【定義】運送業における「下請法」とは?
下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは、資本金の大きい元請け(親事業者)が、立場の弱い下請け(運送事業者)に対し、一方的に不利な取引を強いることを禁じる法律です。
特に2024年問題以降、国土交通省と公正取引委員会は、燃料費の高騰分を無視した「買いたたき」や、長時間の「荷待ち(タダ働き)」を厳しく監視しており、この法律は中小運送会社が適正な運賃を勝ち取るための「最強の武器」となります。

行政書士歴20年・支援実績5000社超。現場の守護神こと、行政書士の小野馨です。
今回は、理不尽な値下げ要求に苦しむ経営者を守る「運送業の下請法と運賃交渉術」についてお話します。
「燃料代が上がっているのに、元請けが運賃値上げに応じてくれない」
「『協力金』という名目で、毎月売上から数%が引かれている」
「文句を言ったら仕事を切られるのが怖くて、赤字でも走っている」
もし、あなたが今、このような状況でハンドルを握っているなら、それは単なる「商習慣」ではなく、明白な「法律違反(犯罪)」の被害者である可能性が高いです。
これまでの運送業界では、「仕事をもらっている立場だから」と泣き寝入りするのが常識でした。
しかし、断言します。その常識は2024年をもって完全に過去のものとなりました。
現在、国は「トラックGメン」による集中監視や、「標準的な運賃」の告示を通じ、あなたの会社を守るために本気で動いています。
行政書士として数多くの契約トラブルを見てきましたが、知識(法律)を持たない経営者は、搾取され続け、最終的に資金ショートで市場から退場させられます。
逆に、正しい法知識と交渉術を持てば、対等なパートナーとして利益を確保できる時代になったのです。
この記事では、あなたの会社が法律でどう守られているのか、そして具体的にどうやって元請けに「NO」を突きつけ、適正な利益を取り戻すのか。
その実務的な手順を余すところなくお伝えします。
⚠️【警告】「知らなかった」で済む額ではありません
「買いたたき」による損失は、年間で数百万〜数千万円に及びます。
さらに恐ろしいのは、無理な運行で事故が起きた時、赤字請負をしていた会社には安全対策を講じる体力が残っていないことです。
下請法を知らないことは、会社の利益をドブに捨て、ドライバーの命を危険に晒すことと同義です。
この記事でわかる4つのポイント
- ✅ 資本金で即判断!あなたの会社が「下請法」で守られる条件
- ✅ 現場で横行する「買いたたき」「支払遅延」など5つの違法事例
- ✅ 「標準的な運賃」を根拠に、角を立てずに値上げする交渉トーク
- ✅ 口約束を封じる「3条書面(発注書)」と行政書士の活用法
運送業許可の全体像は「運送業許可の教科書」をご覧ください!
運送業の下請法適用ガイド|資本金区分と2024年問題の監視強化
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推奨画像: 天秤のイラスト。片方の皿に「資本金3億円超の巨大企業」、もう片方に「資本金1千万円以下の運送会社」が乗り、法律の盾が小さい会社を守っている構図。
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Alt属性: 下請法 適用対象 資本金区分 親事業者 下請事業者 [Professional minimalist flat illustration]
まず、あなたの会社が下請法(下請代金支払遅延等防止法)という「盾」で守られる存在なのかを明確にしましょう。
この法律は、全ての取引に適用されるわけではなく、「親事業者(発注側)」と「下請事業者(受注側)」の間に、一定以上の『資本金格差』がある場合にのみ発動します。
多くの経営者が「うちは下請けだから当然守られる」と思い込んでいますが、相手が大企業ではなく「中堅の運送会社」である場合、資本金によっては対象外となるケースも存在します。
逆に言えば、この区分さえクリアしていれば、どんなに力関係に差があっても、法的にはあなたが圧倒的に有利な立場に立てるのです。
ここでは、複雑な条文を「3秒」で判断できるチェックリストに落とし込み、2024年以降の国の監視体制について解説します。
【3秒チェック】あなたの会社は守られる?親事業者と下請事業者の「資本金」ルール
運送業における取引(役務提供委託)において、下請法が適用されるかどうかは、以下の「2つのパターン」のいずれかに当てはまるかで決まります。
感情や力関係は一切関係ありません。すべては「資本金の額」という客観的な数字で決まります。
🔍 運送業の適用判定マトリクス
以下のどちらかに該当すれば、あなたの会社は法律で守られる「下請事業者」です。
パターン①:相手が「大企業」の場合
- 親事業者(元請け):資本金 3億円超
- 下請事業者(あなた):資本金 3億円以下(個人事業主含む)
パターン②:相手が「中堅企業」の場合
- 親事業者(元請け):資本金 1,000万円超 〜 3億円以下
- 下請事業者(あなた):資本金 1,000万円以下(個人事業主含む)
ここでのポイントは、「親事業者の資本金」です。普段やり取りしている担当者の顔色を伺う必要はありません。
すぐに相手の会社概要(ホームページ)や商業登記簿を確認してください。
もし相手の資本金が1,001万円で、あなたの会社が1,000万円(または個人)であれば、その瞬間から下請法の保護対象となります。
この「1万円の差」が、交渉における法的優位性を決定づけるのです。
💡 行政書士の現場メモ(トンネル会社に注意)
「うちは元請けも小さい会社だから対象外だ」と諦めるのは早計です。大手の荷主が、間に子会社やグループ会社(トンネル会社)を挟んで発注してくるケースがあります。
この場合、実質的に親会社が関与しているとみなされれば、「トンネル規制」により下請法の対象となる可能性があります。
資本金だけで判断できない複雑な商流がある場合は、専門家によるジャッジが必要です。
泣き寝入りは終わり!「トラックGメン」と公正取引委員会の集中監視
「法律で守られていると言われても、実際に文句を言えば干されるだけだ」。そう思われるのも無理はありません。
しかし、2024年現在の状況は、過去20年とは全く異なります。政府は「物流の2024年問題」による物流崩壊を防ぐため、荷主企業に対する監視体制をかつてないレベルで強化しています。
その象徴が、国土交通省が創設した「トラックGメン」です。
彼らは、運送会社へのヒアリングやパトロールを通じて、悪質な荷主や元請けの情報を収集し、違反の疑いがある企業には直接的な「働きかけ」や「要請」を行います。
さらに悪質なケースでは、公正取引委員会と連携し、立ち入り検査や社名公表を含む「勧告」に踏み切ります。
実際に、長時間の荷待ちを強要したり、燃料サーチャージの支払いを拒否したりした大手荷主が相次いで勧告を受け、ニュースで大きく報じられています。
これまでは「バレなければいい」と考えていた荷主たちも、今は「いつGメンが来るか分からない」と戦々恐々としています。
あなたが声を上げることは、もはや孤独な闘いではありません。
国という巨大なバックアップを得て行う、正当な権利主張なのです。
現場で横行する「下請法違反」の典型例|燃料サーチャージと荷待ち時間
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推奨画像: サッカーの審判(公正取引委員会)が、悪質なトラック運送の現場(荷待ち・買いたたき)に対して「レッドカード」を突きつけているイラスト。
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Alt属性: 下請法違反 事例 買いたたき 荷待ち時間 減額 レッドカード [Professional minimalist flat illustration]
「みんなやっているから仕方がない」「嫌なら他をあたれと言われるのがオチだ」。
運送業界には、こうした長年の悪しき商慣習が、まるで「不文律」のように根付いてしまっています。
しかし、公正取引委員会と中小企業庁は、これらを明確な「下請法違反(レッドカード)」と認定し、監視の目を光らせています。
特に、昨今の燃料高騰下における「サーチャージの別建て拒否」や、ドライバーを長時間拘束する「荷待ち時間のタダ働き」は、もはや単なるマナー違反ではありません。
これらは行政指導や勧告、そして社名公表の対象となる重大な違法行為です。
ここでは、現場で「当たり前」としてまかり通っているが、実は法的に「完全アウト」である5つの典型的な違反事例を解説します。
これを知るだけで、あなたのこれまでの我慢は、請求書に乗せるべき「正当な権利」へと変わります。
①【買いたたき】燃料サーチャージの別建て拒否と「著しく低い運賃」
運送業界で最も相談が多く、かつ経営を圧迫しているのがこの「買いたたき(法第4条第1項第5号)」です。
法律では、「通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めること」を禁止しています。
特に昨今の原油価格高騰下において、以下の対応は決定的な違反リスクを孕みます。
🚨 ここが「買いたたき」の判断ライン
- ❌協議拒否:「燃料代が上がったので運賃を見直してほしい」という申し入れに対し、協議の場すら設けず無視すること。
- ❌運賃据え置き:コスト上昇分(燃料サーチャージ)を明示せず、「今まで通りの込み込み価格で頼む」と一方的に価格を据え置くこと。
公正取引委員会は現在、「コスト上昇分の転嫁」を最重要監視項目としています。
もし元請けが「嫌なら他を使うぞ」と価格協議を拒否した場合、その時点で下請法違反が成立する可能性が極めて高いのです。
②【下請代金の減額】「協力金・歩引き・手数料」名目での天引き
発注時に決めた運賃を、支払いの段階で勝手に減らす行為は、いかなる理由があっても禁止されています(法第4条第1項第3号)。
運送業界で長年横行している以下の商慣習は、すべて「違法な減額」です。
- 不明瞭な「協力金」:販促協力費やセンター利用料などの名目で、運賃の数%を一律で差し引く行為。
- 振込手数料の押し付け:契約書で「手数料は下請け負担」と定めていないにもかかわらず、振込手数料分を差し引いて支払う行為。
- 端数切り捨て:消費税の端数などを勝手に切り捨てて支払う行為。
下請法における減額禁止は絶対的なルールであり、「下請けの同意があった」としても認められません。
過去に遡って返還を求められるケースも多いため、明細書に不明なマイナス項目がある場合は即座に確認が必要です。
③【支払遅延】「60日ルール」違反と手形サイト短縮義務
「末締め、翌々月末払い」のような長い支払いサイクルは、資金力のない運送会社を倒産に追い込む元凶です。
下請法では、親事業者は「役務提供(運送完了)の日から60日以内」に代金を支払わなければならないと定めています(法第2条の2)。
たとえ契約書で「90日後払い」と合意していても、法律が優先され、60日を超えた部分は違法となります。
さらに、手形払いについても規制が強化されています。
💡 行政書士の現場メモ(手形の現金化リスク)
公正取引委員会と中小企業庁は、2024年11月より「手形サイトを60日以内に短縮すること」を強く指導しています。
もし、満期まで120日もあるような長い手形(割引困難な手形)を渡されている場合、それは実質的な値引き強要と同じであり、指導の対象となります。
資金繰りを守るためにも、60日以内の現金払いを求める権利があなたにはあります。
④【不当な給付内容の変更】長時間の「荷待ち」と附帯作業のタダ働き
ドライバーを苦しめる「荷待ち時間」や、契約に含まれていない「棚入れ」「ラベル貼り」などの附帯作業。
これらを無償で強要する行為は、「不当な給付内容の変更(法第4条第2項第3号)」や「やり直しの禁止」に抵触します。
「運送契約」はあくまで「A地点からB地点へ物を運ぶこと」への対価です。
そこに以下の要素が加わるなら、当然に追加費用が支払われなければなりません。
- 到着後、荷主の都合で2時間以上待機させられた(倉庫代わりの利用)
- フォークリフトではなく、手積み・手降ろしを現場で突然指示された
- 配送後の空き箱回収や、検品作業を手伝わされた
これらを「サービス」として強要することは、優越的地位の濫用にあたります。
対策は、必ず「運転日報」に待機時間と作業内容を分単位で記録し、荷主のサインを貰うことです。記録がなければ、行政も介入できません。
⑤【報復措置の禁止】「通報したら取引停止」という脅しへの防御
「公取委に通報したら、明日から仕事をやらないぞ」。
このような脅し文句で口封じをすることは、下請法で最も重い罪の一つである「報復措置の禁止(法第4条第1項第7号)」に違反します。
下請事業者が公正取引委員会や中小企業庁に事実を知らせたことを理由に、取引を停止したり、発注量を減らしたりすることは厳禁されています。
万が一、報復措置が行われた場合、その元請け企業は極めて厳しい行政処分と社会的制裁を受けることになります。
現在の通報システムは匿名性が高く担保されており、元請けに知られずに調査を依頼することも可能です。
「言ったら切られる」という恐怖心こそが、悪質な業者をのさばらせる原因です。
国が用意した防弾チョッキを着て、交渉のテーブルに着きましょう。
標準的な運賃を根拠にした「価格交渉」と3条書面の重要性
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推奨画像: デスクの上で、行政書士と運送会社社長が作戦会議をしている様子。机には「標準的な運賃表」と「原価計算書」が広げられ、パソコン画面には交渉シナリオが映っている。
生成用プロンプト: Professional minimalist flat illustration of a strategic meeting between a legal advisor and a logistics CEO. On the desk are documents labeled 'Standard Freight Rate' and 'Cost Calculation'. Style: Professional minimalist flat illustration, reliable corporate blue and white color scheme.
Alt属性: 運賃交渉 標準的な運賃 3条書面 原価計算 行政書士 [Professional minimalist flat illustration]
「法律違反なのは分かった。でも、実際にどうやって値上げを切り出せばいいのか?」
ここが経営者にとって最大の悩みどころでしょう。
単に「苦しいから上げてくれ」と感情に訴えても、ビジネスの世界では通用しません。
相手(元請け)も利益を確保しなければならない企業だからです。
しかし、あなたの手元に「客観的な証拠(エビデンス)」と「国の後ろ盾(告示)」があれば、話は別です。
交渉は「お願い」ではなく、対等なビジネスパートナーとしての「契約改定の協議」へと変わります。
ここでは、口約束で済ませがちな運送業界の慣習を断ち切り、国土交通省が定めた「標準的な運賃」を武器に、論理的かつスマートに価格交渉を進めるための具体的ステップを解説します。
準備なき交渉は負け戦です。
まずは足元(書面)を固めるところから始めましょう。
口約束は無効!発注時に「3条書面」を交付させる義務と防衛策
運賃交渉の前に、まず確認すべきは「契約の証拠」があるかどうかです。
運送業界では、電話一本で「明日、〇〇へ行ってくれ」という口頭発注が横行していますが、これはトラブルの温床であり、下請法第3条違反のリスクがあります。
親事業者は、発注と同時に以下の事項を記載した「3条書面(発注書)」を直ちに交付する義務があります。
- ✅ 給付の内容:何を、どこからどこまで運ぶのか
- ✅ 下請代金の額:具体的な運賃(消費税、サーチャージ等の区分)
- ✅ 支払期日:いつ、どのような方法(現金・手形)で支払うか
もし相手が書面を出さない場合、最も有効な防衛策は「自分からメールやLINEで確認を送ること」です。
「お電話でのご依頼通り、〇〇の運送を運賃〇〇円で承りました」と送信し、履歴を残してください。
この「言った言わない」を封じる証拠が、後の交渉や公取委への申告において決定的な武器となります。
「標準的な運賃」と原価計算書を用いた具体的な値上げ交渉術
「値上げしてほしい」とただ嘆願するだけでは、交渉は失敗します。
相手もビジネスマンですから、納得させるだけの「根拠」が必要です。
そこで活用するのが、国土交通省が告示した「標準的な運賃」です。
これは法律上の強制価格ではありませんが、「法令を遵守して安全に運ぶなら、本来これくらいの運賃が必要だ」という国のお墨付き価格です。
交渉の際は、以下のロジックで切り出してください。
国の定める『標準的な運賃』と比較したところ、現状の運賃では安全基準を満たす運行が困難な状況です。
御社にご迷惑をおかけしないよう、コンプライアンス遵守のために、こちらの価格への改定をご協議いただけないでしょうか?」
ポイントは、「会社の存続と安全のため(コンプライアンス)」を理由にすることです。
特に、元請けが「パートナーシップ構築宣言」を出している企業であれば、この協議要請を無視することは宣言違反となり、ペナルティの対象となります。
相手の痛いところ(社会的信用)を突きつつ、紳士的に迫るのがコツです。
交渉決裂時の最終手段|「下請かけこみ寺」と匿名通報の活用
どれだけ理路整然と説明しても、「うちは知らん」「嫌なら切るぞ」と恫喝してくる悪質な元請けも存在します。
そんな時は、一人で抱え込まずに国のセーフティネットを使ってください。
まず相談すべきは、中小企業庁が設置している無料相談窓口「下請かけこみ寺」です。弁護士や専門家に無料で相談でき、秘密は厳守されます。
さらに、公正取引委員会のウェブサイトからは「違反事実の申告(通報)」が可能です。
「通報したらバレて報復されるのでは?」という心配は無用です。公取委は通報者の秘密を守る義務があり、調査の際も「定期調査の一環」として立ち入るなど、通報者が特定されないよう配慮します。
また、前述の通り、通報を理由とした報復措置自体が重い法律違反です。
あなたが声を上げることは、あなた自身の会社を守るだけでなく、日本の物流業界全体を健全化するための正義ある行動なのです。
行政書士ができること|「内容証明」と「契約書」で会社を守る
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推奨画像: 盾を持った行政書士が、契約書のバリケードを築き、外部のトラブル(矢)から運送会社を守っているイラスト。
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Alt属性: 運送契約書 内容証明郵便 行政書士 予防法務 トラブル回避 [Professional minimalist flat illustration]
「元請けに文句を言いたいが、直接言って関係がこじれるのは怖い」。
多くの経営者様が、この「言いたいけど言えない」ジレンマを抱えています。
ここで誤解していただきたくないのは、私たち行政書士は、弁護士のようにあなたの代理人として相手と法廷で争うことはできないということです。
しかし、争わずして「相手の態度を一変させる」ことは可能です。
それは、プロの名前が入った「法的に隙のない書面」を提示することです。曖昧な口頭のやり取りではなく、法律用語で構成された通知書や、リスクを極限まで排除した契約書は、相手に対して「この会社は甘くないぞ」「バックに専門家がついているな」という強烈なプレッシャーを与えます。
ここでは、紛争になる手前の段階で、行政書士の作成する書類がいかにしてあなたの会社を守り、有利な交渉環境を作り出すのか。
その「予防法務」としての活用術を解説します。
言いにくい交渉を代弁する「内容証明郵便」の効果と行政書士の役割
「未払いの運賃を請求したい」
「法に基づいて運賃協議を申し入れたい」
これを社長自身の名前で行うと、どうしても感情的な対立になったり、相手に軽くあしらわれたりしがちです。
そこで有効なのが、行政書士の職印が入った「内容証明郵便」による通知です。
私たち行政書士は、法律で認められた「権利義務・事実証明に関する書類作成」の専門家です。
貴社の主張(例:標準的な運賃に基づいた協議の要請や、未払い代金の請求)を、法的に隙のない論理構成で書面に落とし込み、行政書士名で相手方に送付します。
- ① 心理的プレッシャー:「専門家が出てきた=下手な対応をすれば大事になる」と相手に認識させ、無視を許しません。
- ② 冷静な協議への誘導:感情論を排した法的な文章により、相手を交渉のテーブルに着かせやすくします。
- ③ 証拠能力の確保:「いつ、誰が、何を請求したか」が郵便局に公的に証明されるため、後の公取委への通報や訴訟に備えた強力な証拠となります。
※注:相手方が既に支払いを断固拒否しているなど「紛争状態」にある場合の交渉代理は弁護士の領域となりますが、その手前の「通知・催告」段階では、行政書士の書面作成がコストパフォーマンスの面で最適解となります。
【雛形】下請法リスクを排除した「運送基本契約書」の再構築
最後に、最も重要な「予防」についてお話しします。
貴社が現在使っている「運送基本契約書」は、いつ作成されたものでしょうか?
もし数年前のものを使い回していたり、ネットで拾った無料の雛形を使っていたりする場合、今の契約書は「穴だらけ」です。
2024年問題や法改正に対応し、会社を守るためには、以下の条項を盛り込んだ契約書への「巻き直し(リライト)」が急務です。
- 燃料サーチャージ自動調整条項:「燃料価格が基準値を超えた場合、自動的に運賃に反映させる」旨を明記し、協議の手間と買いたたきリスクを減らします。
- 待機時間料の請求条項:「到着後〇分を超える待機については、別途待機料を請求する」と明記し、タダ働きを防ぎます。
- 附帯作業の定義と対価:運送以外の作業(棚入れ等)が発生した場合の別料金設定を明確にします。
契約書は、トラブルが起きた時に会社を守る唯一の「盾」です。親事業者が用意した契約書にそのままハンコを押すのではなく、こちらから「適法な契約書案」を提示できるよう準備を整えておきましょう。当事務所では、貴社の業務実態に合わせたオーダーメイドの契約書作成を承っております。
まとめ:法律を「武器」に変え、対等なパートナーシップを築く
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
「下請法」と聞くと、何か難しい法律のように感じるかもしれません。しかし、その本質はシンプルです。
「汗をかいて運んだ対価は、正当に支払われなければならない」。ただそれだけの当たり前の権利を、国が保証しているに過ぎません。
2024年問題を経て、運送業界のルールは激変しました。
- ✅ 資本金を確認する:たった1万円の差で、あなたは法律の保護対象になります。
- ✅ 違反を知る:燃料代の据え置きや荷待ちのタダ働きは、我慢すべきことではなく「違法行為」です。
- ✅ 書面で戦う:口約束を止め、標準的な運賃と内容証明を武器に、論理的に交渉してください。
- 「嫌なら他をあたれ」という言葉に怯える時代は終わりました。
- もしそのような態度を取る荷主がいれば、それは将来的に行政処分を受け、淘汰されていく企業です。
- そんな沈みゆく船にしがみつく必要はありません。
あなたが声を上げることは、あなたの会社を守るだけでなく、日本の物流を支えるドライバーたちの生活を守ることにつながります。
一人で悩まず、法律と専門家を味方につけて、堂々と「適正運賃」を勝ち取りましょう。
⚖️ 運送業・下請法違反の無料診断
「その契約、違法ではありませんか?」
「元請けからの値下げ要求が止まらない」
「協力金として毎月天引きされているが、これは適法なのか?」
「内容証明を送りたいが、角が立たない文面を作ってほしい」
一人で抱え込まず、まずは実務歴20年の行政書士にご相談ください。
現在の契約内容や取引状況をお聞きし、「下請法違反の可能性」と「とるべき対策(書面作成・通報等)」を明確にアドバイスします。
※秘密厳守。元請けに知られることはありません。
※相談は無料ですが、書類作成をご依頼の場合は別途費用が発生します。
【Q&A】運送業の下請法違反に関するよくある質問
最後に、日々の相談業務の中で、運送会社の経営者様から頻繁にいただく「際どい質問」に、実務家としての視点からズバリ回答します。
- Q1. 「この安い運賃で納得します」という契約書にサインしてしまいました。もう交渉できませんか?
-
A. いいえ、交渉可能です(契約より法律が優先されます)。
下請法は「強行法規」と呼ばれ、当事者間の合意よりも優先して適用されます。たとえあなたが「安くてもいい」とハンコを押していたとしても、その金額が客観的に見て「買いたたき(著しく低い対価)」に該当する場合、その契約条項は無効となり、是正を求めることができます。諦めずにご相談ください。 - Q2. 私はトラック1台の個人事業主(一人親方)です。下請法の対象になりますか?
-
A. はい、対象になります。
個人事業主の資本金は「0円」とみなされます。したがって、発注元の会社(元請け)の資本金が「1,000万円」を超えていれば、あなたは下請法で守られる「下請事業者」となります。相手が法人であれば、ほぼ間違いなく適用されると考えて良いでしょう。 - Q3. 公正取引委員会に通報したいのですが、証拠が「LINEのやり取り」しかありません。
-
A. 立派な証拠になります。保存してください。
正式な発注書がなくても、LINEやメールの履歴、ボイスレコーダーの録音、そして毎日の「運転日報(待機時間の記録)」は有力な証拠となります。特に「値上げをお願いしたが無視された」という既読スルーの履歴などは、買いたたきの実態を示す重要な材料です。絶対に削除せず、スクリーンショット等で保存しておいてください。 - Q4. 元請けから「うちは建設業だから建設業法が適用される。下請法は関係ない」と言われました。
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A. 運送業務のみを請け負う場合は「下請法」が適用されます。
建設資材の運搬であっても、あなたが工事(建設業)を行わず、単に「運ぶこと(運送契約)」だけを請け負っている場合は、原則として建設業法ではなく下請法の対象となります。これは元請けがよく使う逃げ口上ですが、物流特殊指定に基づき、運送事業者は下請法で守られます。 - Q5. 行政書士に頼むと、相手と喧嘩になりませんか?
-
A. むしろ感情的な喧嘩を防ぐために、私たちを使います。
当事者同士で話し合うと、どうしても「世話になってやってる」「恩知らず」といった感情論になり、関係がこじれがちです。行政書士が入ることで、議論を「法律と契約の話」に限定し、ドライかつ事務的に進めることができます。結果として、無駄な争いを避けて着地点を見つけることが可能になります。