結論:中長期計画は対象区分と提出期限を確認して作成
物流効率化法の中長期計画は、特定事業者が物流改善の取組と実施時期などを整理し、国へ提出する計画です。2026年度の初回提出期限は10月末。対象区分、現状データ、担当部署、実施する措置を確認し、実行・進捗確認ができる内容にまとめます。
計画を提出しただけで補助金や税制優遇が受けられるわけではありません。また、CLOの選任義務があるのは、特定事業者のうち特定荷主と特定連鎖化事業者です。
こんにちは。行政書士の小野馨です。この記事では、運送事業者や荷主の方に向けて、中長期計画の対象、書き方、期限、社内での進め方を整理します。以下は2026年10月時点の制度説明です。
運送業の許可取得時の事業計画・資金計画とは別の手続です。開業準備については一般貨物自動車運送事業の許可要件、資金の整理については運送業の資金計画をご覧ください。
この記事で確認できること
- 150台・9万トン・70万トンという指定基準と、区分ごとの違い
- 現状・措置・目標・時期をつなぐ計画の記載例
- CLOによる社内調整と、省エネ法の報告との違い
- 2026年10月末の提出に向けた確認手順と、支援制度の調べ方
物流効率化法の中長期計画書:対象事業者と提出義務
正式な法律名は「物資の流通の効率化に関する法律」です。2025年4月からの努力義務等に続き、2026年4月から一定規模以上の特定事業者に、中長期計画や定期報告などの義務が導入されています。
中長期計画の根拠は、貨物自動車運送事業者等について法38条、荷主について46条、倉庫業者について56条、連鎖化事業者について65条です。同じ様式を全業種で使うのではなく、指定された区分に対応する様式・判断基準を確認してください。制度の全体像は国土交通省「中長期的な計画の作成」で確認できます。
特定事業者の判定基準と、150台未満の運送会社への影響
| 区分 | 指定基準の概要 | CLO選任義務 |
|---|---|---|
| 第一種荷主・第二種荷主 | それぞれの立場での前年度の取扱貨物重量が9万トン以上 | 特定荷主として指定された場合にあり |
| 連鎖化事業者 | 対象となる加盟店等の貨物について、所定の方法で算定した重量が9万トン以上 | 特定連鎖化事業者として指定された場合にあり |
| 貨物自動車運送事業者等 | 年度末の事業用自動車等による輸送能力が150台以上 | この区分の指定だけではなし |
| 倉庫業者 | 寄託を受けて入庫した貨物の年度の合計重量が70万トン以上 | この区分の指定だけではなし |
基準に該当する事業者が自ら実績を把握して届け出、国が指定を行います。荷主は原則として法人単位で判定し、親子会社だからという理由だけで自動的に合算しません。また、第一種と第二種の重量は別々に判定します。運送契約を締結して委託する側か、他の事業者が手配した貨物を受け渡す側かを整理することが大切です。
運送事業者等の150台は、一般貨物だけでなく軽貨物等を含めた事業者としての輸送能力を確認します。けん引車と被けん引車の取扱いも、運行管理者の必要人数を数える場合とは異なります。詳細は特定事業者の指定と業種別手引き、運送事業者等向けQ&Aで確認してください。
規模感をつかむ計算例:9万トン÷365日≒1日246.6トンです。毎日、実際に10トンずつ積んだ車両25台分を取り扱うと仮定すると、年間91,250トンになります。ただし、営業日数、実際の積載重量、第一種・第二種の区分、算定対象外となる貨物等で結果は変わります。「10トン車が25台来た」だけで指定対象と確定するものではありません。
150台未満でも、運送事業者としての努力義務や、取引先との改善協議は無関係ではありません。荷主から時間データや荷姿の見直しを求められたときは、提供できる情報、費用負担、開始時期を協議しましょう。全車両への特定システム導入や、紙の日報からの即時移行が一律の法定義務になるわけではありません。
未提出・虚偽報告・命令違反を分けて理解する
罰則は、違反した義務によって異なります。計画の目標が達成できなかったという理由だけで、直ちに罰金や車両停止となる制度ではありません。
| 行為・状況 | 制度上の取扱い |
|---|---|
| 中長期計画を提出しない | 法76条により50万円以下の罰金の対象 |
| 定期報告をしない、または虚偽の報告をする | 法76条により50万円以下の罰金の対象 |
| 判断基準に照らし取組状況が著しく不十分 | 措置をとるよう勧告されることがある。不従の場合は公表の対象となり得る |
| 所定の手続を経て出された命令に違反する | 法75条により100万円以下の罰金の対象 |
勧告・公表・命令の関係
取組が著しく不十分 → 勧告 → 従わない場合の公表。正当な理由なく勧告に係る措置をとらない場合には、法定の手続に従って命令が出されることがあります。計画未提出や虚偽報告の罰則とは分けて確認してください。
公表が取引先との関係に影響する可能性はありますが、融資停止・取引停止・特別監査が必ず連鎖するとはいえません。計画が遅れている場合も、未達を隠さず、課題、実施状況、取引先との協議、見直し予定を記録することが基本です。詳しくは国土交通省の勧告・命令の説明をご確認ください。
中長期計画の書き方:改善分野と4つの記入項目
計画では、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮を中心に、自社の区分・立場に応じた取組を整理します。第一種荷主、第二種荷主、運送事業者、倉庫業者では、直接改善できる事項と、相手方に協力を求める事項が異なります。対象外の項目に、実施していない取組を無理に書くことは避けてください。
作成時は、まず現状の問題を把握し、①実施する措置、②具体的な内容・目標、③実施時期、④参考事項をつなげます。担当部署、対象拠点、測定方法も整理しておけば、提出後の進捗確認に使えます。
改善の3つの視点
- 荷待ち:到着時間の集中、受付方法、入出庫日程を見直す
- 積載:発注ロット・配送頻度・ルート・帰り荷を見直す
- 荷役等:荷姿、パレット、検品、作業員・設備の配置を見直す
システム購入だけでなく、現場の運用と取引条件を合わせて検討します。
国の公式ポータルでは、荷待ち時間と荷役等時間について、1運行で合計2時間以内、1回の受渡しで合計1時間以内という短縮目標が示されています。運行単位と受渡し単位を混同せず、自社が関与する範囲を確認します。「荷待ち時間だけを一律1時間以下にしなければ違法」という意味ではありません。政府の目標と、自社が設定する対象・期間・改善目標を区別してください。
2026年10月5日には、荷主向けの中長期計画作成のポイントが公開されました。すでに提出済み、または月末に向けて提出予定の計画を直ちに差し替えるよう求めるものではない旨も示されています。
荷待ち時間を120分から45分へ:予約受付の記載例
以下は、特定荷主の物流センターで、午前中の到着集中が課題となっている場合の仮定の記載例です。実際の事業実績や、当事務所の支援実績を示すものではありません。
| 記入項目 | 記載例 |
|---|---|
| ①実施する措置 | 第1物流センターの受付時間帯を分散し、予約受付の仕組みと運用ルールを整備する |
| ②具体的な内容・目標 | 基準期間の平均荷待ち時間120分を、2027年度末までに45分へ短縮する。対象車両、受付・作業開始時刻、平均値の計算方法を統一して比較する |
| ③実施時期等 | 2026年11月に現場調査、2027年1月に一部取引先で試行、2027年3月に対象範囲を拡大する |
| ④参考事項 | 主要運送事業者3社との協議を予定。システム連携の可否、費用、運用の負担を確認し、合意後に実施範囲を確定する |
「平均45分」はこの例の社内目標で、法令による一律の合格基準ではありません。荷役等時間も別に計測し、合計時間や長時間滞留の発生状況を確認します。平均だけが改善しても、一部の運転者に待機が集中していれば、その原因も調べます。
クラウド型の予約システム、配車・動態管理システムとの連携、APIによるデータ受渡しは選択肢です。一方、受付時間の見直し、電話・共有表での予約調整、作業員の適正配置などが有効な場合もあります。デジタル投資だけが認められる方法ではありません。
運用開始前に決めること
- 運送事業者・運転者への説明会、操作手順、問い合わせ先
- スマートフォンを使いにくい場合や、予約のない車両への代替受付
- 渋滞・欠車などで予定が変わった場合の連絡と予約枠の調整
- 受付と現場で記録する時刻、個人情報・取引情報の取扱い
説明会を3回実施するなどの社内予定は、実施可能な回数を設定します。未予約車両への一律の罰金や受入拒否を、法定の対応として導入しないようにしましょう。
積載効率40%から55%、荷役90分から30分:改善策と測定をそろえる
軽い商品では、重量だけでなく容積や荷台の使い方を見ることも有用です。ただし、重量の算定方法を変えることと、実際に輸送を効率化することは別です。取扱貨物重量の算定で認められる「1立方メートル=280kg」等の換算を使っただけで、同じ運行の効率が物理的に向上するわけではありません。
| 改善分野 | 仮定の目標・措置 | 比較時の注意 |
|---|---|---|
| 積載効率 | 対象便の積載効率を40%から55%へ。出荷ロット・配送曜日を調整し、共同配送や帰り荷の確保を検討する | 重量・容積のどの指標か、対象便、距離や空車運行の扱いを明記。前後で同じ算定方法を使い、必要に応じ輸送回数も確認する |
| 荷役等時間 | 対象拠点での1台当たりの荷役等時間を90分から30分へ。パレット化、荷姿と検品手順の統一を段階的に進める | 対象作業と計測開始・終了をそろえる。納品先や作業員の負担に単に付け替えていないかを確認する |
例えば、2027年4月までに対象商品を絞って11型パレット(1,100mm×1,100mm)による輸送を試行し、検証後に適合商品の利用率100%を目指す、という段階的な計画が考えられます。すべての貨物に11型を強制する法定義務ではなく、商品寸法、車両、荷役機器、納品先の設備、安全性を確認して選びます。
参考事項には、主要取引先5社との規格・運用の協議、ASN(事前出荷情報)の共有、検品方法、空パレットの回収・費用負担などを記載できます。まだ協議前なら「協議予定」と書き、合意済みと装わないことが大切です。共同配送は、貨物の条件や運送契約、実運送者の許可・届出、事故時の責任も確認した上で進めます。
国の荷主向け作成ポイント資料には、荷姿・作業体制・情報連携など、設備投資以外の改善例も掲載されています。
CLOの選任と、省エネ法とのデータ共用
CLOは経営上の判断に参画する者から選ぶ
物流統括管理者(CLO)の選任義務は、特定荷主・特定連鎖化事業者が対象です。特定運送事業者や特定倉庫業者であるという理由だけで、選任義務が生じるわけではありません。複数の区分に指定されている場合は、それぞれの手続を確認します。
CLOには、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位が必要です。取締役や執行役員等の経営幹部を中心に、実際の権限・役割で判断します。「物流部長」という肩書だけで適否が決まるわけではありません。単なる書類の取りまとめ担当と、経営判断に関わる統括者を区別してください。
| 機能 | 現場・事務局の役割の例 | CLOの役割の例 |
|---|---|---|
| 課題の把握 | 日報、受付、荷役のデータを集計する | 部門横断で改善の優先順位を整理する |
| 営業・生産との調整 | 短納期や出荷集中の影響を報告する | 関係部門と納品条件・ロット・生産計画を調整する |
| 設備・費用 | 導入案や運用費を比較する | 会社の決裁手続に沿って投資方針・管理体制を整える |
| 計画・報告 | 根拠資料と進捗を整理する | 中長期計画等の業務を統括し、見直しを進める |
社内運用の一例として、営業・販売はリードタイムや配送頻度、生産・購買は出荷ロットや荷姿、物流・システムは受付や情報連携を担当し、月次の会議で進捗を確認する方法があります。委員会設置や月次会議、特定額以上の投資決裁権を、すべての会社に同じ形で義務付けるものではありません。
即日配送を一律に違法扱いしたり、パレット規格を相手方に一方的に強制したりするのではなく、取引の必要性と負担を確認して合意を図ります。CLOの要件・選任届出は国土交通省の公式説明をご参照ください。
省エネ法の報告と物流効率化法の報告は、提出を一本化しない
同じ「特定荷主」という言葉でも、省エネ法と物流効率化法では対象の考え方、算定単位、提出書類が異なります。輸送距離・貨物重量・燃料使用量などのデータを社内で共用することは有用ですが、一つの報告で両法の義務を満たせると考えないでください。
| 比較項目 | 物流効率化法の特定荷主 | 省エネ法の特定荷主 |
|---|---|---|
| 代表的な指定基準 | 第一種・第二種それぞれの立場で取扱貨物重量9万トン以上 | 年度の貨物輸送量3,000万トンキロ以上 |
| 主な確認事項 | 積載効率、荷待ち・荷役等時間、判断基準に沿った取組 | エネルギー使用の合理化、非化石エネルギーへの転換等 |
| 定期報告の通常期限 | 毎年度7月末。2026年度指定の場合、初回は2027年7月末 | 毎年度6月末 |
| 中長期計画の期限 | 2026年度は10月末、通常は7月末。変更がない場合の提出周期には所定の取扱いあり | 対象となる計画は原則6月末。省エネ法側の提出要件も別途確認 |
省エネ法で用いられるエネルギー消費原単位の年平均1%以上低減という目標を、物流効率化法の全事業者にそのまま転記するものではありません。共通のデータ台帳を設けつつ、対象範囲・単位・評価方法・担当者・提出先を法律ごとに管理しましょう。
省エネ法の特定荷主に関する期限の例は、関東農政局の公式案内でも確認できます。同ページの提出先はその所管業種・地域の案内です。自社の業種と所在地に応じた窓口を確認してください。
2026年10月末までの提出手順と、支援制度の確認
指定・CLO・中長期計画・定期報告を別々に管理する
| 時期 | 対応事項 |
|---|---|
| 2026年5月末 | 前年度実績に基づく特定事業者の指定に係る初回届出の期限。未対応の場合は、実績を整理して所管窓口に相談する |
| 指定後 | 特定荷主・特定連鎖化事業者は速やかにCLOを選任し、遅滞なく届け出る。5月末の指定届と必ず同時という制度ではない |
| 2026年10月末 | 初年度の中長期計画を提出する |
| 2027年7月末以降 | 指定の翌年度から定期報告。計画の変更・次回提出時期も別途管理する |
中長期計画は毎年度の提出を基本としながら、内容に変更がない場合には、所定の計画期間に応じて提出を省略できる取扱いがあります。「5年間は確認も報告も不要」という意味ではありません。定期報告は別に必要です。
- 指定区分・指定通知を確認:荷主、運送、倉庫等のどの区分で提出するかを整理します。
- 現行の様式・記載例を入手:荷主向け様式第3を、運送事業者等の様式と取り違えないようにします。
- 現状資料をまとめる:貨物重量、便数、受付・荷役時間、算定方法、拠点一覧、取引先との協議状況をそろえます。
- 措置・担当・時期を決める:実施済み、合意済み、予定、検討中を区別し、予算や設備の制約も整理します。
- 提出・受付を確認:公式案内から電子申請の手続を選び、送信結果・受付状況・提出控えを保存します。電子提出が難しい場合は、所管窓口に方法を確認します。
- 提出後の集計を継続:測定方法を引き継ぎ、変更理由や改善が進まない事情も記録します。
現在の様式、手引き、電子申請の案内は国土交通省「物流効率化法について」にまとまっています。期限間近でも、架空の取組を書き足すより、実情に基づく計画と不明点の確認を優先しましょう。
補助金・税制優遇は、義務の中長期計画とは別に確認する
物流改善に伴う設備投資を考えるときは、総合効率化計画の認定や、年度ごとの補助事業の活用を検討できます。ただし、法定の中長期計画を提出することと、支援の対象になることは別です。計画認定、補助金の採択・交付決定、税制上の要件をそれぞれ確認します。
施設・設備の税制措置には、対象資産、取得・供用時期、認定内容などの条件があります。「ロボットやシステムを購入すれば一律に特別償却」「倉庫なら必ず5年間一定割合に軽減」とは限りません。償却による課税時期の調整と、補助金による入金も分けて資金計画を作ります。
- 契約・発注・着工・取得のどの時点より前に手続が必要か
- 対象となる事業者・施設・設備と、対象外の経費
- 公募期間、予算、採択・認定の条件、他制度との併用可否
- 導入後の実績報告、保有・処分制限、維持管理費
これらを投資判断前に確認することが、対象外の支出を避ける実務上のポイントです。制度によって条件が違うため、「すべて発注前申請が絶対条件」と一括りにせず、募集要領と認定・税制の案内を照合してください。公式の入口は国土交通省「物流効率化法に基づく支援」です。税額への影響は税理士等にも確認しましょう。
計画を提出して終わりにしないための確認事項
自社で作成・提出することも可能です。重要なのは、対象区分と様式を間違えないこと、実績・予定を区別すること、現場で継続して確認できる計画にすることです。担当者が交代しても対応できるように、提出控え、根拠データ、計算式、関係者との合意、次回の期限をまとめておきましょう。
よくある質問
Q.指定基準に届かない運送会社も中長期計画を出しますか?
特定事業者としての提出義務と、広く事業者に求められる努力義務を区別します。自社の指定状況を確認し、荷主から協力を求められた場合は対応範囲を協議してください。
Q.目標を達成できなければ、すぐ50万円の罰金ですか?
未達だけで直ちに罰金となるわけではありません。計画未提出・虚偽報告・命令違反は、それぞれ別の規定です。改善状況と事情を説明できる記録を残しましょう。
Q.CLOはどの会社にも必要ですか?
物流効率化法上の選任義務は特定荷主・特定連鎖化事業者が対象です。適任者は肩書だけでなく、重要な経営判断に参画する地位・実際の役割を確認します。
運送業の手続や、計画作成の進め方に迷ったらご相談ください
現在の指定状況、準備している資料、確認したい事項をお知らせください。必要な手続と対応範囲を整理します。認定・採択や行政指導の回避、費用削減を保証するものではありません。
