
自分のゴミを捨てるのに許可なんていらないだろう」…その安易な考えが、警察の検問で「5年以下の懲役」という悪夢に変わります。

開業20年で産廃許可5000件の実績 行政書士の小野馨です。
今回は【産業廃棄物の自社運搬】というテーマで、現場の痛い教訓を交えて熱くお話しします。
「産廃の許可を取るには15万円以上かかるし、講習会も面倒だ。
少量だし、自分の軽トラで処理場まで運んでしまおう。」
創業間もない経営者なら、経費削減のためにそう考えるのは当然です。
実際、法律上も「自社運搬」に許可は不要です。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
もしあなたが、車体に「ある表示」をせず、助手席に「ある書類」を積まずに公道を走っていたらどうなるか?
それは「自社運搬」ではなく、「不法投棄の予備軍」として警察に扱われます。
この記事では、あなたが無知ゆえに犯罪者にならないよう、法律が定める「表示」と「書類」の絶対ルールを、行政書士の視点で徹底解説します。
▼ この記事のポイント ▼
- ✅ 自社運搬は許可不要だが「基準」違反は逮捕
- ✅ 100均の紙はNG!警察も見る「5cm」の表示ルール
- ✅ 検問対策!車に積むべき「5つの記載事項」
- ✅ 9割が誤解している「下請け運搬」の恐怖
※なお、会社運営の法的リスクや手続きの全体像を知りたい方は、
『1番わかる電子定款の教科書(トップページ)』
をブックマークして、経営の辞書代わりにお使いください。
産業廃棄物の自社運搬は「許可不要」だが「逮捕リスク」あり
結論から言います。
あなたが排出した産業廃棄物を、あなた自身が運搬する場合、「産業廃棄物収集運搬業許可」は不要です。
これは廃棄物処理法 第11条(事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない)に基づく権利であり、義務でもあります。
しかし、「許可がいらない」ことと、「好き勝手に運んでいい」ことは全く別の話です。
ここを勘違いして、「俺のゴミだから俺の勝手だろ!」と無防備なトラックで走っていると、人生が詰みます。
私のクライアントである内装業のA社長の話をしましょう。
彼は開業当初、現場で出た木くずを自分のトラックに積み、意気揚々と処理場へ向かっていました。
しかし、途中で警察の検問に止められます。
「運転手さん、荷台のゴミは何? 許可証持ってる? 表示は?」
A社長は「自分のゴミだから許可はいらない!」と主張しましたが、警察官は許してくれませんでした。
結果的に、彼は長時間拘束され、得意先への到着が遅れ、信用を失いかけました。
なぜなら、「自社運搬であることの証明」が何一つできていなかったからです。
まずは、許可業者と自社運搬の違いを明確に理解してください。
| 項目 | 許可業者(委託) | 自社運搬 |
|---|---|---|
| 運べるゴミ | 他人のゴミ (お金を貰って運ぶ) |
自分のゴミのみ (排出事業者が自分) |
| 許可証 | 必要(取得15万円〜) | 不要 |
| 車両表示 | 義務あり | 義務あり (これを怠ると違反) |
| 書類携帯 | 許可証の写し | 自社運搬用の書面 |
行政書士 小野馨の「ここだけの話」
警察や環境Gメンは、トラックを見れば「プロ(許可業者)」か「素人(自社運搬)」か一瞬で見抜きます。プロは必ず車体に許可番号が入っているからです。
何も書いていないトラックに産廃が積まれていれば、「お、不法投棄か?」と目を光らせるのは当然の職務なのです。
💡 3秒でわかるまとめ:
- 自分のゴミを運ぶのに許可は不要。
- ただし「表示」と「書類」がないと警察に止められる。
- 「許可不要=ルール無用」ではないことを肝に銘じること。
誰ができる?「排出事業者」の定義を間違えると即アウト
自社運搬を行うための大前提として、あなたが「排出事業者」でなければなりません。
「何を当たり前のことを」と思うかもしれませんが、建設業界ではここが一番の落とし穴です。
ポイント
法律上、建設工事に伴う廃棄物の「排出事業者」は、原則として「元請業者(発注者から直接請け負った者)」と定義されています。
つまり、あなたが下請け(孫請け)の立場である場合、現場で出たゴミは「元請けのゴミ」であり、「あなたのゴミ」ではありません。
この状態であなたが自分のトラックでゴミを運ぶと、「他人のゴミを無許可で運んだ」ことになり、廃棄物処理法違反(無許可営業)で逮捕されます。
「元請けに頼まれたから」「いつもやっているから」という言い訳は通用しません。
下請けが運搬できる例外ケースもありますが、基本的には「自社運搬ができるのは元請けだけ」と覚えておいてください。
もし下請けの立場で運搬しなければならないなら、収集運搬業の許可を取るか、元請け自身に運んでもらうしかありません。
この「誰のゴミか」という定義を甘く見ると、親切心で運んであげた結果、前科がつくことになります。
[画像指示: 元請けと下請けのゴミの帰属関係を示す図解 (alt: "産業廃棄物 排出事業者 元請け 下請け 自社運搬")]
【図解】警察もチェックする「車両表示」の絶対ルール
ポイント
自社運搬を行う車両には、外から見てひと目で「産業廃棄物を運んでいる」とわかる表示義務があります。
これは環境省のガイドラインで厳格に定められており、ガムテープにマジックで書いたような簡易なものは認められません。
以下の3つの基準を、1ミリの狂いもなく守ってください。
1. 表示事項:
「産業廃棄物収集運搬車」という文字
「氏名または名称」(会社名や屋号)
2. 文字サイズ:
「産業廃棄物収集運搬車」の文字:高さ5cm以上
「氏名または名称」の文字:高さ3cm以上
3. 表示方法:
車体の両側面(左右のドアなど)に見やすく表示すること
マグネットシートやステッカーなど、走行中に落ちない耐久性のあるものを使用すること(紙を貼っただけはNG)
よく現場で見
かけるのが、文字が小さすぎて読めないケースや、会社名しか書いていないケースです。
これらはすべて「表示義務違反」となり、改善命令の対象となります。
ホームセンターやネット通販で「産廃用マグネット」が2,000円程度で売られています。
自分でカッティングシートで作るのも良いですが、サイズ規定(5cm以上)だけは定規を当てて確認してください。
たった数千円のマグネットをケチったせいで、検問で数時間のロスをするのは、経営者として最大の損失です。
[画像指示: トラックの側面に貼るマグネットシートのサイズ規定図解 (alt: "産業廃棄物収集運搬車 表示 マグネット サイズ 5cm")]
忘れると違反!検問で提示すべき「携帯書類」の記載事項
「マグネットは貼った。これで完璧だ。」
そう思って出発しようとしたあなた、ちょっと待ってください。
もし警察に止められた時、「私は自社運搬をしています」と口頭で説明しても信じてもらえません。
参考
その正当性を証明するための「書面」を携帯する義務があります(施行規則第7条の2)。
許可業者は「許可証の写し」を積んでいますが、許可を持たないあなたは、以下の5項目を記載した書面を自分で作成し、備え付けておく必要があります。
自社運搬時の携帯書面・必須5項目
- 氏名または名称・住所(あなたの会社情報)
- 運搬する産業廃棄物の種類(例:廃プラスチック類、金属くず、がれき類)
- 運搬する産業廃棄物の数量(例:2立米、軽トラ1台分など)
- 運搬する日(年月日)
- 運搬先の名称・所在地・連絡先(持ち込み先の処分場など)
これらは特別な様式である必要はありません。
ポイント
社内日報のような形式でも構いませんし、パソコンで作ったA4用紙でもOKです。
ただし、毎回、その日の状況に合わせて記入されていることが必要です。
「いつも同じ場所に行くから」といって、日付が空欄だったり、数量が適当だったりすると、書面不備とみなされます。
賢い経営者は、この5項目を網羅したテンプレートを車検証入れに常備し、出発前にサッと記入する習慣をつけています。
この「紙切れ1枚」があるか無いかで、あなたは「不法投棄容疑者」から「適法な事業者」へと扱いが変わるのです。
絶対やってはいけない「自社運搬」の3つのタブー
ここまで、自社運搬に必要な「表示」と「書類」について解説しました。
しかし、形式さえ整えれば何をしても許されるわけではありません。
実務の現場では、書類は完璧なのに「行為そのもの」が違法で検挙されるケースが後を絶ちません。
ここでは、特に建設業やリフォーム業の方が陥りやすい、絶対にやってはいけない3つのタブーを解説します。
これを知らずに走ることは、目隠しをして高速道路を走るのと同じくらい危険です。
以前、私が相談を受けた解体業のB社長の事例です。
彼は「元請けから処分費をもらっているから」という理由で、下請け現場のゴミを自社トラックで運んでいました。
マグネットも貼り、書類も持っていました。
しかし、警察の判断は「無許可営業」でした。
なぜなら、彼は「自分のゴミ」ではなく、「元請けのゴミを代行して運搬(=委託)」していたからです。
結果、B社長は書類送検され、建設業許可の更新にも大きな支障が出ました。
「知らなかった」では済まされない、法的な境界線をここで明確にしましょう。
💡 3秒でわかるまとめ:
- 形式だけ整えても、実態が「委託」なら逮捕される。
- 下請けが運搬するのは原則NG。
- 飛散防止措置を怠ると、運搬自体が適法でも捕まる。
「下請け業者のゴミ」を運ぶと無許可営業で逮捕
前編でも少し触れましたが、この点は何度強調しても足りないほど重要です。
産業廃棄物の処理責任は、原則として「排出事業者(元請け)」にあります。
もしあなたが下請けの立場で工事に入り、そこで出た廃棄物をあなたのトラックで運搬する場合、それは「自社運搬」にはなりません。
ココがポイント
法律上は「元請けから運搬業務を委託された」とみなされます。
他人の依頼を受けて産業廃棄物を運ぶには、「産業廃棄物収集運搬業許可」が絶対に必要です。
これを持たずに運べば、廃棄物処理法 第25条により、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科」という極めて重い刑罰が科されます。
「元請けに頼まれたから断れなかった」
「処分費込みで請け負っているから」
これらは現場の慣習としてはよくある話ですが、法律の前では無力です。
注意ポイント
警察は契約書(請負契約か委託契約か)と、マニフェストの流れを徹底的に調べます。
ただし、例外として「建設廃棄物の処理委託契約の特例」などもありますが、これには「元請けが運搬先に立ち会う」「両者で書面を交わす」などの厳格な条件が必要です。
生半可な知識でこの特例を使おうとすると火傷します。
下請けの立場で運ぶなら、許可を取るのが唯一にして最強の防衛策なのです。
軽トラでもOK?車両基準と「飛散防止」の義務
「自社運搬に使う車は、黒ナンバー(営業用)じゃないとダメですか?」
という質問をよく受けますが、これについては**白ナンバー(自家用車)で問題ありません。**
もちろん、軽トラックやワンボックスカーでもOKです。
しかし、どんな車でも良いわけではありません。
廃棄物処理法施行規則 第2条の2により、運搬車には以下の措置が義務付けられています。
1. 飛散・流出防止措置:
運搬中にゴミが飛び散ったり、汚水が漏れたりしないよう対策すること。
具体的には、シート掛け、ロープ固定、密閉容器の使用など。
2. 悪臭防止措置:
悪臭が漏れないような措置を講じること。
特に警察が見ているのは「シート掛け」です。
平ボディのトラックで、コンパネや石膏ボードを山積みにし、シートも掛けずに走行している車両を見かけますが、これは「飛散のおそれあり」として即停止を求められます。
「近くだから大丈夫」
「重いから飛ばない」
これは通用しません。
走行風で破片が飛べば、後続車の事故につながる危険な行為です。
ココに注意
自社運搬であっても、許可業者と同レベルの安全管理が求められます。
ホームセンターで売っている緑色のトラックシートとゴムバンドは、あなたの会社を守るための最低限の装備だと心得てください。
マニフェスト(管理票)は自社運搬でも必要なのか?
最後に、書類の中でも最もややこしい「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」についてです。
「自社運搬なら、マニフェストはいらないのでは?」と思っている方が多いですが、これも大きな間違いです。
ポイント
結論として、自社運搬であっても、処分場に持ち込む際にはマニフェストが必要です。
廃棄物処理法 第12条の3は、産業廃棄物を排出する事業者が、その運搬や処分を「他人」に委託する場合にマニフェスト交付義務が発生すると定めています。
「あれ? 自分(自社)で運ぶなら『他人』じゃないから不要では?」
鋭い指摘です。
確かに、自社で「焼却・破砕」まで行う(自社処分)ならマニフェストは不要です。
しかし、皆さんの多くは、自分で運んだゴミを「他人の処分場」に持ち込むはずです。
この「処分を他人に頼む」時点で、マニフェストが必要になるのです。
この場合、運搬担当者の欄には「自社運搬(自社名)」を記入し、処分業者の欄には「搬入先の業者名」を記入します。
そして、処分場に到着したらマニフェストを渡し、正しく処分されたことを確認して「E票」まで返送してもらう。
これが一連の流れです。
最近では電子マニフェストの普及も進んでいますが、紙マニフェストを使う場合は、7枚綴りの伝票を正しく管理し、5年間保存する義務があります。
「たかがゴミ捨て」と思わず、この紙切れ1枚が「適正処理の証明書」となることを忘れないでください。
あなたが得られる未来:堂々と現場を走れる「最強の防弾チョッキ」
ここまで、少し厳しい現実や罰則の話をしてきました。
しかし、これらを全てクリアしたあなたには、素晴らしい未来が待っています。
想像してみてください。
現場から出る廃棄物を乗せたトラックで、警察の検問に遭遇した時のことを。
他の業者が「ヤバい、許可証がない」「シートが緩んでる」と冷や汗をかいて目を逸らす中、あなたは堂々としていられます。
車体には規定通りのマグネットが輝き、助手席には完璧に記載された書面とマニフェストが揃っています。
警察官:「運転手さん、産廃の運搬ですか? 書類見せてもらえます?」
あなた:「はい、どうぞ。これが法定記載事項を網羅した書面です。マニフェストはこちらです。」
警察官:「……完璧ですね。ご協力ありがとうございました。どうぞ。」
この「何も恐れることがない状態」こそが、経営者としての真の自由です。
正しい知識とわずかな準備コストで、あなたは法的なリスクをゼロにし、顧客からの信頼も勝ち取ることができるのです。
さあ、今すぐホームセンターへ行き、マグネットとファイルを揃えましょう。
それが、あなたの会社を次のステージへと進める第一歩です。
産業廃棄物の自社運搬に関するよくある質問
Q. 軽トラックにベニヤ板を立てて、あおりを高くして運んでもいいですか?
A. 基本的にはNGとなる可能性が高いです。道路交通法上の「積載制限」や「構造変更」の問題に加え、強度が不足していると判断されれば、飛散防止義務違反を問われます。改造車検を通していない簡易的な枠組みでの過積載は、警察の取り締まり対象です。
Q. 知り合いの会社のゴミを「タダ(無料)」で運んであげるなら許可はいりませんか?
A. お金を貰わなければ許可不要、というのは誤解です。廃棄物処理法では「業として」行う場合に許可が必要ですが、反復継続の意思があれば無料でも「業」とみなされる判例があります。トラブルの元ですので、他人のゴミは運ばないのが鉄則です。
Q. 書類の携帯を忘れてしまいました。後でFAXすれば許してもらえますか?
A. 警察官の裁量によりますが、法律上は「備え付け義務違反」となり、即時の指導や処罰の対象となり得ます。免許証不携帯と同じく、「今持っていない」こと自体が違反です。