「自分の会社が作るのか」「下請先から何を集めればよいのか」。実運送体制管理簿は、まず真荷主から直接引き受ける立場か、一つの運送依頼が1.5トン以上か、他社の運送を利用するかを分けると、必要な対応が見えてきます。
2025年4月からの制度に加え、2026年4月には貨物利用運送事業者への対象拡大等がありました。本記事は2026年10月時点の制度として、対象判断、通知、記録・保存の順に整理します。
帳簿以外の営業開始後の確認事項は、巡回指導・行政監査に備える書類一覧をご覧ください。
実運送体制管理簿を作るのは誰?対象と1.5トン基準
実運送体制管理簿は、元請が引き受けた貨物を実際に運んだ事業者と、その請負階層等を把握するための帳簿です。運送を他社へ委託した後、実際の運送者が分からないままにならないよう、関係する事業者の通知も必要になります。
| 確認する状況 | 基本的な扱い |
|---|---|
| 真荷主から直接受注し、一依頼1.5トン以上で他社の運送を利用 | 対象となる元請事業者が管理簿を作成 |
| 引き受けた運送をすべて自社で実運送 | この管理簿の作成は不要。一部でも他社を利用する場合は別途判断 |
| 真荷主ではなく元請等から受注する下請 | 元請としての管理簿作成義務とは別に、委託先・元請への必要情報の通知を確認 |
| 一依頼の貨物が1.5トン未満 | この重量基準による作成対象外。ただし書面交付等の他の義務まで免除されるわけではない |
「真荷主」「元請」「実運送」を契約で確認する
真荷主は、貨物の運送を自らの事業に関して委託する者として、法令上の定義に沿って判断します。単に荷物を渡した場所や、普段「荷主」と呼んでいる相手だけで決めず、契約の流れを確認してください。
真荷主から直接運送を引き受けた事業者が元請となり、実際に貨物を運ぶ事業者が実運送事業者です。2026年4月からは、トラックを利用する貨物利用運送事業者が元請になる場合にも、管理簿の作成義務が及びます。貨物軽自動車運送事業者は、この元請としての作成対象から除かれています。
1.5トンは車両の積載量ではなく、一つの運送依頼で判断
例えば、真荷主から一つの依頼で2トンを引き受け、1トンずつ二か所へ届ける場合、配達先ごとに1.5トン未満として扱うのではありません。一方、独立した別々の依頼まで、同じ基本契約という理由だけで合算するものでもありません。
積合せでも、車両全体の積載量ではなく、真荷主から引き受けた一依頼の貨物重量で判断します。実重量が分からない場合の容積換算などは、国土交通省のQ&Aに沿って確認してください。
対象、例外、記載例は国土交通省「改正貨物自動車運送事業法Q&A」(2026年3月31日時点)の第4章にまとまっています。単なるスポット輸送は、災害等の緊急やむを得ない場合の例外とは別です。
何を書き、誰から情報を集める?管理簿と通知の流れ
法定事項と、社内管理のための補助項目を分ける
管理簿の基本となる記載事項は、実運送事業者の商号・名称、実運送する貨物の内容と区間、実運送事業者の請負階層です。
これをどの依頼に関する記録か識別できるように、社内では依頼番号、荷主、運送日、委託先、通知を受けた日なども一緒に管理すると、後から照合しやすくなります。これらの補助項目と、法定記載事項は区別してください。
例として「真荷主→元請A→一次請けB→二次請けC」の契約でCが運ぶ場合、実運送事業者はC、請負階層は二次です。元請をゼロ次として数えます。利用運送事業者が契約当事者として途中に入る場合と、単なる取次ぎをする場合も区別します。
依頼時に情報を下流へ、実運送の情報を元請へ戻す
- 元請から委託先へ:元請の連絡先、真荷主の名称、委託先の請負階層を伝え、管理簿の作成対象であることも共有します。
- 再委託する事業者から次の委託先へ:受け取った情報と、次の事業者の階層を伝達します。担当者の個人記憶だけに頼らず、依頼番号等と結び付けます。
- 実運送事業者から元請へ:実際に運ぶ事業者名、貨物の内容・運送区間、請負階層を通知します。
- 元請で照合:配車表・依頼内容と通知を突き合わせ、実際の運送に合う管理簿を整えます。
上の流れを社内で使う際は、連絡窓口、送付方法、確認担当者を決めておくと、通知漏れを追いやすくなります。これは運用上の工夫であり、独自に決めた期限を全国共通の法定期限として扱わないでください。
ココに注意
通知が来ないときに、推測した会社名や階層で埋めるのは避けます。委託先へ照会し、未確認項目と照会履歴を残してください。「下請が知らせなかったから何もしなくてよい」ではなく、元請も実運送者の把握に取り組む必要があります。
保存期間・作成方法・例外を確認する
運送完了から1年保存。紙や既存の配車表も利用できる
管理簿は、その貨物の運送が完了した日から1年間、営業所に据え置く必要があります。法定事項を満たせば、専用ソフトに限らず、既存の配車表等を活用できます。電磁的記録による作成・保存も可能です。
運送完了後に、確認できた実運送者と実際の区間を反映し、後から検索・提示できる状態にしてください。電子管理なら、担当者だけがアクセスできる端末に保存したままにせず、保存先、バックアップ、退職・引継ぎ時の扱いも決めておくと安心です。
国への定期提出は原則必要ありませんが、監査等で求められた場合の提出や、真荷主からの閲覧・謄写請求への対応があります。ソフトを導入しただけで法令遵守が自動的に保証されるわけではありません。
取引先が固定でも、毎回記録不要とは限らない
受注時点で、元請から実運送者までの委託関係と実運送者・請負階層が明らかな場合には、運送ごとの記録を要しない扱いがあります。ただし、最初の記録は必要で、委託関係や実運送者が変わった運送は記録します。最初の記録から法定保存期間の1年を過ぎた後にも、改めて記録する取扱いがあります。
「いつもの数社へ頼む」だけで、受注時には実運送者が分からない場合は、この省略の前提を満たしません。適用したい場合は、固定契約と実際の配車方法を運輸局・運輸支局の貨物担当窓口へ示して確認してください。
未作成なら一律20日車停止、ではない
作成・保存義務違反は行政処分等の対象となる可能性があります。ただし、「一件でも不備があれば、初回から必ず20日車停止」とは言えません。違反内容・件数、過去の処分等と、該当する処分基準を照合する必要があります。
通知の不備が関係する場合も、その原因や各事業者が把握できた情報を区別して確認します。処分の有無を自己判断するより、欠落を特定して正確に補い、再発を防ぐ連絡・確認手順を整えることが先です。国土交通省の行政処分等の基準を確認する際も、管理簿のどの違反に当たるかを分けて見ます。
書面交付・委託次数と合わせて、契約から記録まで整える
管理簿は「実際に誰が運んだか」の記録です。運送内容・対価等を契約時に明確にする書面交付は、これとは別の義務です。管理簿を作っただけで契約書面の確認が済むわけではありません。
書面では運送と荷役等の役務、その対価など必要事項を確認します。電子メール等による交付も、相手方の承諾など所定の条件に沿って行います。管理簿の1.5トン基準を、書面交付にもそのまま当てはめないでください。
2026年4月からは、元請をゼロ次として、再委託を二段階までに制限する努力義務も設けられました。これは三次以降の契約がすべて自動的に無効になるという意味ではありません。発注条件や再委託の把握方法を見直し、一次請けにも協力を求める必要があります。
施行内容は国土交通省のトラック適正化二法の案内で確認できます。取適法の支払ルール等は、取引内容や事業者規模などの適用条件を別途確認する制度です。管理簿の対象だから、すべての取引に同じ支払規制がかかるとは限りません。
許可の更新制度と混同している場合は、運送業の5年更新制の施行状況も確認してください。現在必要な記録を、将来の更新開始まで待ってよいわけではありません。
まず一つの運送依頼で、情報がつながるか試す
直近の依頼書、基本契約、配車表、委託先からの通知、作成済みの管理簿を一件分そろえてください。「誰が元請か」「重量判断は何を根拠にしたか」「実運送者まで追えるか」「記録を取り出せるか」を順番に点検すると、社内の不足を具体化できます。
当事務所へは、運送契約の流れや既存の書類をお知らせください。必要資料の整理や役所への事前相談を通じて、確認すべき事項を整理します。許認可に関する申請書類の作成・提出、補正対応など、依頼する業務の範囲は相談時に確認できます。
どこから直せばよいか分からない段階でも、実際の一件を起点に相談できます。処分回避や取引継続を保証するものではありませんが、確認漏れを整理し、次に誰へ何を確認するかを明らかにするお手伝いをします。
