を記載して営業所に備え置く。転任・退職等で運転者でなくなったときは、年月日・理由を記載し、3年間保存。 |
日報と台帳は、目的も保存の扱いも違います。台帳を「毎年更新して、古いものは1年で処分する」といった運用にしないでください。台帳等の取扱いは、国土交通省の安全対策FAQ・近畿運輸局掲載版(PDF、台帳は本文31ページ)でも確認できます。
紙でも電子記録でも構いません。大切なのは、必要事項を実際の運行に沿って記録し、期間中に確認できる状態で保存することです。アプリを使う場合も、記録項目・保存期間・出力方法・バックアップを確かめます。アプリを導入しただけで、法令遵守が自動的に保証されるものではありません。
毎日酒気帯び「なし」が続くこと自体が、虚偽記録の証明になるわけではありません。測定していないのに数値を作る、実施していない点呼を後から埋める、といったことをしないでください。記載漏れに気づいた場合は、事実を確認できる資料と不足の経緯を整理し、推測で実施済みにしないことが重要です。
事故が起きたら、警察・保険会社への連絡だけで終わらせない
事故時は、まず負傷者の救護や危険防止、警察への報告など必要な対応を行います。そのうえで、自動車事故報告規則の対象となる事故は、管轄運輸支局等を通じて国土交通大臣への報告も必要です。
所定の事故報告は原則30日以内です。さらに、2人以上の死者を生じた事故など速報の対象では、24時間以内のできるだけ速やかな速報が必要です。「30日あるから後でよい」と考えず、該当性と連絡先を確認してください。事故の記録を作成して3年間保存することも、行政への報告とは別の義務です。
点呼・記録のほかにも、勤務・休息時間の管理、毎年の指導・監督、健康状態の把握、初任・高齢・事故惹起運転者への特別な指導や適性診断などがあります。それぞれ対象・実施時期が異なるため、国土交通省の安全対策リーフレット(PDF)を使い、事業所の年間予定へ落とし込みましょう。
未対応があるときは、処分を怖がって隠さず不足を整理する
選任や記録等の義務違反は、行政処分の対象となります。国土交通省が示した処分基準例には、貨物軽自動車安全管理者の選任違反で「選任なし」の場合、事業停止30日間というものがあります。単なる注意で終わると考えるべきではありません。
一方、選任なし・選任済みで届出なし・記録の不備は、それぞれ異なる違反です。経過措置の適用や違反内容を確認せず、すべてが同じ処分になると決めつけることもできません。具体的な基準は、国土交通省の行政処分基準改正の案内(PDF)で確認できます。
1. 現状を確認する:経営届出日、講習履歴、選任・届出の控え、日々の記録を集める。
2. 不足を分ける:講習未修了、選任未実施、届出漏れ、記録不足のどれかを明確にする。
3. 対応を確認する:管轄運輸支局へ事実を伝え、必要な届出・説明・今後の運行体制を相談する。
4. 実施と再確認:修正・提出を行い、控えを保管する。翌日以降も続けられる担当と記録方法を決める。
「受講したはず」「代理で出してもらったはず」で記録が見つからない場合は、講習機関や提出した担当者へ確認します。返事がないまま完了扱いせず、確認済みの事実と未確認事項を分けて管轄窓口へ相談してください。
よくある質問
2025年より前から黒ナンバーで仕事をしています。今すぐ違反ですか?
2025年3月末までに経営届出をした事業者には、管理者の講習受講・選任について2027年3月までの経過措置があります。ただし、点呼・業務記録など別の義務まで猶予されるわけではありません。経営届出日と現在の対応状況を確認してください。
講習を受けたら、自動的に運輸支局へ登録されますか?
いいえ。要件を満たす人を事業者が選任し、選任の届出を行う必要があります。修了証明書を受け取ったら、選任日と提出日を決め、届出の控えまで保管してください。
警察署へ安全運転管理者を届けています。それで足りますか?
足りません。貨物軽自動車安全管理者とは別の制度です。軽貨物側の対象であれば、選任要件を確認し、運輸支局等への届出を行います。同じ人が兼務する場合も、手続きは別です。
自分の対応期限や、届出の進め方を整理したい方へ
サクセスファン行政書士事務所へ、貨物軽自動車安全管理者の選任・届出についてご相談ください。次の情報が分かると、何を先に確認すべきか整理しやすくなります。
・ 営業所の市区町村、個人・法人の別、車両台数
・ 貨物軽自動車運送事業の経営届出日(不明ならその旨)
・ 講習の受講状況、管理者の選任状況、届出の控えの有無
・ 一般貨物事業の兼業や、他の管理者との兼務の有無
分からない項目を推測で埋める必要はありません。講習の受講や現場の安全管理を事務所が代わりに行うものではありませんが、確認すべき事項と行政手続きの支援範囲を分けてご案内します。
制度・一次資料の確認:2026年10月。提出時は、管轄運輸支局等の最新様式・案内を確認してください。
