【結論】運送業における「フリーランス新法」とは?
運送業におけるフリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)とは、資本金の額に関係なく、従業員を使用する運送会社が「一人親方ドライバー」へ業務委託する際に適用される新しいルールです。
口頭発注の禁止や60日以内の報酬支払いが義務化され、違反すれば50万円以下の罰金等の対象となります。

行政書士歴20年、5000社以上の支援実績を持つ小野馨です。
今回は、多くの運送会社様からご相談いただく【運送業のフリーランス新法と契約実務】について解説します。
「うちは資本金1,000万円以下だから、下請法は関係ない」
長年、運送業界で常識とされていたこの線引きは、2024年11月のフリーランス新法施行により、過去のものとなりました。
もし今、あなたが一人親方ドライバーに対して、「電話一本」や「LINEのみ」で翌日の配車を指示し、正式な発注書(契約書)を交わしていないのであれば、とても危険な状態です。
それは単なるマナー違反ではなく、明確な「法律違反」として行政指導の対象になり得ます。
注意ポイント
さらに恐ろしいのは、この法律への対応を怠ることで、労働基準監督署や公正取引委員会の調査を誘発し、最悪の場合、ドライバーから「私は実質的な従業員(労働者)だ」として、過去に遡った残業代を請求される「偽装請負リスク」までもが高まる点です。
この記事では、難解な法律用語を現場の言葉に翻訳し、あなたの会社を守るための具体的な「契約書対応」について、実務の視点から包み隠さずお話しします。
⚠️ 放置は経営リスクです
「知らなかった」では済まされません。違反時の「50万円以下の罰金」や「社名公表」は、荷主からの信用失墜=取引停止に直結します。今すぐ契約書を見直しましょう。
この記事でわかる4つのポイント
- ✅ 資本金無関係!従業員がいれば「一人親方」への発注は全適用
- ✅ LINE発注はOKだが「保存義務」と「明示事項」に注意
- ✅ 燃料代の「天引き」は合意書がないと違法になる
- ✅ 事故責任と偽装請負を防ぐ「業務委託契約書」の必須条項
運送業許可の全体像は「運送業許可の教科書」をご覧ください!
【対象判定】運送業のフリーランス新法とは?資本金1000万の誤解
まず、運送業の経営者が最も陥りやすい誤解を解きます。
「うちは資本金が1,000万円以下だから、下請法もフリーランス新法も関係ない」という認識は、今すぐ捨ててください。
ポイント
フリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法)における適用基準は、資本金の額ではなく「業務委託をする事業者に、従業員(役員を除く週20時間以上勤務する労働者)がいるかどうか」で決まります。
つまり、たとえ資本金が1円の個人事業主やマイクロ法人であっても、事務員や自社ドライバーを「1名でも雇用」していれば、一人親方への発注において新法が全面的に適用されます。
一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)を経営されている場合、許可要件として5台以上の車両と運行管理体制が必要であるため、必然的に「従業員を使用する事業者(特定業務委託事業者)」に該当するケースが99%です。
対象外だと思い込んで放置すれば、知らぬ間に法を犯すことになります。
💡 相手が「一人親方」ではなく「運送会社」なら下請法です
「発注相手は個人事業主ではなく、従業員がいる協力会社(法人)だ」という場合は、フリーランス新法ではなく下請法の基準が適用されます。
資本金1,000万円超の元請け企業にとって、下請法違反は勧告・公表リスクが伴う深刻な問題です。
>>運送業の下請法対策:資本金基準と「4つの義務・11の禁止事項」を徹底解説
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推奨画像: 運送会社の社長が、資本金(金庫)ではなく「従業員名簿」を見て、新法の対象であることを認識しハッとする様子。
生成用プロンプト: A hyper-realistic photo of a Japanese trucking company president in a suit, looking at an employee list on a desk in a dispatched office, realizing he is subject to the law. In the background, a blurred truck fleet. The atmosphere is serious and professional. Lighting is natural office light. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 運送業フリーランス新法対象判定_従業員有無_資本金関係なし[Watercolor painting style]
資本金は関係なし!「従業員がいる」なら即適用
この法律が「運送業界の激震」と呼ばれる最大の理由は、適用のハードルが極めて低い点にあります。
これまでの常識であった「下請法」との決定的な違いを、まずは以下の図式で頭に入れてください。
- ❌ 従来の下請法:
親事業者の資本金が1,000万円を超えている場合のみ適用。
(※資本金1,000万円以下の会社は、いくら叩いても法の網にかからなかった) - ⭕️ フリーランス新法:
発注事業者の「従業員の使用状況」で判断。
(※資本金1円でも、従業員がいれば全適用)
法律用語では、フリーランス(特定受託事業者)へ仕事を発注し、かつ自身の会社で従業員を使用している事業者を「特定業務委託事業者」と呼びます。
この「特定」に該当すると、取引条件の明示に加え、支払期日の短縮やハラスメント対策など、新法のすべての義務が課されます。
ここで、あなたの会社の車庫を見渡してください。
一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の許可基準には、原則として「営業所ごとに5両以上の車両」と、国家資格者である「運行管理者」の選任が義務付けられています。
つまり、まっとうに緑ナンバーを維持している運送会社であれば、事務員や整備管理者、あるいは自社雇用のドライバーなど、最低でも1名以上の「従業員(労働者)」が存在するはずです。
この瞬間、あなたの会社は「特定業務委託事業者」となり、たった一人の傭車(一人親方)との取引であっても、新法を遵守する法的義務が発生します。
「うちは零細だから」という言い訳は、法律上も実務上も通用しません。
💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)
「うちは従業員ゼロ、全員が業務委託ドライバーだから対象外だ」と主張される社長様がよくいらっしゃいます。しかし、ここには「偽装請負」のブーメランが潜んでいます。
もし実態調査で、その委託ドライバーたちが「実質的な労働者(従業員)」と認定されれば、その瞬間に「従業員がいる」ことになり、フリーランス新法違反(義務違反)と労働基準法違反(残業代未払い)のダブルパンチを受けることになります。完全な「一人親方だけ」での組織運営は、極めて難易度が高い綱渡りであることを認識してください。
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推奨画像: 「資本金基準(下請法)」と「従業員基準(フリーランス新法)」の適用範囲の違いを示す比較図解。
生成用プロンプト: A simple, professional infographic comparing two laws. Left side: "Subcontract Act" icon showing a stack of money (Capital > 10M). Right side: "Freelance Act" icon showing a silhouette of a worker (Has Employees). A checkmark on the Right side indicates broader scope for trucking companies. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: フリーランス新法_適用範囲_下請法比較_資本金と従業員[Infographic style]
ドライバー(一人親方)は「特定受託事業者」に該当する
法律の条文を読むと、「特定受託事業者」という聞き慣れない言葉が出てきますが、これは運送業界で言うところの「一人親方ドライバー」のことだと翻訳して差し支えありません。
ただし、ここで絶対に注意すべきは、相手が「個人事業主」か「法人」かという形式は関係ない、という点です。
フリーランス新法における保護の対象(特定受託事業者)の定義は以下の通りです。
- ✅ 個人であっても:
従業員を使用していないなら対象。 - ✅ 法人(株式会社等)であっても:
代表者以外に役員がおらず、かつ従業員を使用していないなら対象。
つまり、あなたの会社の仕事を請けているドライバーが、インボイス対策などで「〇〇運送株式会社」として法人化していたとしても、彼がたった一人でハンドルを握り、事務員も雇用していないのであれば、この法律上の「フリーランス」として扱わなければなりません。
「相手も社長(法人)なんだから、対等な商売だ」という理屈は通用しません。
法は実態を見ます。彼らに従業員がおらず、組織としての交渉力が弱い立場にある以上、発注側であるあなたには、取引条件の明示や報酬支払いのルールを遵守する義務が発生します。
なお、ドライバーが「週20時間以上勤務する労働者」を雇用している場合に限り、この法律の対象からは外れますが、スポットで短時間の荷下ろし助手を頼む程度であれば「従業員を使用していない」とみなされ、依然として新法が適用される可能性が高い点にご注意ください。
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推奨画像: トラックの運転席に座るドライバー(一人親方)のシルエットと、その背後に「個人」と「法人(一人社長)」の両方の看板があるイメージ図。
生成用プロンプト: Conceptual illustration of a truck driver sitting in a cab. Two signboards are floating next to him: one says "Individual" and the other says "Corporation". Both are connected to a shield labeled "Protected by Freelance Act". Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 特定受託事業者定義_一人親方法人化_フリーランス新法対象[Vector art style]
口頭発注は違法!運送会社に課される「3つの義務」
結論から言います。「明日、東京へ4トン車を1台頼む」という電話だけの発注は、今日限りで卒業してください。
フリーランス新法では、発注時における「取引条件の明示」が義務化されており、口約束のみで済ませる行為は明確な法律違反となります。
ポイント
この法律は、立場の弱いドライバーを守るため、発注側である運送会社に対し、主に「①明示義務」「②支払期日」「③就業環境整備」という3つの義務を課しています。
これらに違反した場合、公正取引委員会等からの行政指導や是正命令、最悪の場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
これまでの「阿吽の呼吸」は通用しません。ここでは、現場の業務フローを止めることなく、適法にこれらの義務をクリアするための具体的な手順を解説します。
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推奨画像: 電話で配車をしている配車係の手元に「×」マークがつき、その横でスマホ(LINE)やPC画面で条件を送信している「〇」マークの対比図。
生成用プロンプト: A split-screen illustration showing "Bad" vs "Good" dispatching methods. Left side (Red X): A dispatcher shouting into an old telephone, with no paper. Right side (Green Check): A dispatcher calmly sending details via smartphone app or email. Professional setting. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 運送業発注義務_口頭発注禁止_取引条件明示_LINE発注[Vector illustration]
① 取引条件の明示義務(LINE・メール発注の注意点)
まず、現場で最も多い質問にお答えします。「LINEやショートメールでの発注は法律違反ですか?」。
答えは「適法(OK)」です。
フリーランス新法では、紙の契約書や発注書だけでなく、電子メールやSNS(LINE、Chatwork等)を用いた「電磁的方法」による条件明示を正式に認めています。
しかし、単に「明日、大阪向け4t車よろしく」と送るだけでは、義務を果たしたことになりません。
法律上、必ず以下の項目を文字で残す必要があります。
- 1. 委託する業務の内容:
(例:〇〇発〜△△着の一般貨物輸送、付帯作業の有無) - 2. 報酬の額:
(例:運賃50,000円+消費税5,000円) - 3. 支払期日:
(例:202X年〇月〇日振込)
これらが明記されていれば、LINEの吹き出し一つでも立派な「発注書」となります。ただし、LINE特有の落とし穴に注意してください。
「送信取り消し」や「スマホの紛失・機種変更」で履歴が消えてしまった場合、行政の監査が入った際に「明示義務を果たした証拠」を提出できません。
対策として、発注用のLINEグループを作る場合は「ノート機能」を活用して履歴を固定するか、定期的にトーク履歴をテキストファイルとしてエクスポートし、自社のパソコン内に保存する運用を徹底してください。
言った言わないのトラブルを防ぐためにも、重要なのは「送信すること」ではなく「履歴が消えないように残すこと」です。
💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)
多くの運送会社様が見落としているのが、「再委託(孫請け)」の許可です。
もし、あなたが発注した一人親方が、さらに別のドライバーにその仕事を流す可能性があるなら、発注時に「再委託の可否」も明示しておくことを強く推奨します。
ここが曖昧だと、見知らぬドライバーが事故を起こした際、元請けであるあなたの責任が問われる「指揮命令系統の混乱」を招きます。
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推奨画像: スマートフォンのLINE画面のイラスト。「悪い例(明日よろしく!)」と「良い例(金額・日付・内容入り)」を比較表示。
生成用プロンプト: Close-up illustration of a smartphone screen displaying a chat app interface. Two chat bubbles are shown. Top bubble (Bad Example): "Tomorrow, Osaka, thanks!" with a red cross. Bottom bubble (Good Example): "Osaka delivery, 50,000 yen, Payment: End of next month" with a green checkmark. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 取引条件明示義務_LINE発注例文_フリーランス新法必須項目[Vector art style]
② 支払期日のルール(60日以内への短縮)
運送業界には「月末締め、翌々月末払い(約90日サイト)」といった長い支払サイクルがいまだに残っていますが、フリーランス新法の適用対象(特定受託事業者)となる一人親方に対しては、この慣習は法律違反となります。
法律は明確に、「役務の提供を受けた日(配送完了日)から60日以内の支払期日」を設定することを義務付けています。
ここで多くの経営者が陥る致命的な勘違いがあります。それは、60日のカウントダウン開始日は「請求書が届いた日」ではなく、「ドライバーが荷物を運び終えた日(検査完了日)」であるという点です。
- ❌ 危険な例(月末締め翌々月払い):
4月1日に配送完了 → 4月末締め → 6月末払い。
結果:4月1日から見ると「90日後」の支払いとなり、完全に違法。 - ⭕️ 安全な例(月末締め翌月払い):
4月1日に配送完了 → 4月末締め → 5月末払い。
結果:最大でも60日以内に収まるため適法。
つまり、一人親方ドライバーとの取引においては、社内の支払いサイクルを「翌月払い」へ短縮するか、個別に早期払い対応をする等の財務調整が不可欠となります。
💡 行政書士の現場メモ(燃料代の「天引き」にご用心)
運送会社様から最も相談が多いのが、「報酬から燃料代(軽油)や高速代、車両リース料を天引きしてもいいか?」という問題です。
実務上、これはよくある処理ですが、法律的には要注意です。
事前に何の取り決めもなく天引きを行うと、「不当な給付内容の変更(減額)」や「購入強制」とみなされ、行政指導の対象になります。
これを防ぐ唯一の方法は、契約書または覚書で「相殺(天引き)に関する合意」を書面で交わしておくことです。
「いつもやっているから」という甘えは捨て、必ずドライバーの署名捺印がある同意書を保管してください。
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推奨画像: カレンダーを使った図解。「4月1日配送」から「60日目のライン(デッドライン)」を赤線で引き、従来の「90日後支払い」がラインを超えてアウトになっている様子。
生成用プロンプト: A calendar infographic highlighting dates. Start date: April 1st (Delivery). Red Deadline Line: May 30th (60 days). A stack of money labeled "Payment" is placed on June 30th (90 days), with a large "Violation" warning stamp on it. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: フリーランス新法_支払期日60日ルール_起算点勘違い_運送業[Infographic style]
③ 「明日から来るな」は禁止!契約解除の30日前予告義務
運送の現場では、遅刻や誤配を繰り返すドライバーに対し、「もう明日から来なくていい」と配車を止めることがありましたが、フリーランス新法において、この対応は極めて高い法的リスクを伴います。
法律は、「6ヶ月以上継続して業務委託を行っている(または行う予定の)」一人親方との契約を解除、あるいは更新しない場合、少なくとも「30日前まで」にその旨を予告することを義務付けました。
これは、実質的に労働基準法の「解雇予告手当(30日分)」に近い保護が、一人親方にも適用されることを意味します。
- 📅 原則(30日前ルール):
今日が4月1日なら、契約終了日は最短でも「5月1日」。
即日で契約を切ることは、原則として認められません。 - 🗣 理由の開示義務:
もしドライバーから「なぜ契約解除なのか?」と問われた場合、発注者はその理由(例:配送遅延率が〇%を超えたため等)を明確に開示する義務があります。「なんとなく」や「会社の都合」という曖昧な説明は通用しません。
もちろん、天災等の不可抗力や、ドライバー側に重大な契約違反(飲酒運転や無断欠勤の繰り返し等)があり、直ちに解除することがやむを得ないと認められるケースは例外ですが、そのハードルは非常に高いと考えてください。
安易な即時解除は、後になって「不当な契約解除による損害賠償」を請求されるだけでなく、行政機関への通報(チクリ)の引き金となります。
品質の悪いドライバーとの契約を終了させたい場合こそ、感情的にならず、30日間の猶予を持って、書面で粛々と通知を行う「大人の手続き」が求められます。
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推奨画像: 解雇通知(契約終了通知)のカレンダー。今日の日付から「30日後」にフラグが立っており、その間は矢印で「Notice Period(予告期間)」と示されている図。
生成用プロンプト: A calendar illustration focusing on the concept of "30-day Notice". Start date marked "Notice Given". End date (30 days later) marked "Contract Ends". An arrow connects the two dates. A document titled "Termination Notice" is placed next to the start date. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 契約解除予告義務_30日前ルール_フリーランス新法_運送業[Infographic style]
2024年問題の落とし穴|「偽装請負(実質雇用)」とみなされる境界線
物流の2024年問題(ドライバーの残業上限規制)に伴い、社員ドライバーの労働時間を減らすため、あるいは不足する労働力を補うために、「一人親方(個人事業主)」への外注比率を高めている運送会社様も多いでしょう。
しかし、ここに巨大な落とし穴があります。
行政当局は、労働時間規制の潜脱(抜け道)として業務委託が悪用されることを強く警戒しており、「形式はフリーランスだが、実態は労働者(従業員)ではないか?」という監視の目をかつてないほど光らせています。
法律の世界には「実態判断の原則」という鉄則があります。
ココに注意
たとえ契約書のタイトルが「業務委託契約書」であっても、また相手が「私は個人事業主です」と合意していたとしても、日々の業務実態において運送会社が強い指揮命令を行っていれば、法律上は「労働者」とみなされます。
もし「偽装請負(偽装一人親方)」と認定されれば、フリーランス新法違反どころの話ではありません。
過去2年分等の未払い残業代の一括請求、社会保険料の遡及徴収、そして労働基準監督署による是正勧告など、会社の資金繰りを一撃で破壊するほどのインパクトをもたらします。
ここでは、その危険な境界線を具体的に解説します。
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推奨画像: 氷山の一角の図解。水面に出ている小さな氷山に「業務委託契約書(形式)」と書かれ、水面下の巨大な氷塊に「指揮命令の実態(労働者性)」と書かれている。
生成用プロンプト: An iceberg illustration explaining "Substance over Form". Above water (Tip): A document labeled "Contract". Below water (Huge mass): A complex structure labeled "Actual Control / Employment Reality". A warning sign points to the hidden danger. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 偽装請負_実態判断の原則_運送業リスク_氷山図解[Infographic style]
契約書が「業務委託」でも、実態が「指揮命令」ならアウト
ここで言う「アウト」とは、あなたの会社が契約している一人親方が、労働基準監督署や裁判所によって「法律上の労働者(従業員)」であると認定されることを指します。
形式上は請負契約を結んでいても、以下のような実態があれば、その契約書は紙切れ同然となり、過去に遡って残業代や社会保険料を徴収されるリスクが極めて高くなります。
自社の運行管理が以下の「危険リスト」に当てはまっていないか、胸に手を当てて確認してください。
- 🚨 1. 業務遂行方法への細かい介入(指揮命令):
「A地点に10時着」という結果の指示は問題ありません。しかし、「このルートを通れ」「ここで休憩しろ」「高速道路は使うな」といった、具体的な手順まで細かく指示している場合、それは業務委託ではなく「雇用」の指揮命令とみなされます。 - 🚨 2. 仕事の依頼に対する「拒否権」がない:
「明日の仕事はこれだ」と一方的にシフトを組み、ドライバーがそれを拒否する自由がない場合、それは明白な「処分権限のある使用従属関係」です。本当のフリーランスなら、条件が合わなければ断ることができます。 - 🚨 3. 時間的・場所的拘束の強さ:
始業・終業時刻が厳格に管理され、タイムカード等で勤怠を管理している場合。また、業務がない待機時間中も自由な行動(私用や他社の業務)が許されていない場合もアウトです。 - 🚨 4. 代替性の欠如と専属性:
「風邪を引いたから代わりのドライバーを行かせます」という提案を認めず、「あなた本人が来なさい」と強制する場合。また、「他社の仕事を請けてはならない」と契約や口頭で縛っている場合、経済的な従属性が高いとして労働者性が肯定されやすくなります。
💡 行政書士の現場メモ(制服とトラックの罠)
意外と知られていないのが、「制服」と「トラックのロゴ」のリスクです。
業務遂行上、特定の制服着用を強制したり、トラックに貴社の社名(看板)を入れることを義務付けている場合、それは「貴社の指揮下にある者」としての外形的事実を作ることになります。
これらは単独で即アウトではありませんが、上記の指揮命令の実態と組み合わさることで、労働者性の認定を決定づける強力な証拠(補強事由)となります。
「身なりを整えさせる」ことと「雇用管理」の境界線には細心の注意が必要です。
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推奨画像: 運送会社の配車係が、ドライバーに対して「ルートマップ」と「タイムスケジュール」を厳しく指さして指示している様子。ドライバーは困った顔で「No Refusal(拒否権なし)」の鎖に繋がれている。
生成用プロンプト: Illustration of a trucking dispatcher micromanaging a driver. The dispatcher points to a strict route map and clock. The driver is shackled with a chain labeled "No Refusal". A checklist in the background shows checked boxes for "Fixed Route", "Uniform", "Exclusive". Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 偽装請負判断基準_指揮命令権_運送業リスク_労働者性認定[Vector art style]
労働基準監督署と公正取引委員会の「ダブル監査」に備える
これまでの運送業の労務管理といえば、主に「労働基準監督署(労基署)」の定期監督や、退職ドライバーによる駆け込み申告への対応が中心でした。
しかし、フリーランス新法の施行により、今後は「公正取引委員会(公取委)」や「中小企業庁」という新たな監視の目が加わります。
最も警戒すべきは、これら複数の役所による「連携プレー(ダブル監査)」です。
政府は現在、フリーランス保護のために省庁横断的な相談窓口(フリーランス・トラブル110番等)を設置し、情報の共有を強化しています。
これにより、以下のような最悪の連鎖反応が起こり得ます。
- 📉 シナリオ1:新法違反から労基署へ飛び火
一人親方から「報酬が期日までに支払われない」と公取委に通報が入る。
↓
公取委が調査に入り、新法違反を認定。
↓
さらに調査過程で「強烈な指揮命令」の実態が発覚。
↓
「これは偽装請負の疑い濃厚」として厚労省(労基署)へ情報提供。
↓
労基署が乗り込み、過去の残業代未払いを指摘される。 - 📉 シナリオ2:労基署から新法違反へ飛び火
労基署の定期監査で「業務委託契約書」の不備が見つかる。
↓
実態はグレーだが、少なくとも形式上の「取引条件明示」もなされていない。
↓
「フリーランス新法違反の疑い」として中企庁へ通報。
↓
50万円以下の罰金および社名公表の対象となる。
つまり、これからは「契約書(形式)」と「実態(運用)」の両方を完璧に整えなければ、どちらかの入り口から火がつき、最終的に会社全体が炎上する構造になったのです。
「うちはドライバーと仲が良いから大丈夫」という性善説に頼った経営は、もはや通用しないフェーズに入りました。
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推奨画像: 運送会社(建物)に対し、左側から「労働基準監督署」、右側から「公正取引委員会」という2つのサーチライトが交差して照らしている図。逃げ場がないことを表現。
生成用プロンプト: Illustration of a trucking company building at night. Two powerful searchlights converge on the building. Left beam labeled "Labor Standards Inspection". Right beam labeled "Fair Trade Commission". The intersection of light reveals a "Risk" warning. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 行政連携_ダブル監査_労基署と公取委_運送業リスク[Vector art style]
【対策】運送業特有のリスクをカバーする「業務委託契約書」の作り方
ここまで様々な法的リスクをお伝えしてきましたが、ここからは「解決策」の話をします。
これらすべてのリスク(新法違反、偽装請負、残業代請求)から会社を守る最強の盾、それが「運送実務に特化した業務委託契約書」です。
しかし、ここで行政書士として強く警告しておかなければなりません。
インターネットで「業務委託契約書 雛形 無料」と検索して出てくるテンプレートは、運送業では「絶対に使ってはいけません」。
なぜなら、それらの大半はWebデザイナーやライター、コンサルタント等の「オフィスワーク」を想定して作られており、我々の業界で日常的に発生する「貨物事故(荷物破損)」や「交通事故(第三者損害)」、そして「車両管理責任」といった、数百万〜数千万円規模のリスクに関する条項が完全に抜け落ちているからです。
穴の空いた盾で戦場に出ることは自殺行為です。
ここでは、市販の雛形には載っていない、運送会社が生き残るために必ず盛り込むべき「命の条項」について解説します。
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推奨画像: 「一般的な無料契約書(穴だらけの盾)」と「運送特化型契約書(頑丈な鉄の盾)」の対比イラスト。穴だらけの盾には『事故対応:記載なし』と書かれ、矢が貫通している。
生成用プロンプト: Conceptual illustration of two shields. Left shield (Generic Template): Wooden, full of holes, arrows labeled "Accident" and "Liability" piercing through it. Right shield (Specialized Contract): Steel, robust, arrows bouncing off. Label: "Transport Specific". Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 業務委託契約書雛形_危険性_運送業リスク管理_貨物事故対応[Vector art style]
無料の雛形は危険!「貨物事故」と「損害賠償」の免責条項
ネット上の無料雛形で最も危険なのが、第〇条によくある「損害賠償については、甲乙協議の上決定する」という一文です。
これは平時には平和的に見えますが、運送事故という有事においては「何も決めていない」のと同じであり、会社を倒産させる時限爆弾となります。
なぜなら、運送業の事故損害は、数万円ではなく数百万〜数千万円単位になるからです。
高額な貨物を破損させた際、あるいは第三者を巻き込む死亡事故を起こした際、「協議」で解決することは不可能です。以下の2点を明確に定めていない契約書は、今すぐ破り捨ててください。
- 🚛 1. 貨物事故の「免責金額」の負担者:
運送会社は通常、貨物賠償責任保険に加入していますが、そこには必ず「免責金額(例:1事故につき10万円)」が設定されています。
事故が起きた際、この10万円を「会社が払うのか」「ドライバーが払うのか」。契約書に明記がなければ、ドライバーは支払いを拒否します。結果、保険を使っても会社が毎回10万円の赤字を垂れ流すことになります。 - 💥 2. 第三者損害と求償権の範囲:
業務中にドライバーが人を跳ねた場合、被害者は会社(運行供用者)をも訴えてきます。会社が被害者に賠償金を支払った後、その全額または一部をドライバーに請求する権利を「求償権」と言いますが、この行使条件と範囲を契約で定めておかなければ、会社はドライバーの過失を一方的に被ることになります。
ただし、注意が必要です。「いかなる事故もドライバーが全額賠償する」といった極端な条項は、フリーランス新法における「不当に不利益な給付内容の変更」や、公序良俗違反として無効になるリスクがあります。
重要なのは、全額転嫁することではなく、「保険でカバーできない範囲(免責額や上限超過額)をどう分担するか」を、契約締結という冷静なタイミングで合意し、書面に残しておくことなのです。
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推奨画像: 事故を起こして頭を抱えるドライバーと、請求書を持って立ち尽くす社長の間にある「契約書」。契約書が白紙(Generic)だとお互いに責任を押し付け合い、契約書に「免責条項」があると、保険証券と現金(10万円)がスムーズに移動している対比図。
生成用プロンプト: Split illustration showing accident aftermath. Left (Bad Contract): Driver and Boss arguing over a burning truck, contract is blank. Right (Good Contract): Driver handing a defined deductible amount (money) to Boss, Boss handing insurance papers, minimizing conflict. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 貨物事故損害賠償_免責金額負担_運送業契約書リスク_求償権[Vector art style]
トラブルを未然に防ぐ「オーダーメイド契約書」の重要性
運送会社と一口に言っても、食品配送、建材輸送、宅配、スポット便など、その業務形態は千差万別です。
だからこそ、他社の契約書をコピーして使うことは、サイズの合わない靴でマラソンを走るようなものであり、いつか必ず足を痛めます。
行政書士として断言しますが、御社が作るべきは、誰にでも当てはまる綺麗な文章ではなく、「御社の業務フローとリスクに1ミリの隙間もなくフィットしたオーダーメイドの契約書」です。
具体的には、以下の要素を自社の実情に合わせてカスタマイズする必要があります。
- 💰 1. インボイスと消費税の「定義」:
報酬単価は「税込」か「税抜」か。相手が免税事業者(インボイス未登録)の場合、消費税相当額をどう調整するか。ここが曖昧だと、支払いのたびに揉めるだけでなく、公取委から「買いたたき」と認定されるリスクが高まります。 - ⏱ 2. 荷待ち時間と付帯作業の扱い:
「到着後30分以上の待機は別途〇〇円支給する」「手積み手降ろしは運賃に含む」など、現場で不満が出やすいポイントを事前にルール化します。これはフリーランス新法の「募集情報の的確な表示」にも繋がります。 - 🤝 3. 会社ごとの「独自ルール」の明文化:
「配送完了後の日報はLINEで写真を送る」「アルコールチェックの記録義務」など、御社がドライバーに求める具体的な行動指針を契約条項に盛り込みます。口うるさく注意するより、契約として合意する方が圧倒的に拘束力が生まれます。
プロに依頼して契約書を作成する費用は、決して安くはないかもしれません。
しかし、ひとたび労働紛争や新法違反のトラブルが起きれば、弁護士費用や解決金、そして行政処分による信用毀損で、その何十倍ものコストが一瞬で吹き飛びます。
「転ばぬ先の杖」を、最高品質の素材で用意する。これこそが、長く会社を存続させる経営者の責務ではないでしょうか。
💡 行政書士の現場メモ(契約書は「生もの」です)
一度作った契約書を「永久保存版」だと思っていませんか?
法律は今回のフリーランス新法のように常に改正されますし、御社のビジネスモデルも変化します。3年前に作った契約書が、今の法律では「違法」になっているケースも珍しくありません。
車検と同じように、契約書も定期的な「法務メンテナンス」が必要です。
今の契約書で今年の監査を乗り切れるか、不安な方はぜひ専門家の診断を受けてください。
📷 画像挿入指示
推奨画像: テーラー(仕立て屋)が、運送会社の社長にぴったりのスーツ(契約書)を採寸して仕立てている様子。背景には既製品(テンプレート)が「Size Mismatch」として散らばっている。
生成用プロンプト: Illustration of a tailor (labeled "Legal Expert") fitting a bespoke suit (labeled "Custom Contract") on a trucking CEO. The suit fits perfectly. In the background, generic suits labeled "Free Template" are piled up, looking baggy or too tight. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: オーダーメイド業務委託契約書_インボイス対応_行政書士作成メリット_予防法務[Vector art style]
⚠️ 【警告】自己判断のリスクと「見えないコスト」
「ネットの雛形を少し変えれば大丈夫だろう」という自己判断は、地雷原を地図なしで歩くようなものです。
契約書のたった一行の不備が、数年後に数百万円の残業代請求や、行政処分による「営業停止」という致命傷を招く事例を、私は嫌というほど見てきました。
本業に集中するためにも、法的な守りはプロにお任せください。
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いきなり契約する必要はありません。
まずはあなたの会社で使用している「業務委託契約書」や、会社の憲法である「定款」に、フリーランス新法や2024年問題に抵触するリスクがないか、無料の『法務診断』を受けてみませんか?
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※賢い経営者の第一歩。
※この記事を見たとお伝え頂ければスムーズです。