認証工場を開く前に、扱う車両と作業の範囲、作業場、従業員の資格、設備を一緒に確認しましょう。自動車特定整備事業の認証は、事業場ごとに受けるものです。「分解整備のみ」「電子制御装置整備のみ」「両方」で必要な条件が異なります。
とくに注意したいのは、対象となるバンパーや窓ガラスの脱着です。エーミングだけを外注しても、自社で行う脱着作業が特定整備に該当する場合、認証が不要になるわけではありません。
認証が必要になる作業と、最初に決める事業範囲
特定整備には、エンジンやブレーキなどの一定の取り外しを伴う「分解整備」と、自動ブレーキ・レーンキープ機能等に関係する「電子制御装置整備」があります。車種名だけで判断せず、装備、整備要領、実際に行う作業を確認します。
- 対象となる前方監視用カメラ・レーダー等の取り外し、取り付け位置・角度の変更、機能調整。
- そのセンサーが取り付けられた車体前部や窓ガラスの脱着など、対象装置の作動に影響を及ぼす作業。
- 自動運行装置の取り外しや、その作動に影響を及ぼすおそれのある整備・改造。
すべてのバンパー交換やガラス交換が電子制御装置整備になるわけではありません。対象装置の有無と作業内容を、国土交通省の特定整備制度・対象車両情報で確認してください。既存の分解整備認証だけで電子制御装置整備までできる、とも判断しないでください。
外注する場合も、自社の作業範囲を分けて確認
認証を受けていない事業者が、該当する特定整備の全工程を認証工場へ依頼する方法と、自社で脱着をしてエーミングだけ依頼する方法は別です。後者では、自社が行う特定整備についても認証が必要です。
認証工場の責任・管理の下、その工場内で専門業者が作業する「構内外注」という扱いもありますが、責任分担、作業管理、書面、記録簿の扱いを明確にする必要があります。単に外注契約を結べば、どこでも無認証で作業できる制度ではありません。国土交通省の特定整備に関する FAQを確認し、計画した作業形態を管轄の運輸支局へ相談しましょう。
作業場の広さ・床・天井を確認する
必要な寸法は全国一律の「奥行9~11m」ではありません。道路運送車両法施行規則第57条・別表第四で、車種区分と整備の種類ごとに基準が定められています。
例えば、別表第四の普通乗用車等の区分に当たる電子制御装置点検整備作業場は、間口2.5m以上・奥行6m以上、そのうち屋内部分は間口2.5m以上・奥行3m以上が基準です。軽自動車では間口2m以上・奥行5.5m以上、屋内部分は間口2m以上・奥行4m以上となります。大型車等は別の寸法です。車両置場や、分解整備も行う場合の作業場の基準も別に確認します。
ただし、法令上の最低寸法を満たすだけで、すべての車種のエーミングができるとは限りません。車両とターゲットの距離、周囲の空間、照明など、メーカーの整備要領に必要な条件を満たす実作業スペースを確保してください。
- 床は平滑に舗装され、対象作業に適した状態か。
- 天井高は対象車両の整備・点検に十分か。
- 柱、リフト、棚、駐車車両が有効な作業範囲を妨げないか。
- 屋内部分と屋外部分の寸法を区別し、図面と現地が一致しているか。
床の許容差を全国一律に「10mm」と断定したり、屋外部分はすべて認められないと判断したりせず、認証基準とメーカーの作業条件の両方で確認します。
用途地域・建物の適法性は、契約や増築の前に
運輸支局の認証だけで、建築・都市計画上の制限がなくなるわけではありません。所在地、用途地域、作業場の面積、使用する機械、既存建物の用途・増改築歴を整理し、自治体の建築指導・都市計画担当にも確認しましょう。
建築基準法別表第二では、原動機を使用する工場の面積制限について、自動車修理工場に準住居地域150㎡、商業地域300㎡までの例外が設けられています。ただし、機械や作業内容など別の制限もあるため、面積以内なら必ず営業できるという意味ではありません。「住居系はすべて50㎡まで」「商業地域なら無制限」とは扱えません。
市街化調整区域も一律に可否を決めず、開発・建築許可等の条件を確認します。建築当時は適法だった既存不適格と、無確認増築などの違反は区別が必要です。確認済証・検査済証・図面等の有無を調べ、不明点は建築士と自治体へ確認してから工事や賃貸契約を進めてください。
洗車・排水設備と環境対策
洗車や下回り洗浄で油分・泥を含む排水が出る場合、油水分離槽などの処理設備が重要です。必要な設備・容量・届出は、排水先、洗浄設備、作業規模、地域の条例や排水基準で確認します。「洗車をしない工場も全国一律に同じ油水分離槽が必須」とは断定できません。
既存物件でも、処理設備の容量、破損・詰まり、清掃・汚泥処分の方法、公共下水道や河川への接続先を確認しましょう。自治体による特定施設・除害施設の案内の例も参考になりますが、実際の計画は所在地の環境・下水道担当へ確認してください。騒音、振動、塗装、廃油の管理も別途必要です。
従業員と整備主任者の資格
事業場には、特定整備に従事する従業員が2人以上必要です。また、所定の整備士資格を持つ人が従業員数の4分の1以上必要で、端数は切り上げます。整備主任者として選任できる資格は、認証の範囲によって異なります。
- 分解整備のみ:一級または二級の整備士が基本です。原動機の分解整備を対象とする場合、二級シャシ整備士は除かれます。
- 電子制御装置整備のみ:一級整備士(二輪を除く)、または一級二輪・二級・車体・電気装置整備士で所定の電子制御装置整備講習を修了した人が対象です。
- 両方を行う場合:分解整備と電子制御装置整備の両方に対応した資格・講習条件を満たす人が必要です。車体整備士の資格と講習だけで、両方の主任者になれるわけではありません。
「一級二輪なら講習不要」「車体整備士は講習を受けても電子制御装置整備の主任者になれない」は誤りです。資格証、講習修了の証明、従事する作業範囲をそろえて確認してください。電子制御装置整備のみの事業場では、資格者割合の計算に車体・電気装置整備士も含まれます。
実務経験の短縮と、人員確保の計画
整備士試験の実務経験要件は、2025年7月8日の制度改正で短縮されています。例えば、実務経験による二級受験は三級合格後3年以上から2年以上、三級受験は1年以上から6か月以上に見直されました。学歴・修了課程等で異なるため、国土交通省の受験資格一覧を確認します。
勤務先の業種名や在籍年数だけで、必要な実務経験に算入できると判断しないでください。実際の整備作業と証明方法を確認します。外国人を採用する場合も、在留資格上の就労範囲と日本の整備士資格・認証上の配置要件は別に確認が必要です。資格を持つ人の名義だけを借りる方法は採れません。
整備用スキャンツールとOBD検査用機器は分けて選ぶ
電子制御装置整備の認証では、基準に適合する整備用スキャンツール、水準器など、対象業務に必要な設備を確認します。整備用スキャンツールは少なくとも1車種以上の点検・整備に対応することが要件ですが、実際に受注する車両への対応は別途必要です。
日本自動車機械器具工業会の整備用スキャンツールリストは、メーカー自身が基準適合性を確認した機種の一覧です。整備用機器について、架空の番号形式や「JASEA認定番号がない機器は一律不可」という説明で選ばないでください。OBD検査に使う検査用スキャンツールの要件とは区別します。
購入前には、対応車種、エーミング機能、必要なソフトウェア、更新料金、接続環境、メーカーのサポートを確認しましょう。中古・輸入機器も価格だけで判断せず、必要な機能と使用条件を確認します。
OBD検査と認証工場・指定工場の違い
OBD検査は対象車の車検で行う検査です。国産車は2021年10月1日以降、輸入車は2022年10月1日以降の新型車が対象となり、大型特殊自動車・二輪自動車は除かれます。検査は国産車2024年10月、輸入車2025年10月から始まっています。対象車でも型式指定からの期間等による検査不要の条件があるため、車検証と自動車技術総合機構のOBD検査案内で確認します。
特定整備の認証を取得するだけで、保安基準適合証を交付できる指定工場になるわけではありません。認証工場が行うOBD確認と、指定工場等でのOBD検査も区別が必要です。OBD検査システムでは「特定DTC照会アプリ」等を使用します。
ターゲットや作業場の共同利用
ターゲット等を必要なときに利用できる体制や、条件に合う作業場の共同利用を検討できる場合があります。ただし、紙の契約だけで設備要件を満たすわけではありません。利用場所、移動距離、予約・利用時間、責任分担、整備情報の入手方法を具体化し、離れ作業場としての扱いも含めて事前に相談します。
整備情報はFAINESやメーカーの整備要領等から、対象車両について必要な情報を入手できる体制を整えます。2025年には分解整備の機器要件も改正されているため、古い工具一覧をそのまま購入リストにせず、現行の施行規則別表第五と管轄の案内を照合してください。
申請までの順序と費用の確認
- 対象を決める:車種、装置、分解整備・電子制御装置整備の範囲、自社施工・外注の区分を整理します。
- 事前相談:運輸支局へ配置図・寸法・資格・設備案を持参し、建築や排水の担当窓口にも確認します。
- 人員・設備を整える:資格・講習、従業員配置、作業機器、整備情報、建物の使用権限等を確認します。
- 申請書類を準備:認証申請書、図面、設備・従業員の資料、欠格事由に関する書面、本人・法人を確認する書類等を、管轄の様式で整えます。
- 審査・現地確認に対応:図面と現地の相違を解消し、認証後に認められた範囲で営業を開始します。
京都運輸支局の認証案内では、認証範囲別の説明と申請書類が案内されています。所在地を管轄する窓口の最新様式を使用してください。審査期間だけでなく、物件・講習・設備の準備期間や補正に要する期間も見込みます。
資金計画では、建物工事、機器、講習、整備情報・ソフトウェアの継続費用、書類取得費、外部へ依頼する場合の報酬を分けて見積もりましょう。認証申請に「登録免許税9万円」が一律に必要という前提では計画しないでください。公的な納付費用は手続の種類と管轄の案内で確認します。補助金も、募集の有無、対象設備、交付決定前の発注・支払の扱いなどを確認し、採択や受給を前提に購入しないことが大切です。
取得後の記録と、無認証作業を防ぐ管理
道路運送車両法第91条では、特定整備記録簿の記載、使用者への写しの交付、記載日から2年間の保存が定められています。認証のない作業や認証範囲外の作業を受けないよう、入庫時に装備と作業内容を確認し、外注時も責任・記録の担当を明確にします。
認証を受けずに特定整備事業を経営した場合は、同法第109条により50万円以下の罰金の対象です。事故の賠償責任や保険金の支払いは、作業内容、事故原因、契約条件等によって判断されるため、「必ず保険が出ない」「必ず高額賠償になる」と一律には断定できません。受託車両・整備作業の補償範囲は保険会社へ確認してください。
認証取得について相談する前に
物件の住所・平面図、現在の認証範囲、予定する作業、対象車両、従業員の資格、保有工具の一覧があると、不足している条件を整理しやすくなります。物件を契約した後や設備を購入した後では修正が難しいこともあるため、事前確認から進めましょう。
よくある質問
特定整備認証は二級整備士がいれば取得できますか?
資格者一人だけでは足りません。従業員は二人以上必要で、資格者割合や施設・設備等の基準もあります。二級整備士が電子制御装置整備の主任者になるには所定の講習修了が必要です。
エーミング作業場にはどれくらいの広さが必要ですか?
車種区分ごとの法定寸法と、メーカーの整備要領に必要な作業空間の両方を満たします。屋内部分の基準や車両置場も確認し、全国一律の奥行や面積で判断しません。
オイルトラップがない既存工場でも認証を検討できますか?
排水の発生状況・排水先・設備・地域の基準によって必要な処理設備が異なります。洗車等を行う計画も含め、所在地の環境・下水道担当と運輸支局へ事前に確認してください。
スキャンツールはどんな機種を選べばよいですか?
整備用の基準適合性と、対象車種・作業への対応を確認します。OBD検査用機器の認定とは区別し、検査やOBD確認にも使用する場合は、その要件も別途確認します。
