【結論】路線バスの休廃止と、代替交通の許可・登録は別の手続です。まず、自治体の交通政策担当と管轄運輸支局等に、休廃止の範囲・予定日と利用者の移動実態を示して相談します。地域公共交通会議等で運行方法を検討し、必要な許可・登録、運賃の手続、住民への周知をそろえて、交通が途切れない移行を目指します。会議の合意だけで運行を始められるわけではありません。

乗務員不足や収支の悪化は、事業者だけでなく、通院・通学・買物でバスを利用する住民にも関わる課題です。現在の利用者がどこへ移動しているか、他の交通手段で代替できるかを確認し、運行方法と費用負担を検討します。すべての地域を同じ方法へ切り替えることが正解とは限りません。
ポイント
地域公共交通会議、協議運賃を扱う運賃協議会、地域公共交通計画を作る法定協議会は、役割と構成員が異なります。2023年10月以降、一般乗合の協議運賃は道路運送法第9条第4項・第5項に沿って、構成員を限定した協議と事前の住民等の意見反映を行います。運行方法の協議と一括して済ませないでください。
この記事で分かる4つのポイント
- 路線の休廃止届と地域の協議の関係
- 一般乗合・一時的な乗合・自家用有償旅客運送の違い
- 利用実態をもとにした事業者・住民との調整
- 運賃、補助制度、登録更新の確認事項
路線バス廃止代替の手続|休廃止届と地域公共交通会議の役割
路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業の路線の休止・廃止に係る事業計画変更は、道路運送法第15条の2により、原則として6か月前までに届け出ます。事業そのものの休廃止は同法第38条で区別されています。第15条第4項は軽微な事業計画変更の事後届出であり、路線休廃止の根拠ではありません。
旅客の利便を阻害しないと認められる省令上のケースでは、30日前までの届出となります。施行規則第15条の4には、他の一般乗合事業者が当該路線で現に事業を行う・行う見込みがある場合や、所定の地域協議会・地域公共交通会議等で協議が調った場合などが規定されています。市町村長主宰の会議等では路線が一つの市町村内に限られる等の条件もあり、会議を開けば全国一律に短縮できるわけではありません。
通常の届出後に意見聴取を経て休廃止日を繰り上げる仕組みもありますが、運輸当局の通知と所定の届出が必要です。利用者への事前公示も別に確認します。予定日から逆算して、届出期限・協議・公示・代替運行の開始日を整理してください。
地域公共交通会議の定義・構成は、現行の道路運送法施行規則第4条第2項・第4条の2等で確認できます。路線や運行形態の協議と、第9条第4項の運賃協議会を混同しないことが重要です。道路運送法/道路運送法施行規則。
乗務員不足への対応は、採用状況だけでなく、運転者が無理なく勤務できるダイヤ、休憩、予備要員、車両数まで含めて検討します。地域の課題を「2024年問題」だけで説明せず、その路線の実績を示すことが大切です。
💡 手続・運営の確認ポイント
最初の相談では、現行の許可・事業計画、休廃止を検討する区間図、時刻表、停留所別・時間帯別の利用状況、収支、運転者の確保状況を持参します。未決定の代替案は「検討中」と明示し、確定した運行として住民に案内しないようにします。
神戸市の神姫バス休止事例から確認できること
神戸市の令和2年度第8回地域公共交通会議では、西区押部谷町和田地区に関係する神姫バス35・82系統の休止が書面で協議され、承認されています。協議期間は2021年1月12日から29日で、乗務員不足や新型コロナウイルスの影響、赤字路線の見直しが背景として記載されています。2021年当時の事例のため、現在の手続や自地域の運行条件は別に確認します。
議事概要には、住民への休止理由の周知、代替交通手段の検討についての情報発信、利用状況を分かりやすく示すことなどの意見が残されています。これらは重要な検討事項ですが、概要に記載のない「許可条件」や「必ず代替バスへ移行する条件」が付いたと読み替えることはできません。
自地域で進める際は、①休廃止の理由と影響を整理する、②代替手段と残る不便を比較する、③住民へ説明して意見を記録する、④協議結果と必要な申請・届出を区別する、という形で準備できます。神戸市・第8回会議の議事概要。
コミュニティバスの申請|名称ではなく運行の実態で選ぶ
「コミュニティバス」は取組の呼び方であり、それだけで許可・登録の種類が決まるものではありません。運送主体、利用者、車両、路線・区域、運行期間、料金、管理体制から制度を選びます。既存事業者への委託と、自治体・NPO等による自家用有償旅客運送を、費用だけで比較しないでください。
一般乗合(4条)、一時的な乗合(21条)、自家用有償(78条2号・79条)
- 道路運送法第4条の一般乗合:許可を受けた運送事業者が行います。既存の許可があっても、計画する路線・営業区域・運行形態に応じた変更認可や届出、運賃手続の確認が必要です。
- 第21条の乗合運送:一般貸切・一般乗用の事業者について、災害等の緊急時や、一般乗合事業者によることが困難で一時的な需要のために地域・期間を限定して許可を受ける場合などの制度です。恒久的な運行を無条件で行える制度でも、必ず経由する段階でもありません。
- 第78条第2号・第79条の自家用有償旅客運送:市町村・NPO等の対象となる主体が、バス・タクシーで必要な輸送を確保しにくい地域等で登録を受けて行う制度です。運送の必要性、区域、旅客、対価、安全管理等を確認します。第78条第3号の許可制度とは区別します。
4条、21条、78条の順に必ず申請するという法律上の階段はありません。既存事業者が対応できるサービス、必要な移動、地域側の運営能力を協議して選択します。協議だけで全ての許認可要件が免除されることもありません。
自家用有償旅客運送では、バス・タクシー事業者が運行管理等に協力する「事業者協力型」もあります。協力契約があっても、登録を受けた主体の責任がなくなるわけではありません。誰が点呼・車両整備・事故連絡・保険対応を行うかを文書で決めます。近畿運輸局・自家用有償旅客運送の案内・ハンドブック。
💡 手続・運営の確認ポイント
車両だけ先に購入せず、運行主体と必要な手続、安全管理体制、運転者の資格・講習、保険、委託範囲を先に確認します。道路の幅や転回場所、乗降場所の安全性、車いす利用への対応も、地域の実態に合わせて検討してください。
自家用有償旅客運送の登録更新|2年・3年・5年の区分
道路運送法第79条の5では、有効期間は原則2年です。更新時に業務改善命令・所定の重大事故・業務停止命令に関する条件を満たす場合は3年、事業者協力型の新規登録や、同型の更新で所定の条件を満たす場合は5年になります。登録証と実際の運営状況を確認してください。
更新の根拠は第79条の6、申請方法は施行規則第51条の10です。同規則では更新申請書は満了日までに提出するものとされており、「全国一律に満了1か月前を1日過ぎたら失効」とする説明は正確ではありません。ただし、不足書類の補充や必要な協議に時間がかかるため、余裕をもって管轄窓口に確認します。
満了日までに更新申請があり、その申請への登録又は拒否の通知があるまでの間は、従前の登録は満了後も効力を有します。この継続規定と、更新申請をせずに期限を過ぎた場合を区別します。期限経過に気づいたときは、登録・申請状況を直ちに窓口で確認し、効力のないまま運送を続けないでください。
無登録等の運送は法違反となり得ますが、適用条文・罰則や保険の支払可否は事実関係・契約で異なります。「更新日を過ぎたら必ず保険が一切出ない」「全件新規協議から数か月停止」と一律に断定はできません。
💡 手続・運営の確認ポイント
登録証、満了日、次回協議の要否、申請の担当者と代行者を管理表にまとめ、担当異動時にも引き継ぎます。受付の記録と補正連絡を保管し、提出したつもりのまま放置しないことが大切です。
地域公共交通会議での調整|利用実態と事業者の対応可能性を示す
既存のバス・タクシー事業者には、車両や運転者の確保、現在の利用への影響など、それぞれの事情があります。反対意見を単なる感情論と扱わず、どの需要に対応できるか、提案が継続可能かを具体的に確認します。住民の意見も、賛否の数だけでなく、通院・通学の時間帯や代わりの交通手段の有無まで整理します。
ODデータと協議記録の作り方
ODデータは、出発地と目的地の組合せを表す情報です。住民アンケート、停留所別の乗降実績、予約履歴などから、誰が、いつ、どこへ移動するかを把握します。調査期間、回答数、対象者、欠測、季節の影響を示し、実績と予測を分けます。「80%がこの利用だから競合しない」など、実測していない数字を証拠にしないでください。
比較する内容は、運行区間・時間、料金、乗換え、予約の方法、車両の定員、歩行距離、既存サービスとの重なりです。個人の通院先や移動履歴は、会議資料に必要以上に載せず、集計化などの配慮を行います。データは判断材料であり、許可や事業収支を保証するものではありません。
議事録や協議が調ったことを証する書類には、協議した対象、参加者、提示した資料、意見・回答、決定事項、引き続き確認する事項を区別して記録します。未解決の反対意見を解決済みとしたり、実際に行っていない協議を記載したりしないでください。協議が整わない場合は、自治体の交通政策担当へ残った論点と追加資料を確認し、運行区域・時間・費用負担などの案を見直します。必要な協議や許可・登録の確認が済んでいない間は、開始日を確定した案内を出さず、既存の移動手段を含む当面の対応を自治体と相談してください。自家用有償旅客運送についても、法令上すべて全会一致が必須というわけではなく、地域の設置要綱・所定の検討手順を確認します。
💡 手続・運営の確認ポイント
運行後に確認する指標は、利用者数だけでなく、必要な時間に目的地へ着けるか、積み残しがないか、運行費と公費負担、運転者の確保状況などから選びます。事前の予測が外れた場合のダイヤ変更・車両変更・代替策も検討しておくと、見直しの判断を共有できます。
住民主体の取組と神戸市の地域交通
神戸市には「しおかぜ」「さとやま」などの地域コミュニティ交通があり、会議資料で運行内容や変更の検討過程を確認できます。第16回会議の議事要旨では、「さとやま」の本格運行について協議が整ったことや、児童の利用、定員、積み残し時の別の移動手段などの議論が記録されています。実例を、自地域の利用条件を確かめる参考にしてください。
地域が行う利用促進や意見の取りまとめと、運行主体が行う安全管理は役割が異なります。住民参加だけで利用者が増える、赤字がなくなる、安全管理責任を住民に移せるとは限りません。協力する作業と負担を明文化し、参加しにくい住民の声も聞く方法を用意します。神戸市地域公共交通会議の資料、第16回議事要旨。
💡 手続・運営の確認ポイント
正式な会議の委員と、地域の利用者・運営協力者は同じとは限りません。設置要綱や名簿を確認し、利用者への説明、意見収集、会議への報告を誰が行うか決めます。特定の地域の委員構成を、そのまま全国共通の法的義務と考えないでください。
代替交通の運営コスト|小型化だけで判断しない
神戸市交通局は、市バス86路線のうち64路線、約74%が赤字と説明しています。これは同市バスの公表値であり、全国の全バス路線の比率ではありません。神戸市交通局・各系統の収支状況。
現状維持、路線・ダイヤ再編、小型車両、デマンド交通、既存タクシーの活用などを比較するときは、車両費だけでなく、運転者の人件費、運行管理、整備、保険、予約受付、決済、代車、周知費用を含めます。車両を小さくしても、増便や複数台運行が必要なら費用が下がらない場合があります。
収支の不足額と、住民に確保するサービス水準を合わせて示します。廃止か維持かを収益だけで決めず、通学・通院等の公共的な役割と、自治体が継続して負担できる予算を検討してください。
地域公共交通確保維持改善事業等の補助制度
国の地域公共交通確保維持改善事業には、運行の確保維持、バリアフリー等の環境改善、計画策定等、異なる支援があります。運行費・車両・決済システム・会議費用のすべてを同じ制度で補助できるとは限りません。
例えば地域内フィーダー系統の支援は、地域公共交通計画への位置付けに加えて、申請主体、接続関係、運行地域・方法、輸送量等の条件を確認する必要があります。地域の協議に合意したことや、赤字であることだけでは交付されません。神戸市の一般会計からの支援と国の特定補助制度を同一視しないでください。
計画段階で、利用する補助メニュー、申請者、対象年度、計画認定・交付申請等の期限、対象経費、自己負担、実績報告を確認します。「共同運行を盛り込めば採択率が格段に上がる」といった保証はできません。国土交通省・地域公共交通確保維持改善事業(現行交付要綱・相談先)。
💡 手続・運営の確認ポイント
補助を受けられない場合の資金計画も用意します。運行契約や車両発注の前に、対象期間と事前着手の扱いを各制度で確認してください。採択・交付決定・支払を同じ時点と考えず、支出と入金の時期も合わせて管理します。
乗継割引とハブ&スポーク|地域ごとの効果を検証する
支線から拠点へ移動し、幹線バスや鉄道に乗り継ぐ方法は、車両や運転者の配置を見直す選択肢です。一方で、待ち時間、歩行距離、雨天時の待合場所、車いすでの移動、最終便への接続など、直通便とは違う負担が生じます。割引だけで解決できるとは限りません。
神戸市の2026年4月公開FAQでは、対象のICカードで1回目の市バス降車から30分以内に2回目へ乗車する場合、大人は最大230円の乗継割引とされています。割引額は1回目の料金が上限で、対象路線・カード・ポイント利用等の条件があります。「最大210円」「すべての代替バスで2乗車目が無料」という説明は正確ではありません。神戸市・バスIC乗車券乗継割引FAQ。
自地域で新しい乗継制度を設計する場合は、割引の原資、事業者間の精算、必要な運賃手続、対象者・区間、案内方法を別に決めます。神戸市の制度をそのまま導入できるわけではなく、実証前の削減額や利用増を確定した成果として示さないようにします。
💡 手続・運営の確認ポイント
直通便と乗継案を、利用者の総移動時間と支払額、運行側の総費用で比較します。遅延時に接続できない場合の案内も必要です。運行前の試算と運行後の実績を分け、負担が増える人への代替策も検討します。
地域公共交通計画と申請内容|実施主体・運行条件をそろえる
自治体の地域公共交通計画、会議の協議結果、事業計画・登録申請、運賃、委託契約、補助申請の内容に食い違いがないか確認します。計画変更や協議が必要かは、選んだ制度と変更内容によって異なります。あらゆる運行で計画の一語一句が同じでなければ許可されない、というものではありません。
法人等の定款・規約、実施主体の資格、運送業務の範囲は、必要な申請書類と合わせて確認します。一般乗合事業と自家用有償旅客運送の登録主体では条件が異なり、今回の記載だけで将来の建設業許可等まで決まるといった説明は適切ではありません。
- 自治体交通政策担当・運輸支局等へ現状と代替案を相談する。
- 地域の移動実態、安全管理、収支、運行主体を整理する。
- 必要な協議・意見収集を行い、決定事項と未解決事項を記録する。
- 休廃止届、許可・登録、運賃、補助等の手続をそれぞれの期限で進める。
- 開始前に利用者へ案内し、運行後の評価・変更・更新を管理する。
協議運賃の設計は、一般の運行計画の会議とは区別して進めます。神戸市も2024年に構成員を限定した運賃協議会の設置を協議しています。神戸市・運賃協議会設置の資料。
💡 手続・運営の確認ポイント
申請を支援する専門家へ相談する場合も、自治体の政策決定や地域の合意を代行できるという意味ではありません。委託する書類作成・調査・調整の範囲と、運行主体や自治体が決定する事項を分けて確認してください。
運行開始前の最終確認
会議の合意、申請の提出、許可・登録の取得、運行開始は別の段階です。許可・登録の内容と運行条件、運賃手続、安全管理、保険、利用者への案内を確認してから開始します。協議の成立や専門家への依頼だけで、認可や補助金の交付が保証されることはありません。
代替交通の手続について相談する
休廃止届や代替交通の申請準備で資料の整理に困ったときは、役所への事前相談、必要資料の整理、申請書類の作成・提出、補正対応についてご相談いただけます。対象地域、現行の運行内容、休廃止の予定、代替案、これまでの協議資料をお知らせください。自治体の政策決定や地域の合意を代行するものではなく、対応できる範囲・費用・日程は個別に確認します。
よくある質問
地域公共交通会議の合意があれば運行を始められますか?
いいえ。運行方法に応じた許可・登録、運賃等の手続が別に必要です。会議の種類と協議事項を区別し、合意を許認可の取得と混同しないでください。
路線バスの代わりに白ナンバーで有償運送はできますか?
自家用有償旅客運送の対象となる主体・運送内容であれば、地域での所定の協議や必要な要件を満たして、第79条の登録を受ける方法があります。単にバスが廃止されたことだけで自由に有償運送できるわけではありません。
登録の満了日を過ぎると、必ず直ちに失効しますか?
満了日までに更新申請があった場合には、登録又は拒否の通知まで従前の登録の効力が続く規定があります。更新申請のない期限経過と区別し、登録証・申請状況を管轄窓口で確認してください。
