「この物件、用途地域は大丈夫かな?」と気になったら、まず住宅宿泊事業(民泊新法)で運営するのか、旅館業の許可を取って簡易宿所等にするのかを分けて確認しましょう。同じ「民泊」と呼ばれていても、建築基準法上の用途が異なるためです。
住宅宿泊事業の届出住宅は住宅等として扱われ、用途地域の基本制限では工業専用地域を除く12地域が対象になります。一方、簡易宿所等のホテル・旅館用途は、住居専用地域・田園住居地域・工業地域・工業専用地域では原則として認められません。
ココに注意
ただし、一覧表の○は「その住所で開業できる」という保証ではありません。 自治体の条例や地区計画、住宅としての要件、建物・消防の基準、賃貸借契約や管理規約まで確認してから、物件契約や改修に進むことが大切です。
民泊の用途地域一覧|13種類の基本制限
用途地域は、住宅地・商業地・工業地など、それぞれの環境に合った土地利用を図るための都市計画上の区分です。建築基準法第48条・別表第二が、各地域で認められる建物の用途を定めています。
次の表は、用途地域による建築用途の一般原則だけを比較したものです。住宅宿泊事業の届出や旅館業の許可の可否を直接示す表ではありません。特区民泊の認定可否はこの表の対象外で、実施自治体の制度と対象区域を別に確認します。
| 用途地域 | 住宅宿泊事業の届出住宅(住宅等) | 簡易宿所等(ホテル・旅館用途) |
|---|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | ○ | 原則不可 |
| 第二種低層住居専用地域 | ○ | 原則不可 |
| 第一種中高層住居専用地域 | ○ | 原則不可 |
| 第二種中高層住居専用地域 | ○ | 原則不可 |
| 第一種住居地域 | ○ | 条件付き○(3,000㎡以下) |
| 第二種住居地域 | ○ | ○ |
| 準住居地域 | ○ | ○ |
| 田園住居地域 | ○ | 原則不可 |
| 近隣商業地域 | ○ | ○ |
| 商業地域 | ○ | ○ |
| 準工業地域 | ○ | ○ |
| 工業地域 | ○ | 原則不可 |
| 工業専用地域 | 原則不可 | 原則不可 |
表の見方
- ○:その建築用途が用途地域の基本制限上は認められるという意味です。住宅宿泊事業では法定の住宅要件を満たすことが前提で、どの○にも地域独自の制限や建物ごとの確認が残ります。
- 第一種住居地域の3,000㎡以下:ホテル・旅館など、制限の対象となる用途に供する部分の床面積の合計に関する条件です。敷地面積や客室面積だけで判断せず、複合用途の建物は算定対象を建築担当窓口へ確認してください。第二種住居地域や準住居地域に、この条件を一律に当てはめるものではありません。
- 原則不可:通常の用途制限では認められないという意味です。例外許可などの有無を織り込んだ個別物件の判定ではありません。
出典:建築基準法第48条・別表第二(e-Gov)、岡山市の用途地域制限早見表。届出住宅の扱いは住宅宿泊事業法第21条に基づきます。
ココがポイント
特に間違えやすいのが、準工業地域と工業地域の違いです。準工業地域でホテル・旅館用途が認められることから、工業地域も同じと考えてはいけません。工業地域では住宅は認められますが、ホテル・旅館は原則として禁止されています。
原則不可の地域でも、例外許可を前提に契約しない
建築基準法第48条には、特定行政庁が一定の条件の下で許可する例外があります。ただし、条件は用途地域によって異なり、申請すれば認められる制度ではありません。原則として、公開による意見聴取や建築審査会の同意を伴う手続きです。
また、特別用途地区や地区計画に基づく制限・緩和は、48条ただし書の個別許可とは別の仕組みです。「近所に宿泊施設がある」「以前ホテルだった」という事情だけで、同じ条件が使えるとは判断できません。例外の検討が必要な物件は、契約や工事に先立ち、所在地の建築担当窓口へ確認してください。
同じ民泊でも、住宅宿泊事業と簡易宿所で違う理由
住宅宿泊事業は「住宅」の要件を満たすことが前提
住宅宿泊事業法第21条は、届出住宅を建築基準法上の住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎に含めると定めています。これが、住宅街でも住宅宿泊事業を検討できる理由です。
ただし、空き家や空室なら何でも届出住宅になるわけではありません。台所・浴室・便所・洗面設備があり、さらに次のいずれかの居住要件に該当する必要があります。
- 現に人の生活の本拠として使われている家屋
- 入居者の募集が行われている家屋
- 随時、所有者・賃借人・転借人の居住に使われている家屋
見せかけの入居者募集や、居住の実態がない宿泊専用施設を、設備があるだけで「住宅」と扱うことはできません。要件の詳細は観光庁「対象となる住宅」で確認できます。
住宅宿泊事業は年間180日以内という上限もあります。住宅の要件や届出の進め方は、民泊新法の条件と手続きをご覧ください。
-
-
民泊新法の届出ガイド|住宅の要件・必要書類・180日ルールを解説
住宅宿泊事業法(民泊新法)とは、一般の住宅を活用して宿泊サービスを提供するための法律です。 住宅宿泊事業として始める場合は、住宅の所在地を管轄する自治体へ届出を行います。 ただし、届出さえ出せば、どの ...
続きを見る
簡易宿所はホテル・旅館用途として確認する
住宅を簡易宿所にする場合は、建築基準法上のホテル・旅館用途への変更として確認します。住宅が建てられる地域だから、簡易宿所にも転用できるとは限りません。船橋市の公式案内でも、この用途の違いと用途地域の制限が説明されています。
旅館業には住宅宿泊事業のような年間180日の上限はありませんが、それだけで通年営業が実現するわけではありません。用途地域に加え、建物・消防・営業許可の条件を満たす必要があります。
どちらで進めるか決まっていない方は、住宅宿泊事業と簡易宿所の違いで、営業日数だけでなく物件の条件も比べてください。
-
-
民泊新法と旅館業(簡易宿所)の違い|物件・営業日数で選ぶには
民泊新法と旅館業の違いは、「年間180日までか、日数の上限がないか」だけではありません。 住宅としての使い方、営業できる場所、建物の改修、宿泊中の管理体制まで比べる必要があります。 ココがポイント 自 ...
続きを見る
用途地域が○でも確認する地域独自の制限
住宅宿泊事業の実施期間を制限する条例
住宅宿泊事業法第18条に基づき、自治体が区域を定めて住宅宿泊事業を実施する期間を制限している場合があります。国の年間180日という上限とは別に、所在地で営業できる曜日や期間を調べる必要があります。
たとえば、練馬区の案内では、住居専用地域で住宅宿泊事業を実施できる期間を、週末や祝日に関係する期間に限定しています。これは練馬区の例であり、東京23区全体や全国の住居専用地域に共通するルールではありません。
調べるときは「制限があるか」だけでなく、対象区域・制限期間・対象となる運営形態・例外の条件を確認しましょう。改正予定がある場合は、施行日や既存届出への扱いも確認します。
札幌市で計画する方は条例の期間制限と冬の管理、東京都内で計画する方は所在地の自治体ごとの規制を、次の記事で確認できます。
-
-
札幌で民泊を始めるには|条例の営業制限・物件選びと冬の雪対策
札幌で民泊物件を選ぶ際、まず最優先で確認すべきは、物件の美しさや価格ではなく「法的な適合性」です。そのうえで、冬でも宿泊者を迎えられる建物と管理体制があるかを確認しましょう。 住宅宿泊事業の届出で始め ...
続きを見る
-
-
東京で民泊を始めるには|区ごとの規制・物件選び・収支の確認手順
東京で民泊を始めるなら、人気エリアを選ぶ前に、物件の所在地を管轄する自治体と、利用する制度を確認することが大切です。東京都内でも、住宅宿泊事業の制限区域、営業できる期間、近隣への事前周知などは同じでは ...
続きを見る
地区計画・特別用途地区・協定など
用途地域とは別に、地区計画や特別用途地区による建築用途の制限が定められている場合があります。建築協定など、地域ごとの土地利用のルールも確認対象です。
たとえば豊中市は、地区計画区域内等における民泊立地制限を案内しています。対象は市が示す一部区域であり、市全域を禁止するという意味ではありません。また、地区計画と住民同士の協定は根拠や扱いが違うため、まとめて「条例」と呼ばず、それぞれの内容を確認します。
用途地域の色が同じでも、住所が違えば確認結果が変わり得るのは、こうしたルールが重なるためです。
湯布院の物件を検討している方は、娯楽レクリエーション地区と市条例を、所在地・営業制度に合わせて確認する手順をご覧ください。
-
-
湯布院(由布市)で民泊を始めるには|用途地域・条例と物件購入前の確認
「湯布院で理想の古民家を見つけたから、民泊を始めたい」。そのとき、建物の雰囲気や眺望と一緒に確かめたいのが、その住所で、どの制度を使って宿泊事業ができるかです。 湯布院の民泊を「住居専用地域だから開業 ...
続きを見る
物件の用途地域を調べる手順
1.住所と地番、敷地の範囲をそろえる
物件資料から住居表示と地番を確認し、地図上でどの土地・建物を使うのか特定します。複数の土地を一つの敷地として使っている場合や、建物の一部分だけで営業する場合は、その範囲が分かる図面も用意しましょう。
住所の検索結果に表示されたピンだけで敷地全体の用途地域を判断せず、配置図などと照らし合わせることが大切です。
2.自治体の都市計画図・GISで調べる
所在地の自治体公式サイトで「都市計画図」「用途地域」「都市計画情報」などを探します。用途地域名に加えて、地区計画・特別用途地区・防火地域等の指定も確認してください。
地図の更新日、凡例、利用上の注意を読み、画面や資料を保存します。色だけを見比べるのではなく、表示される正式な地域名と区域の境界を確認しましょう。
3.境界にかかる敷地は、面積と適用規定を窓口で確認する
敷地が二つの用途地域にまたがる場合、用途制限については、建築基準法第91条により敷地の過半が属する地域の規定を適用するのが原則です。
たとえば敷地の60%が第二種住居地域、40%が第一種低層住居専用地域という仮の例では、用途制限は原則として第二種住居地域の規定で判断します。ただし、その敷地全体の都市計画上の指定が第二種住居地域に変わるわけではありません。
建ぺい率・容積率・高さ・防火等まで、すべて同じ「過半」の方法で決まるわけでもありません。面積が半分ずつの場合、三つ以上の地域にまたがる場合、境界位置が不明な場合は、自己判断で有利な地域を選ばず、配置図や面積資料を示して建築担当窓口へ確認してください。住宅宿泊事業の条例上の区域判定も、該当条例の定めを別に確認します。
4.営業制度を伝えて、条例と手続きを確認する
都市計画情報を調べた後は、住宅宿泊事業の担当部署または旅館業担当の保健所へ、所在地と希望する営業制度を伝えます。「民泊ができますか」だけでなく、次のように相談すると、確認したい条件が伝わります。
「この住所の戸建てで、住宅宿泊事業を検討しています。用途地域は第一種低層住居専用地域と表示されています。対象となる条例の区域・実施期間と、届出前に確認すべき事項を教えてください。」
簡易宿所を検討している場合は、その旨を明示し、建築担当窓口にも用途変更と用途制限の確認を依頼します。相談日時、部署、提示した図面、回答の前提条件を記録し、計画が変わった場合は再確認しましょう。
窓口を探す入口には、観光庁の各自治体の情報・窓口案内が使えます。同ページの条例一覧には作成時点の古い資料もあるため、最終的には所在地の自治体が公表する最新の条例・案内を確認してください。
立地の条件を確認し、住宅や別荘を旅館業の宿泊施設へ変える方は、用途変更と建物資料・改修の確認順もご覧ください。
-
-
貸別荘の用途変更と建築確認|住宅・別荘を宿泊施設にする確認手順
住宅や別荘を、旅館業の許可を受ける一棟貸しの宿泊施設に変えるときは、「用途変更の確認申請」「建物の基準への適合」「改修工事の確認申請」を分けて確認することが大切です。 一戸建て住宅・共同住宅からホテル ...
続きを見る
契約前は建物・消防・管理規約まで確認する
用途地域が希望する制度に合っていたら、次は建物そのものを調べます。古くから住宅として使われていることや、不動産広告に「民泊可」とあることだけでは、必要な条件がそろっているとは限りません。
| 確認すること | 主な確認先・用意する資料 |
|---|---|
| 用途地域、地区計画、境界、用途変更、建築基準への適合 | 自治体の都市計画・建築担当窓口、建築士/所在地・配置図・各階平面図・確認済証や検査済証等、手元の建築資料 |
| 住宅宿泊事業の住宅要件・条例・届出、または旅館業の許可条件 | 制度ごとの担当部署・保健所/営業制度・運営形態・予定日数・宿泊人数・使用範囲 |
| 消防法令上の扱いと必要な設備 | 管轄消防署/平面図・面積・階数・宿泊人数・家主の居住や不在の状況 |
| 賃貸借契約・管理規約・所有者の承諾等 | 所有者・貸主・管理組合等/契約書・管理規約・該当する承諾資料 |
これは事前相談のための整理表であり、全国共通の提出書類一覧ではありません。手元にない図面や建築資料があれば、何が不足しているかも含めて相談してください。
用途変更の確認申請が不要な規模でも、建築基準への適合が不要になるわけではありません。 消防設備も「住宅宿泊事業だから一律に軽い」「簡易宿所だから必ず同じ設備」とは決められません。改修内容と費用は、建物と運営計画に応じて確認します。
簡易宿所で進める方は、簡易宿所の許可条件と開業までの手続きも確認してください。
-
-
簡易宿所営業許可の取り方|要件・事前相談・費用と申請準備
空き家や戸建てを、宿泊施設として継続的に使いたい。 そのときに検討する許可の一つが、旅館業法に基づく「簡易宿所営業許可」です。 簡易宿所には、住宅宿泊事業のような年間180日の営業日数上限はありません ...
続きを見る
よくある質問
工業地域で民泊はできますか?
住宅宿泊事業と簡易宿所等で結論が違います。工業地域では住宅用途は認められますが、ホテル・旅館用途は原則不可です。住宅宿泊事業を検討する場合も、住宅要件、地域の制限、建築・消防等の確認は残ります。準工業地域や工業専用地域と混同しないでください。
住居専用地域なら、住宅宿泊事業で180日営業できますか?
180日は全国制度上の上限であって、すべての物件で確保できる営業日数ではありません。所在地の条例による期間制限や地区計画などを調べ、住宅の要件を満たしているかも確認します。
用途地域の指定がない場所なら、自由に営業できますか?
いいえ。用途地域の指定がないことと、宿泊施設として自由に使えることは別です。市街化調整区域かどうか、開発・建築や既存建物の利用に関する条件などを都市計画・建築担当窓口へ確認し、営業制度の手続きや消防の確認も進めてください。
市街化調整区域にある物件は、契約前に建築・許可の履歴と予定する使い方を照合する手順を確認してください。
-
-
市街化調整区域で民泊はできる?開発許可・用途変更と契約前の確認手順
市街化調整区域でも民泊を検討できる場合はあります。ただし、「既存宅地だからできる」「造成しなければ許可は不要」とは判断できません。 土地の区域、建物が建てられた経緯、これまでの許可、予定する宿泊事業と ...
続きを見る
まず住宅宿泊事業で始め、後から簡易宿所に変更できますか?
変更できるとは限りません。住宅宿泊事業の届出があることは、ホテル・旅館用途や旅館業の許可条件を満たす証明にはならないためです。将来の切替を考えている場合は、物件選びの時点から、簡易宿所としての用途地域・建築・消防・許可条件も調べておきましょう。
候補物件の所在地と営業計画が分かったら
用途地域の一覧は、物件を絞り込むための入口です。契約前には、所在地・希望する営業制度・条例や地区計画・建物の条件を一つずつ確認してください。
「地図では○だが、どこまで確認すればよいか分からない」「住宅宿泊事業と簡易宿所のどちらで検討すべきか迷っている」という方は、候補物件の住所、物件資料や図面、希望する営業日数を添えてご相談ください。まだ制度を決めていない場合は、その旨もお知らせいただければ結構です。
制度・公的資料の確認日:2026年10月22日。個別物件の可否は、所在地の最新の規制と計画内容に基づく確認が必要です。