別府と湯布院で複数の民泊を運営し、両方の地域に滞在してもらいたい。そんな計画では、物件の魅力に加えて、各施設で営業できる条件と、離れた場所でも対応できる運営体制を先に確かめることが大切です。
ドミナント戦略とは、一定の地域に拠点を集め、集客や運営の効率を高める考え方です。ただし、別府・湯布院に施設を持つだけで、連泊や高い利回りが実現するわけではありません。共通化できる仕事と、各施設に人や設備が必要な仕事を分けるところから始めましょう。
この記事では、複数施設を運営する事業者に向けて、物件ごとの許可・届出、緊急対応、清掃・温泉の維持管理、周遊しやすい予約案内を整理します。これから最初の一棟を検討する方は、リゾート民泊の開業準備の全体像も参考にしてください。
別府・湯布院の複数運営は「まとめる仕事」と「現地の仕事」を分ける
予約の受付、問い合わせの一次対応、備品の発注などは、複数施設で共通化を検討できます。一方、客室の清掃、鍵が開かないときの対応、設備の故障確認などは、現地へ行ける人が必要です。
まず、候補物件ごとに次の点を書き出してみてください。
- 誰に、どのような滞在を提供するか。家族の連泊、少人数の静かな滞在など、施設の使い方まで具体化する。
- 清掃・点検・緊急対応の担当者は、どこから移動するか。同じ日に複数施設の対応が重なったら誰が補うか。
- 予約窓口や備品を共通化した場合、実際に減る費用は何か。移動費や待機費が増えないか。
例えば、二棟を一人の清掃担当者に任せる計画では、客室内の作業時間だけでなく、移動、リネンの積み下ろし、設備点検までを退室から次の入室までに収める必要があります。両方の予約が同日に入るほど対応が難しくなるなら、担当を分けるか、入室時刻や受け入れ方を見直す余地があります。
複数運営の効率は、施設数ではなく、繁忙日でも約束したサービスを提供できるかで判断すると、計画の弱い部分が見えてきます。
許可・届出と建物の条件は、物件ごとに確認する
一つの許可で、別の所在地の施設まで営業できるわけではない
同じ事業者、同じブランドで運営していても、別府の施設で取得した許可が、そのまま湯布院の別施設に及ぶわけではありません。施設の所在地、構造、営業内容を示し、それぞれに必要な手続きを確認します。棟が近接している場合も、一つの営業施設として扱える範囲を自己判断しないでください。
旅館業では、施設の構造設備等を整え、営業前に許可を受けます。別府市の窓口は東部保健所、由布市は中部保健所由布保健部です。図面と運営計画を用意し、各施設の所在地を管轄する窓口へ相談しましょう。大分県「旅館業の手続きについて」
住宅宿泊事業(民泊新法)を選ぶ場合は、台所・浴室・便所・洗面設備に加え、生活の本拠、入居者募集、随時居住のいずれかの居住要件を満たす住宅であることが必要です。年間の宿泊提供日数は180日以内で、自治体の区域・期間の制限も確認します。宿泊専用の投資物件を、名前だけ「別荘」に変えて届け出ることはできません。観光庁「住宅宿泊事業者編」
住宅宿泊事業の180日は、事業者全体ではなく届出住宅ごとに数えます。別の住宅に空き日があっても、一つの住宅の上限を増やせるわけではありません。予約や宿泊実績は、施設を取り違えないように管理しましょう。観光庁「住宅宿泊事業法とは」
各物件について、使える制度、営業予定日数、管理方法を並べて比較してください。制度選びを詳しく確認したい方は、民泊新法と旅館業(簡易宿所)の違いをご覧ください。
古民家・別荘の転用は、工事前に建築・消防・景観を調べる
別府や湯布院に点在する趣のある古民家や大型別荘を活用する際は、建物の履歴と地域のルールを確認します。確認済証・検査済証、各階の図面、増改築の記録を集め、現在の建物と資料が一致しているかを建築士と確かめましょう。
検査済証が見当たらないことだけで、直ちに転用不可と決まるわけではありません。一方、確認申請が不要なら建築基準への適合も不要、ということでもありません。大分県は、建築確認申請を要しない用途変更で旅館業許可を申請する場合にも、建築士による「建築基準適合証明書」の提出を案内しています。大分県「既存住宅等の旅館・ホテルへの用途変更」
消防には、各施設の図面と、旅館業・住宅宿泊事業のどちらを予定するかを伝えます。別の施設で使えた設備構成を、そのまま流用しないことが大切です。由布市内の県の案内でも、両制度を分けて消防法令適合通知や安全措置の確認が示されています。大分県「いわゆる民泊について(由布市内)」
湯布院で外壁や屋根を改修する場合は、景観計画区域と対象行為、色彩等の基準を、市の資料と照合します。「黒なら不可」「自然な色なら自由」と色名だけでは判断できません。材料や色を発注する前に、図面・色見本を示して相談すると手戻りを減らせます。由布市「由布院盆地景観計画」
用途地域や市の条例を含む物件選びは、湯布院で民泊を始める前の地域・建物の確認で詳しく整理しています。
管理窓口を一つにしても、現地対応まで一人に集約しない
旅館業の「10分」は、営業形態と実際の対応体制を確認する
遠隔で予約や問い合わせを受けることと、緊急時に現地で対応できることは分けて考えます。スマートロックを設置しただけでは、本人確認、宿泊者名簿、鍵の受渡し、緊急対応まで整ったことにはなりません。
由布保健部の案内では、無人の玄関帳場・フロントについて、通常10分程度で職員等が駆けつける体制のほか、本人確認、出入りの確認、適切な鍵の受渡しなどを示しています。同時に、簡易宿所は掲載基準に完全に合致しない設備でも許可を取得できる場合があると補足しています。由布保健部「玄関帳場・フロントについて」
厚生労働省の2025年3月のFAQも、10分程度の範囲内に事務所を設けることを画一的に求める趣旨ではなく、場所、営業形態、管理・連携体制などを踏まえた個別判断としています。ただし、これを理由に、地域の案内を無視して「離れた一拠点で管理してよい」と判断することはできません。厚生労働省FAQ・問3~6
相談では、二つの施設と待機場所を記した地図、通常の移動経路、担当者の勤務時間、代替要員、通信障害時の手順を示してください。渋滞や悪天候で移動が難しいときも想定し、各管轄の窓口で具体的な計画を確認します。
住宅宿泊事業の管理委託は、旅館業と別のルール
住宅宿泊事業では、宿泊中に事業者が不在となる場合や、届出住宅の居室数が5を超える場合、原則として登録された住宅宿泊管理業者への委託が必要です。日常生活に伴う一時的な不在などの例外や、事業者自身が管理業者として登録し自ら管理する場合の扱いもあります。離れた二拠点を行き来する計画は、不在の判断を含めて確認してください。
法定の委託が必要な場合は、管理業務の全部を契約で委託します。清掃だけ、警備だけの契約で代わりになるわけではありません。観光庁「管理業務の委託について」
業者との打ち合わせでは、料金だけでなく、次の業務が契約に含まれるかを確かめましょう。
- 鍵の不具合、停電、給湯停止が起きたときの受付と現地対応。
- 騒音など近隣からの連絡を受ける人と、その後の対応記録。
- 同時に二施設から連絡が入った場合の応援体制。
- 外国語での問い合わせに対応できる時間帯と、伝達方法。
火災や救急など緊急性が高い場合は、管理者への連絡だけで終わらせず、119番への通報を含む手順を案内します。現地担当者、電話受付、設備業者の役割を分け、連絡が途中で止まらないようにしておきます。
周遊しやすさは、予約と滞在ルールの分かりやすさでつくる
別府で過ごした後に湯布院へ移る滞在を提案するなら、二つの宿の違いだけでなく、移動日に何が起こるかまで案内します。ここでは、宿泊者が各施設を予約し、自分で移動する場合の宿泊案内を扱います。
予約前に分かるようにしておきたいのは、次の内容です。
- 泊まる場所:施設名、住所、地図、入口写真を施設ごとに表示する。同じブランド名だけで案内しない。
- 入退室と荷物:前の宿を出る時刻、次の宿へ入れる時刻、荷物を預けられるかを明示する。
- 予約・取消し:各施設の宿泊日、支払先、取消条件を示す。一方を取り消した場合に、もう一方も取り消されるのかを曖昧にしない。
- 滞在中のルール:駐車場所、夜間の屋外利用、温泉設備の使い方、ごみの扱い、問い合わせ先を施設ごとに伝える。
案内の形式は共通化できても、住所、鍵、避難経路、設備の利用条件は各施設に合わせる必要があります。外国人宿泊者向けの案内も、文章を翻訳するだけでなく、写真や地図と実際の入口が一致しているかを確認してください。
周遊の効果を見るときは、両方の施設を利用した予約の件数だけでなく、移動日に多い問い合わせや、入室待ち、予約変更の理由を記録します。「連泊が増えるはず」と見込むより、宿泊者が不便を感じた箇所を直す方が、次の改善につながります。
清掃・リネン・温泉の維持費を、施設ごとに見積もる
清掃とリネンは、満室の日の作業量から考える
清掃・リネンの委託先には、所在地、定員、寝具の数、退室と入室の時刻、想定する入替件数を伝えます。二施設分をまとめて発注できるかだけでなく、配送や作業が重なる日に対応できるかを確かめてください。
外注と自社洗濯は、どちらかが常に安いとは限りません。自社で洗うなら、洗濯・乾燥能力、作業時間、保管場所、光熱費、機器故障時の代替手段まで比べます。予備のリネン数も、一律の回転数で決めず、回収から返却までの日数と最大の入替量から考えましょう。
ごみについても、各市の事業系ごみの処理方法を確認し、回収可能な場所・曜日、分別、保管場所を開業前に決めます。施設を増やしてから回収方法を探すのではなく、運営費の見積もりと一緒に確認しておくと安心です。
温泉付き物件は、利用許可と保守契約を分けて確認する
「温泉付き物件」という言葉の響きだけで収益性を判断せず、既存の許可書、引湯等の契約、浴槽・配管の状態を確かめます。
温泉を公共の浴用・飲用に供する場合には、温泉利用許可が必要です。大分県のしおりでは、利用施設ごとの許可を基本としつつ、条件を満たす場合の一括許可の特例も示されています。施設や浴槽を増やすときは、既存の許可がどこまでを対象にしているかを確認してください。大分県「温泉利用許可申請のしおり」
宿泊者以外にも入浴サービスを提供する場合は、公衆浴場法の手続きも別途確認します。温泉があるという理由だけで、すべての宿泊施設に公衆浴場営業許可も必要だと一律に考えないことが大切です。由布保健部「旅館業を開始するためには」
維持費は、配管洗浄、設備点検、衛生管理、水質検査、修理時の出張費などに分け、設備と管理方法に合った見積もりを取ります。泉質や設備条件を見ずに、地域共通の年間維持費を置くことは避けましょう。片方の温泉設備が止まった場合の予約対応も、開業前に決めておきたい項目です。
二拠点目へ進む前に、物件ごとの課題を見える形にする
二拠点目の購入・賃借を判断する前に、各物件について「営業制度」「立地・建物」「現地対応」「清掃・設備保守」「費用」を一枚にまとめます。未解決の項目には、相談先と、回答を得るために必要な資料を添えてください。
共通の予約窓口を設けても、各施設の安全や営業条件まで一つになるわけではありません。既存施設の運営を振り返り、問い合わせが重なる時間帯、清掃の遅れ、修理対応にかかる時間が分かってから、二拠点目の体制に反映していきましょう。
ご自身で進める場合は、所在地・図面・営業計画をそろえて各窓口へ事前相談することが次の一歩です。許可・届出の準備をどこまで依頼するか迷う場合は、物件の所在地、予定する施設数、資料の有無、希望する支援内容を民泊の相談窓口へお知らせください。対応可否と依頼範囲・費用を確認してから、進め方を検討できます。