産業廃棄物許可の基礎知識

【行政書士監修】産業廃棄物収集運搬業許可を自分で申請する方法!手順と電子申請マニュアル

行政書士 小野馨
こんにちは。行政書士の小野馨です。

「行政書士に頼むと10万円以上かかるから、なんとか自分で申請してコストを浮かせたい」

この記事にたどり着いたあなたは、きっとそう考えているのではないでしょうか。

あるいは、「会社の指示で担当になったけど、何から手をつけていいかわからない」という実務担当者の方かもしれませんね。

結論から申し上げますと、産業廃棄物収集運搬業許可の申請は、ポイントさえ押さえれば自分で行うことも十分に可能です。

もちろん簡単な手続きではありませんが、建設業許可などに比べれば書類の複雑さは低く、やる気と時間があればクリアできるレベルです。

特に最近は電子申請が普及し、自宅やオフィスから手続きができるようになったため、ハードルは以前より下がっています。

この記事では、普段プロとして業務を行っている私が、「もし私が自分の会社の許可を自分で取るならこうする」という視点で、最短ルートで許可を取得するための実践的な手順を包み隠さず公開します。

単なる制度解説ではなく、現場で使える「マニュアル」としてご活用ください。

  • 積替え保管なしなら「自分」でできる!申請準備と段取りのすべて
  • 補正(やり直し)を避けるための「写真撮影」と「書類作成」のプロのコツ
  • パソコン画面の前で焦らないための「電子申請」完全攻略ガイド
  • 許可証が届いてから慌てないためのマニフェスト運用準備

産業廃棄物収集運搬業許可を「自分で」申請するための準備と段取り

「よし、やるぞ!」といきなり申請書を書き始めるのは失敗の元です。許可申請は「段取り8割」。まずはゴールまでの地図を広げ、必要な道具を揃えるところから始めましょう。

積替え保管なし(直行)なら自社申請も十分可能

まず大前提として、あなたが取ろうとしている許可が「積替え保管なし(直行)」であれば、自社申請は十分に現実的な選択肢です。

産業廃棄物収集運搬業の許可には、「積替え保管なし」と「積替え保管あり」の2種類が存在しますが、この二つは申請の難易度が天と地ほど違います。

「積替え保管なし」は、排出事業者(建設現場や工場など)から廃棄物を回収し、トラックに積んだまま、自社の倉庫や駐車場に一切立ち寄ることなく、そのまま処分場へ直行して荷降ろしをするスタイルです。

この形態の最大のメリットは、「設備要件が軽い」ことです。

基本的には運搬車両と、その車両を停める駐車場さえ確保できていれば要件をクリアできます。

複雑な図面の作成や、周辺住民への説明会、関係法令(都市計画法や建築基準法など)の適合証明といった、高度な専門知識を要するプロセスがほとんど不要なため、私たちのような専門家でなくとも、手引きを読み込めば十分に書類を作成することが可能です。

「積替え保管あり」の場合はプロへ

逆に、「一度倉庫に持ち帰って保管したい(積替え保管あり)」場合は、難易度が桁違いに跳ね上がります。保管施設の床をコンクリートにし、排水溝を設け、壁で囲うなどの設備投資が必要になるほか、用途地域の確認や消防法、各自治体の条例に基づく事前協議など、クリアすべきハードルが山のようにあります。この場合、素人が手を出して失敗すると、設備投資が無駄になるリスクすらあります。無理せず専門家に相談することをお勧めします。

なお、許可の要件(講習会、経理的基礎、欠格要件など)の詳しい解説については、以下の記事で徹底解説しています。「そもそも条件を満たしているかな?」と不安な方は、まずこちらをチェックしてみてください。

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産業廃棄物収集運搬許可の取り方!要件や費用を行政書士が解説

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講習会の予約は「場所」より「日程」優先で確保する

自分で申請する場合、スケジュール管理はすべて自己責任です。

その中で最大のボトルネックになり、多くのチャレンジャーが挫折するポイントが「講習会の予約」です。

申請書を提出するには、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する「産業廃棄物収集運搬課程(新規)」の講習会を修了し、合格証(修了証)を添付することが絶対条件です。

しかし、この講習会、人気コンサートのチケット並みに予約が取れません。

プロからのアドバイスは一つ。

「近くの会場を探すな、最短の日程を探せ」です。

例えば、「東京の会社だから東京会場で受けよう」と思って日程表を見ると、3ヶ月先まで「満席」なんてことはザラにあります。

「空くまで待とう」と悠長に構えていると、いつまで経っても申請できず、ビジネスチャンスを逃してしまいます。

実は、JWセンターの修了証は全国共通で有効なんです。

北海道で受けても、沖縄で受けても、東京都への申請に使えます。

ですから、地元の会場が埋まっていたら、迷わず近隣の県(埼玉、千葉、神奈川など)をチェックし、それでもダメなら新幹線で行ける範囲の大阪や名古屋、福岡なども視野に入れてください。

「書類は完璧なのに、修了証がないから半年待ち」という生殺し状態だけは絶対に避けましょう。

また、最近は一部でオンライン講義+会場試験のハイブリッド形式も増えています。

Webサイトは毎日更新されるので、こまめにチェックして、空きが出たら即座にクレジットカード決済で予約を確定させるスピード感が重要です。

(出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター『講習会・研修会開催日程』)

申請方法は「電子申請」か「窓口」かを確認する

次に確認すべきは、申請先の自治体が「どんな方法」で受け付けているかです。

現在はデジタル化の過渡期であり、自治体によって対応がバラバラです。

ここを間違えると、せっかく準備したデータが無駄になったり、二度手間になったりします。

申請方法 特徴と注意点
電子申請 東京都、大阪府、広島県、愛知県などで導入が進んでいます。原則として24時間365日申請可能で、手数料もPay-easy(ペイジー)やクレジットカードで納付できます。窓口に行く必要がなく、補正指示もメールやシステム上で来るため、非常に効率的です。ただし、GビズIDや独自のアカウント登録が事前に必要になるケースが多いです。
窓口申請(予約制) 多くの県でまだ主流の方法です。事前に電話で予約を取り、平日の日中に正本・副本の書類一式を持参します。その場で審査官と対面で書類チェックが行われるため、軽微なミスならその場で訂正印を押して直せるメリットもありますが、移動時間と待ち時間がかかります。
郵送申請 コロナ禍で増えた方式です。書類をレターパックなどで送ります。対面の手間はありませんが、到着確認や補正のやり取りが電話やFAXになり、審査完了までに通常より時間がかかる傾向があります。

「せっかく電子データで作ったのに、実は紙の持参しか認めていなかった」「窓口に行ったら『今は完全予約制です』と門前払いされた」なんてことにならないよう、必ず管轄自治体のホームページで最新の「申請の手引き」を確認してください。特に電子申請の場合は、システムのアカウント発行に数日かかることもあるので、早めの登録が必要です。

経理的基礎に不安がある場合の診断書手配フロー

直近の決算が赤字だったり、債務超過だったりする場合、追加資料として「中小企業診断士等の診断書」が必要になります。

ここで注意していただきたいのは、「この診断書は自分で書くことはできない」という点です。

どんなに社長が経営分析に長けていても、第三者である公的資格者(中小企業診断士や公認会計士)が作成し、署名したものでなければ、行政は認めてくれません。

もし経理的基礎に不安がある場合は、以下のフローで手配を進めてください。

  1. 診断士を探す:「産業廃棄物 診断書 地域名」などでネット検索するか、地元の商工会議所に相談して紹介してもらいます。産廃業務に慣れている先生を選ぶのがコツです。
  2. 見積もりを取る:報酬は事務所によって異なりますが、一般的に5万円〜10万円程度が相場です。安すぎると質が低く審査に通らないリスクがあり、高すぎても負担になります。
  3. 資料を渡す:直近3期分の決算書(勘定科目内訳書含む)や、今後の受注見込み、コスト削減計画などのメモを渡します。
  4. 完成を待つ:通常、ヒアリングから完成まで1〜2週間かかります。

この「専門家探しの時間」と「作成期間」をスケジュールに入れておかないと、申請日がズルズルと遅れてしまいます。

赤字決算の場合は、講習会の予約と同時に診断士探しもスタートさせるのが、スムーズな申請の鉄則です。

欠格要件のチェックは「誓約書」への署名前に

申請書類の中に「誓約書」というものがあります。

「私(および法人の役員全員)は、廃棄物処理法が定める欠格要件(前科や暴力団関係など)に該当しません」と行政に対して誓う、非常に重みのある書類です。

自分で申請する場合、役員全員にハンコをもらいに回ると思いますが、その時に「ハンコください」だけで済ませてはいけません。

必ず一人ひとりの目を見て、「過去5年以内に、警察のお世話になったことはないですか?」「執行猶予中ではないですか?」と念押し確認してください。

なぜここまで言うかというと、本人が「大したことない」と思っていても、法律上はアウトなケースが多いからです。

例えば、交通事故で「禁錮刑(執行猶予付き)」になった場合や、酒に酔って暴れて「傷害罪で罰金刑」になった場合などが該当します。

もし、これに気づかずに「該当なし」として申請してしまうと、警察庁への照会で必ず発覚し、許可が不許可になるだけでなく、「虚偽申請」として刑事罰(懲役や罰金)の対象になり、さらにその後5年間は許可が取れなくなるという最悪の事態を招きます。

「知らなかった」では済まされない、最も危険なポイントです。

申請にかかる法定費用と実費の総額シミュレーション

自分で申請する場合のコストを計算しておきましょう。「行政書士報酬(10〜15万円)」は浮きますが、それ以外のお金(実費)はどうしてもかかります。

  • 講習会受講料:1名あたり約35,000円(交通費・宿泊費は別途かかります)。
  • 申請手数料(県に納付):新規申請の場合、1自治体につき81,000円
  • 証明書取得費:登記簿謄本、住民票、納税証明書などで約3,000円〜5,000円程度。
  • 診断書作成費(必要な場合):約50,000円〜100,000円。

合計:約12万円〜(赤字でない場合)

注意点として、手数料の81,000円は「1つの自治体ごと」にかかります。

例えば、「東京都と埼玉県の両方で収集運搬をしたい」という場合は、手数料だけで162,000円必要になります。

エリアを広げれば広げるほど初期投資は増えますので、まずは確実に仕事がある地域に絞って申請するのも一つの戦略です。

予算計画もしっかり立てておきましょう。

実践!産業廃棄物収集運搬業許可の書類作成と電子申請ステップ

準備が整ったら、いよいよ実作業に入ります。ここからは、プロが実際に行っている手順に沿って、効率よく作業を進めるためのマニュアルです。手戻りを防ぎ、最短で受理されるためのノウハウを詰め込みました。

【STEP1】必要書類の収集と有効期限管理のコツ

まずは役所関係の書類を集めます。ここで最大の敵となるのが「3ヶ月ルール」です。

住民票、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、納税証明書、登記されていないことの証明書などの公的証明書は、原則として申請日から遡って3ヶ月以内に発行されたものでなければなりません。

収集の黄金ルート

効率よく集めるために、以下の順序で回るとスムーズです。

  1. 法務局:まずはここで「履歴事項全部証明書(登記簿)」と「登記されていないことの証明書」を取得します。会社の基本情報が確定しないと他の書類が取れないことがあるためです。
  2. 市役所・区役所:役員全員分の「住民票」を取得します。必ず「本籍地」が記載されており、「マイナンバー」が記載されていないものを選んでください。マイナンバー入りは受け取ってもらえません。
  3. 県税事務所・税務署:「納税証明書」を取得します。自治体によって「県税の証明書」が必要な場合と、「国税(法人税)の証明書(その1)」が必要な場合があります。手引きをよく見て間違えないようにしましょう。

「早めに準備しておこう」と張り切って書類を取りすぎると、講習会の予約が取れなかったり書類作成に手間取ったりしている間に3ヶ月が過ぎてしまい、全部取り直し(お金も二重にかかる)…という悲劇がよく起こります。書類集めは、講習会の修了証が手元に届いてから、または申請予定日の1ヶ月前くらいから一気に集めるのがベストタイミングです。

【STEP2】補正を防ぐ!運搬車両と容器の写真撮影テクニック

自分で申請する方が最もつまずき、行政から補正(やり直し)を指示されるのが、実は「写真」なんです。

審査官は現場を見に行きません。提出された写真だけを見て、「この車なら安全に運べるか?」「この容器なら漏れないか?」を判断します。そのため、写真のクオリティは合否に直結します。

撮影対象 撮影のポイントとNG例
車両の前面 真正面からではなく、少し「斜め前方」から撮るのがコツです。ナンバープレートの文字が鮮明に読み取れること、および運転席のドア付近まで写っていることが重要です。

NG例:逆光でナンバーが読めない、バンパーが見切れている。

車両の側面 真横から撮影し、車体の先端から後端まで全体を入れる必要があります。荷台の高さや形状がわかるように撮りましょう。

NG例:後ろのタイヤが切れている、斜めすぎて長さがわからない。

運搬容器 使用するドラム缶やフレコンバッグの実物を用意します。カタログの切り抜きはNGです。空の状態の「蓋を開けた写真(中身が見える)」と、「蓋を閉めた写真」の両方があると完璧です。

また、申請時点では車両への「産業廃棄物収集運搬車」というマグネット等の表示は不要な自治体が多いですが、一部では「表示する予定の場所」を示す写真や図面を求められます。また、あおり(荷台の囲い)があるダンプなどの場合は、内部が見えるように上から撮影した写真や、あおりの高さがわかるようにメジャーを当てた写真を求められることもあります。手引きの「写真の撮り方」ページは熟読してください。

【STEP3】電子申請システムの登録から手数料納付まで

書類と写真が揃ったら、いよいよ申請です。ここでは、多くの自治体で導入が進む電子申請システムを使った申請の流れをシミュレーションします。

  1. アカウント登録:自治体の電子申請システムにアクセスし、ログインします。自治体によっては「GビズIDプライム」や「GビズIDメンバー」が必要な場合と、メールアドレスだけで独自登録できる場合があります。GビズIDは発行に時間がかかるので、事前に取得しておきましょう。
  2. 基本情報の入力:申請フォームに従って、申請者の住所、氏名、役員情報、車両情報などを入力していきます。ここは登記簿や車検証を見ながら、一言一句間違えないように入力します。
  3. ファイルのアップロード:作成した申請書(Word/PDF)、集めた証明書(PDFスキャン)、撮影した写真(JPEG)を所定の場所にアップロードします。※ファイル名には「01_申請書」「02_定款」「03_車検証」など、誰が見てもわかる名前をつけておくと、審査官の心証も良くなります。
  4. 送信と手数料納付:データ送信後、数日〜1週間程度で担当者が形式審査(書類が揃っているかのチェック)を行います。不備がなければ「納付のお知らせ」メールが届くので、Pay-easy(ペイジー)対応のATMやネットバンキングで手数料(81,000円)を支払います。

納付が確認された時点で、正式に「受理」となり、そこから約2ヶ月(標準処理期間)の審査期間に入ります。ここまできたら、あとは審査結果を待つだけです。補正指示が来たら、速やかに対応しましょう。

許可証交付後のマニフェスト準備と帳簿の付け方

無事に許可証が届いたら、業務開始です!…と言いたいところですが、まだやることがあります。

実際にゴミを運ぶ際には、「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」の運用と、「帳簿」の記帳が義務付けられます。これを怠ると、せっかく取った許可を取り消される可能性があります。

  • マニフェストの準備:建設業協会や産廃協会などで紙のマニフェスト伝票(7枚複写)を購入するか、電子マニフェスト(JWNET)に加入契約をします。最近は元請け業者から「電子マニフェストに対応していない業者には発注しない」と言われるケースが増えています。事務処理の手間も大幅に減るため、許可取得と同時に電子マニフェストへの加入を強くおすすめします。
  • 帳簿の準備:Excelなどで管理用のフォーマットを作りましょう。法律で定められた項目(年月日、排出事業者名、廃棄物の種類、運搬量、運搬先、運搬方法など)を記録できるようにしておきます。

これらの記録は5年間の保存義務があります。

許可を取った後の「運用」こそが、企業のコンプライアンスを守る要です。最初からしっかりとしたルールを作っておきましょう。

産業廃棄物収集運搬業許可の自社申請まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

「これなら自分でもできそうだ」と感じましたか?それとも「やっぱり思ったより大変そうだな…」と感じましたか?

自分で申請する最大のメリットは、もちろんコスト削減です。行政書士報酬を節約できれば、その分を設備投資や運転資金に回すことができます。しかし、それ以上に「許可の内容やルール、リスクを、自分自身が深く理解できる」という大きなメリットがあります。苦労して申請書を作り、行政の担当者とやり取りした経験は、その後の適正な業務運営や、トラブル防止に必ず役立ちます。

ただ、本業が忙しくて時間が取れない方や、パソコン作業が苦手な方にとっては、この膨大な書類作成と手続きが大きな負担になるのも事実です。「書類作成に1週間もかかってしまい、その間の売上が落ちてしまった」となっては本末転倒です。また、途中で挫折して申請が遅れれば、ビジネスチャンスを逃してしまいます。

「やってみたけど難しそう」「時間がもったいない」と感じたら、その時は無理せずプロの行政書士を頼ってください。私たちは、面倒な手続きを代行し、あなたのビジネスを加速させるためのパートナーですからね。

※本記事は一般的な手続きの流れを解説したものです。申請書類の様式や細かいルール、電子申請システムの仕様は、申請先の自治体(都道府県・政令市)によって異なります。必ず最新の「申請の手引き」をご自身でダウンロードし、詳細を確認しながら進めてください。

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