産業廃棄物許可の基礎知識

産業廃棄物収集運搬業許可が「必要な人」と「不要な人」の境界線【図解判定】

【結論】産業廃棄物収集運搬業許可が「必要な人」とは?

結論から言えば、「他人の産業廃棄物」を運ぶ人は許可が絶対必須「自分の産業廃棄物」を運ぶ人は許可不要(自社運搬)です。

この境界線を見誤り、安易に元請け業者のゴミを運ぶと「無許可営業」となり、5年以下の懲役刑という取り返しのつかない経営リスクを背負うことになります。

行政書士 小野馨
こんにちは!

産廃許可の実績100件 行政書士の小野馨です。

今回は、多くの経営者が眠れなくなるほど悩む【産業廃棄物収集運搬業許可の要・不要判定】について、法的な白黒をハッキリつけます。

「元請けの現場のゴミを、ついでに捨ててきてくれと頼まれた」

「お金は貰わない(無料)から、許可なんていらないだろう」

もしあなたが、このような感覚でトラックを走らせているなら、今すぐエンジンを止めてください。

産業廃棄物の法律は、知らなかったでは済まされない「直罰規定(いきなり逮捕)」の世界です。

特に建設業界においては、「元請け」か「下請け」かという立場の違いだけで、ゴミを運べるかどうかが天と地ほど変わります。

良かれと思って手伝った結果、あなたが犯罪者になり、会社が営業停止処分を受ける…。

そんな悪夢を避けるための「法的な境界線」を、行政書士歴20年の経験から徹底解説します。

⚠️ 「バレなきゃいい」は通用しません。警察や環境Gメンは、マニフェストと契約書の矛盾から、あなたの無許可営業を簡単に見抜きます。この記事で「シロ」か「クロ」かを確認してください。

この記事でわかる4つの判定ポイント

  • ✅ 大原則:「他人のゴミ」か「自分のゴミ」か
  • ✅ 建設業の罠:「元請け」は不要、「下請け」は必要の鉄則
  • ✅ グレーゾーン:「無料(タダ)」なら許可はいらない?
  • ✅ エリアの罠:その許可証、隣の県でも使えますか?

※なお、産廃収集運搬許可の全体像を知りたい方は、

産業廃棄物収集運搬業許可の教科書

をブックマークして、手続きの辞書としてご活用ください。

【3秒診断】産業廃棄物収集運搬業許可が「必要な人」の絶対条件

産業廃棄物の許可制度において、最も基本的かつ絶対的なルール。それは「誰が出したゴミなのか?」という一点に尽きます。

多くの事業者が、運ぶ「量」や「距離」で許可の要・不要を判断しようとしますが、それは間違いです。

たとえ空き缶1個であっても、たとえ隣の土地へ移動させるだけであっても、以下の原則に当てはまれば許可が必要となります。

法律用語で難しく言うと「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」の第7条や第14条に関わりますが、現場レベルでは以下のたった一つの公式を覚えておけば間違いありません。

【許可が必要な絶対公式】

「他人が排出した産業廃棄物」×「委託を受けて(業として)」= 許可が必要

逆に言えば、この要素が一つでも欠ければ、許可は不要(または対象外)となります。

まずはこの大原則を覚えてください。

💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)

過去に、「親会社の工場で出たゴミを、子会社のトラックで運んであげた」というケースで、無許可営業として指導を受けた事例があります。

「グループ会社だから身内(自分)のようなものだ」という感覚は、法律では通用しません。法人格が別であれば、親会社といえども法的には「赤の他人」です。

他人のゴミを運ぶ以上、子会社は許可を取得する必要があります。「身内ならOK」という甘えは捨ててください。

大原則:「他人の産業廃棄物」を「委託を受けて」運ぶか?

なぜ、「他人のゴミ」を運ぶために、これほど厳しい許可制度が存在するのでしょうか。

それは、過去に横行した「不法投棄」を防ぐためです。

もし、誰でも自由に他人のゴミを運べるなら、悪質な業者が「安く処分してやる」と言ってゴミを引き取り、山奥に捨てて逃げるという犯罪が容易にできてしまいます。

そのため、国は「他人のゴミを預かって運搬できるのは、厳しい審査をクリアしたプロフェッショナル(許可業者)だけ」と法律で定めたのです。

ここで言う「他人」とは、文字通り**「自分以外の全ての個人・法人」**を指します。

例えば、あなたがA社の社長だとします。

  • A社の工場で出た廃材を、A社のトラックで運ぶ→ これは「自分のゴミ」なので、許可は不要です(自社運搬)。
  • B社(取引先)で出た廃材を、頼まれてA社のトラックで運ぶ→ これは「他人のゴミ」なので、許可がなければ違法(無許可営業)です。

さらに重要なのが**「委託を受けて(業として)」**という要件です。

「業として」とは、反復継続して行う意思があることを指します。「今回だけ特別に」という言い訳は通用しません。一度でも他人の依頼を受けて運べば、それは立派な「事業」とみなされます。

特に注意すべきは、「運搬費をもらわなければ(無料なら)業ではない」という誤解です。これについては後ほどの章で詳しく解説しますが、判例では「運搬費が工事代金等に含まれている」とみなされたり、「サービスの一環として行っている=事業性がある」と判断されることがほとんどです。

つまり、ビジネスの現場において「純粋なボランティア」として認められるケースは稀であり、他人のゴミを運ぶ=許可が必要、と考えておくのが安全な経営判断と言えます。

 

📷 画像挿入指示

推奨画像: 「自分のゴミ(自社運搬)」と「他人のゴミ(許可業者)」の違いをイラストで対比。A社が自分のゴミを運ぶ図(OK)と、A社がB社のゴミを運ぶ図(NG)を並べる。

生成用プロンプト: Illustration comparison. Left: Company A truck carrying Company A's waste (Green Circle OK). Right: Company A truck carrying Company B's waste (Red Cross NG). Flat design, business style.

Alt属性: 産業廃棄物の自社運搬と委託運搬の違い図解

[フローチャート] Yes/Noで分かるあなたの立ち位置

ここまで読んで「理屈はわかったけれど、自分のケースはどうなんだ?」と迷っている方もいるでしょう。特に建設業やリフォーム業の場合、立場が複雑で判断に迷うことが多いはずです。

そこで、誰でも3秒で判断できる**「許可要・不要判定フローチャート」**を作成しました。以下の質問に「Yes」か「No」で答えていってください。

🚦 産廃運搬許可・判定チェック

【Q1】運ぼうとしている廃棄物は、誰が出したものですか?

  • 👉 自社の事業活動から出たもの(自分が排出した)【許可不要】(自社運搬)※ただし、車両への表示や書面携帯義務などの基準を守る必要があります。
  • 👉 他社の事業活動から出たもの【Q2へ進む】

【Q2】運ぼうとしている物は「専ら物(もっぱらぶつ)」ですか?

(※専ら物とは:古紙、くず鉄、空き瓶類、古繊維の4品目のみ)

  • 👉 Yes(これら4品目のみを運ぶ)【許可不要】(例外規定)※これらはリサイクル目的が明らかであるため、特例として許可が免除されています。
  • 👉 No(廃プラスチック、木くず、がれき類など)【Q3へ進む】

【Q3】あなたは建設工事の「元請業者」ですか?

  • 👉 Yes(施主から直接請け負った)【許可不要】(自社運搬扱い)※建設リサイクル法等の解釈により、元請業者が排出事業者とみなされます。
  • 👉 No(下請け、孫請けの立場)【許可が必要!】(収集運搬業)※下請けが運ぶ場合、それは「元請けのゴミ」を運ぶことになるため、許可が必須です。

いかがでしたか?

多くの人がつまずくのが【Q3】の建設業特有のルールです。「自分は工事をした当事者だから、自分のゴミだろう」と思いがちですが、法律上の排出事業者はあくまで「元請」に固定されています。

もし、あなたがこの判定で「許可が必要」という結果になったにも関わらず、無許可で運搬を続ければ、それは時限爆弾を積んで走っているのと同じです。

最大の落とし穴!建設業における「元請」と「下請」の壁

産業廃棄物の世界において、建設業は特殊なルールが適用される業界です。

工場や飲食店であれば、「ゴミを出した人=排出事業者」という図式はシンプルですが、建設現場には「元請」「下請」「孫請」という複雑なヒエラルキーが存在するからです。

ここで多くの職人さんが陥るのが、「作業をした俺が排出事業者だ」という思い込みです。

確かに、実際に壁を壊したり、廃材をまとめているのは下請け業者(あなた)かもしれません。しかし、廃棄物処理法においては、その常識は通用しません。

平成22年の法改正により、建設工事に伴って生ずる廃棄物の排出事業者は、明確に「元請業者(発注者から直接工事を請け負った者)」と定義されました(法第21条の3)。

この定義を理解していないと、良かれと思ってゴミを運んだ下請け業者が、ある日突然「無許可営業」で摘発されることになります。なぜそうなるのか、構造を紐解いていきましょう。

💡 行政書士の現場メモ(失敗回避の知恵)

リフォーム工事などでよくあるトラブルです。下請けの内装業者さんが、元請けの不動産会社から「処分費込みで発注するから、ゴミもよろしく」と言われ、自分の軽トラで運んでいました。しかし検問で警察に止められ、「排出事業者は誰?」と聞かれた際にしどろもどろになり発覚。結果、下請けさんは「無許可営業」、元請け社長は「委託基準違反(無許可業者への委託)」で、両社とも書類送検されました。「頼まれたから」は、あなたを守る理由になりません。

元請業者は「排出事業者」=自社運搬扱い(許可不要)

まず、工事のトップにいる「元請業者」の立場から見てみましょう。

法律上、建設廃棄物の排出事業者は「元請業者」ただ一人です。下請けが何社入っていようと、その現場から出るゴミの責任はすべて元請けが背負うことになります。

したがって、元請業者が自社のトラックを使って、その現場のゴミを運搬する場合、これは**「自分のゴミを自分で運ぶ(自社運搬)」**に該当します。

前章で解説した通り、自社運搬には許可が必要ありません。つまり、元請業者は産業廃棄物収集運搬業の許可証を持っていなくても、堂々とゴミを運ぶことができるのです。

ただし、ここで注意が必要なのは、現場での立場です。

「うちは大手ゼネコンの一次下請けだから、実質現場を仕切っているし、元請けみたいなものだ」と思っても、発注者(施主)と直接契約していない限り、法的には「下請け」です。

あくまで「施主から直接請け負った者」だけが、この「許可不要カード(自社運搬の特権)」使える選ばれし存在であることを忘れないでください。

また、元請業者が自社運搬をする場合でも、以下のルールは厳守しなければなりません。

  • 車両への表示:「産業廃棄物収集運搬車」「元請業者名」を車体に表示する。
  • 書面の携帯:「自社運搬である旨を記載した書面(運び先や数量等を明記)」をドライバーに持たせる。

これらが守られていなければ、たとえ元請けであっても「基準違反」として処罰の対象となります。

📷 画像挿入指示

推奨画像: 建設現場のヒエラルキー図解。「施主」→「元請(排出事業者=運搬OK)」→「下請(運搬NG)」の関係を明確にし、下請けにバツ印をつける。

生成用プロンプト: Construction site hierarchy diagram. Client connects to Prime Contractor (Waste Generator = Permit NOT needed). Prime Contractor connects to Subcontractor (Permit NEEDED for transport). Warning icon on Subcontractor.

Alt属性: 建設業の元請・下請と産廃運搬許可の関係図

下請業者は「運搬受託者」=許可が必要(違反なら逮捕)

問題は「下請け業者(孫請け含む)」のあなたです。

法律上、現場のゴミはすべて「元請業者のゴミ(他人のゴミ)」と定義されています。つまり、下請けであるあなたがそのゴミをトラックに積んだ瞬間、あなたは**「他人のゴミを運んでいる状態」**になります。

第1章の公式を思い出してください。

「他人の産業廃棄物」×「委託を受けて」= 許可が必要

これに完全に当てはまるため、下請け業者が現場のゴミを運ぶには、必ず「産業廃棄物収集運搬業許可」を取得していなければなりません。

もし許可を持たずに運べば、廃棄物処理法第25条の違反となり、「5年以下の懲役または1000万円以下の罰金」という、交通違反などとは比較にならない重罪が科されます。

現場ではよく、「元請けが忙しいから、下請けのお前が捨ててきてくれ」という指示が飛び交います。また、下請け側も「次の仕事をもらうために断れない」「処分費を浮かせて利益を出したい」という事情から、安易に引き受けてしまいがちです。

しかし、これは**「元請けによる犯罪教唆(そそのかし)」と「下請けによる実行行為」**の共犯関係を作っているに過ぎません。

「でも、量が少ないからバレないだろう」

そう思いますか? 警察は、検問であなたのトラックを止めたとき、必ずこう聞きます。

「どこの現場のゴミ? 元請けはどこ? 契約書見せて」

そこであなたが「〇〇建設の現場です」と答え、許可証を持っていなければ、その場でアウトです。

下請け業者が適法にゴミを運ぶ方法は、以下の2つしかありません。

  • A. 正攻法:産業廃棄物収集運搬業の許可を取る約15万円の費用と講習会の受講が必要ですが、一度取れば5年間は堂々と仕事ができます。元請けと正式に「収集運搬委託契約」を結ぶことで、対等なビジネスパートナーとして報酬を堂々と請求できます。
  • B. 回避策:元請業者自身に運ばせる「法律上、私が運ぶと違法になりますから、御社のトラックで運んでください」と断る勇気を持つことです。または、許可を持っている専門の回収業者を手配してもらいましょう。

✅ この章のポイント

  • 建設現場のゴミは、法律上すべて「元請業者」の所有物となる。
  • 元請業者は「自社運搬」が可能(許可不要)。
  • 下請業者が運ぶと「他人のゴミ運搬」となり、許可がないと逮捕される。
  • 「頼まれたから」は通用しない。許可を取るか、断るかの二択のみ。

参考

「運搬費等の名目がなくても、実質的に対価が含まれる」とする行政解釈 最も引用されるのが、廃棄物処理法施行当初に出された以下の通達です。

通知名: 廃棄物処理法の施行について(昭和46年10月16日 環整37号)

内容: 「他人から委託を受けて」の解釈について。

「運搬料金の名目での金品の授受がなくても、施工料金等の中に運搬費が含まれていると認められる場合、あるいは、下取り等の名目で物と交換に処理する場合等、実質的に運搬又は処分を委託したと認められる場合は、法による委託基準の適用がある。」

解説: ここで「工事代金込み=実質的な委託」という解釈が確定しました。

【リンク】 環境省公式(通知・通達データベース): https://www.env.go.jp/hourei/add/k032.pdf (PDF 2ページ目「第4 産業廃棄物処理業」の項を参照)

「無償でも『業』に当たる」とした裁判例 「お金を貰っていないから事業(業)ではない」という主張を退けた有名な高裁判決があります。

  • 判例: 名古屋高等裁判所 昭和59年1月26日判決

  • 要旨: 廃棄物の運搬自体が無償であっても、**「その行為が本来の業務(建設業等)に付随して行われ、全体として利益を得ている場合」「反復継続して行われる場合」**は、社会通念上「業」として行うものと認められる。

  • 解説: 「タダだからボランティア」という言い訳は、営利企業が反復して行う限り通用しないという司法判断です。

 

「無償でも『業』に当たる」とした裁判例 「お金を貰っていないから事業(業)ではない」という主張を退けた有名な高裁判決があります。

判例: 名古屋高等裁判所 昭和59年1月26日判決

要旨: 廃棄物の運搬自体が無償であっても、**「その行為が本来の業務(建設業等)に付随して行われ、全体として利益を得ている場合」や「反復継続して行われる場合」**は、社会通念上「業」として行うものと認められる。

解説: 「タダだからボランティア」という言い訳は、営利企業が反復して行う限り通用しないという司法判断です。

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