民泊の基礎知識

民泊とは?仕組みや3つの種類を行政書士がわかりやすく解説

こんにちは

リゾート民泊コンシェルジュの行政書士の小野馨です。

今回は、これから宿泊事業を始めたいと考えているあなたに向けて、【民泊とは】どのような仕組みなのか、そしてなぜ今、高級路線である「リゾート民泊」が注目されているのかというテーマでお話します。

最近、街中でスーツケースを持った外国人観光客を見かけることが本当に増えましたよね。ニュースでも連日インバウンドの話題が取り上げられています。

そんな中で、「所有している空き家や別荘を活用して収益化したい」「新規事業として宿泊業に参入したい」と考えて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

しかし、いざ「民泊」について調べ始めると、法律の規制や届出の条件、旅館業法との違いなど、専門的な用語が多くて戸惑ってしまうこともありますよね。

「ウチの物件でもできるのかな?」「近隣トラブルになったらどうしよう」といった不安も尽きないはずです。

違法民泊にならないためのルールや、自分に合った運営スタイルがどれなのかを知っておくことは、事業成功の第一歩ですよ。

  • 民泊の基本的な定義と法律の仕組み、違法にならないためのポイント
  • 「民泊新法」「旅館業法」「特区民泊」の3つの違いと選び方
  • 民泊運営のオーナーメリットと、事前に知っておくべきリスク
  • 競争が激しい市場で高収益を狙える「リゾート民泊」という選択肢

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民泊とは?基礎知識と現在の市場動向

まずは、「民泊」という言葉の基本的な意味と、なぜ今これほど注目されているのか、その背景について整理しておきましょう。単に「人を泊める」といっても、ビジネスとして行う以上はしっかりとしたルールが存在します。ここをあやふやにしたまま進めると、後で大きな落とし穴にハマってしまうかもしれません。

民泊の意味と法律上の定義

「民泊」とは、一般的に「住宅(戸建住宅やマンションの部屋など)の全部または一部を活用して、旅行者などに有料で宿泊サービスを提供するビジネス」のことを指します。

もともと「民泊」という言葉は、修学旅行生が農家に泊まって農業体験をするようなホームステイ型を指していました。しかし、2010年代以降、Airbnb(エアビーアンドビー)などの仲介サイトが世界的に普及したことで、その意味合いは大きく変わりました。「空いている部屋を貸して収益を得る」という新しいビジネスモデルとして定着したのです。

実は法律上、「民泊」という単一の定義があるわけではありません。かつては法整備が追いつかず、許可なき営業が横行するグレーゾーンな時期もありましたが、現在ではルールが明確化されています。日本で合法的に民泊を行うには、主に以下のいずれかの許可や届出が必要です。

【民泊を行うための主な法的根拠】

旅館業法に基づく「簡易宿所」などの許可

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出

国家戦略特別区域法(特区民泊)に基づく認定

これらを取得せずに有料で人を泊めると、いわゆる「違法民泊(ヤミ民泊)」となり、旅館業法違反として「6ヶ月以下の懲役または3万円以下の罰金(無許可営業の罰則は法改正により厳格化され、上限が引き上げられています)」などの処罰の対象となってしまいます。また、予約サイトへの掲載も削除されてしまいます。

行政書士として多くの相談を受けてきましたが、知らずに無許可営業をしてしまっているケースも稀にあります。「知らなかった」では済まされないのが法律の世界ですので、まずは「許可や届出が必須である」という点をしっかりと押さえておきましょう。

(出典:厚生労働省『民泊サービスを始める皆様へ ~住宅宿泊事業法(民泊新法)とは~』)

インバウンド需要と民泊の可能性

コロナ禍が明け、日本には再び多くの外国人観光客(インバウンド)が訪れています。特に円安の影響もあり、海外の富裕層や家族連れが「長期滞在」を楽しむ傾向が強まっているんですよ。

ここで重要なのが、彼らのニーズの変化です。彼らが求めているのは、画一的なビジネスホテルではありません。「日本の日常を体験したい」「広いリビングで家族団欒を楽しみたい」「地元のスーパーで食材を買ってキッチンで料理したい」といった、「暮らすような旅」なのです。これに応えられるのが、ホテルにはない広さと設備を持つ「民泊」なんですね。

特に、日本の伝統的な家屋や、自然豊かな場所にある別荘は、外国人観光客にとって「エキゾチックで特別な空間」として映ります。ただ寝るだけの場所ではなく、「体験価値(コト消費)」を提供できる場所として、民泊のポテンシャルは計り知れません。

また、日本国内の課題である「空き家問題」の解決策としても期待されています。ホテル不足が叫ばれる中、既存のストック(空き家や別荘)を活用できる民泊は、観光立国日本を支える重要なインフラになりつつあります。「古い家だからダメだ」と諦める必要はありません。リノベーションによって、その古さが逆に価値になることも多いんですよ。

民泊の3つの種類とそれぞれの特徴

「民泊を始めたい」と思ったときに最初につまずくのが、法律の種類の多さです。ここが一番ややこしい部分ですが、事業の収益性を左右する非常に重要なポイントです。民泊を始めるには、大きく分けて3つのパターンがあります。ご自身の物件の立地や、どれくらい稼ぎたいかという目標に合わせて選ぶ必要があるんですよ。

わかりやすく比較表にまとめましたので、まずはざっくりと違いを見てみましょう。

制度名 根拠法 年間営業日数 エリア制限 難易度
民泊新法 住宅宿泊事業法 上限180日 ほぼ全域OK

(条例による制限あり)

低い

(届出制)

旅館業法 旅館業法 365日可能 用途地域による

制限あり

高い

(許可制)

特区民泊 国家戦略特区法 365日可能 認定自治体のみ

(大阪など)

中程度

(認定制)

1. 住宅宿泊事業法(民泊新法)

2018年に施行された新しい法律に基づくスタイルです。これが一番手軽に始められる形かなと思います。

最大の特徴は、行政への「許可」ではなく「届出」で済むため、参入障壁が低いことです。また、住居専用地域(いわゆる閑静な住宅街)でも営業が可能であるため、自宅の空き部屋や、住宅街にある実家を活用しやすいというメリットがあります。

しかし、ビジネスとして考えると非常に大きな壁があります。それが「年間営業日数が180日以内に制限されている」ことです。つまり、1年のうち半分しか営業できません。残りの半分は、ご自身で住むか、マンスリーマンションとして貸し出すなどの工夫が必要です。

【民泊新法が向いている人】

  • 「週末だけ」「季節限定」など、副業感覚でライトに始めたい方。
  • 転勤中の持ち家など、将来的に自分たちが住む予定がある物件を活用したい方。
  • 用途地域の制限で、旅館業法の許可が取れないエリアに物件を持っている方。

180日の制限があるため、初期投資(リノベーション費用など)を回収するのに時間がかかってしまうのが難点です。「本格的に事業として利益を出したい」という場合には、少し物足りないかもしれませんね。

2. 旅館業法(簡易宿所営業)

こちらは、ホテルや旅館と同じく「旅館業」の許可を取るスタイルです。本格的にビジネスとして収益を上げたいなら、この許可を目指すのが王道です。リゾートホテルやペンションと同じ土俵で戦うことになります。

最大のメリットは、何と言っても「365日フル稼働が可能」な点です。180日の制限がないため、予約が入れば入るほど青天井で収益が上がります。特に人気エリアであれば、民泊新法と比較して売上が2倍以上になることも珍しくありません。

一方で、ハードルは高くなります。まず、「用途地域」の制限を受けます。学校の近くや静かな住宅街(第一種低層住居専用地域など)では、原則として営業できません。また、消防設備(自動火災報知設備など)や建築基準法の要件も厳しくチェックされるため、改修工事に数百万円単位の費用がかかることもあります。

【旅館業法の注意点】

  • 場所選びが命: そもそも許可が取れない場所(用途地域)を買ってしまうとアウトです。
  • コストがかかる: 消防設備やトイレの数、フロント(玄関帳場)の設置など、設備投資が必要です。
  • 手続きが複雑: 保健所、消防署、建築指導課など、各所との事前協議が必要です。

私がサポートする案件でも、高収益なリゾート民泊や高級ヴィラを目指す場合は、ハードルが高くても資産価値の高まるこの「旅館業許可」の取得をおすすめすることが多いですね。

3. 特区民泊(国家戦略特別区域法)

特定の地域(大阪府全域や東京都大田区、福岡県北九州市など)限定で認められている民泊です。正式には「外国人滞在施設経営事業」といいます。

これは、「民泊新法の手軽さ」と「旅館業法の収益性」のいいとこ取りをしたような制度です。旅館業法のような厳しい用途地域の制限が一部緩和されていたり、フロント設置義務が免除されたりするメリットがあります。そして何より、「365日営業が可能」です。

ただし、一つだけ条件があります。それは「最低宿泊日数が2泊3日(自治体によってはそれ以上)から」という「最低滞在日数」の縛りがあることです。つまり、「1泊だけの利用」は受け入れられません。

とはいえ、海外からの旅行者は連泊することが多いので、インバウンドをターゲットにするなら大きなデメリットにはなりません。もしあなたの物件が特区エリア内にあるなら、この制度を使わない手はありませんよ。

(出典:観光庁『民泊政策について』)

民泊を始めるメリット・デメリット

「民泊って本当に儲かるの?」「トラブルが怖い」という不安もお持ちですよね。良い話ばかりではありません。ここでは、オーナー視点でのリアルなメリットとデメリットを包み隠さずお伝えします。

オーナーにとってのメリット

最大のメリットは、やはり「収益性の高さ(利回り)」です。 一般的な賃貸物件として貸し出す場合、家賃相場が決まっているため、収益の上限は見えています。しかし、民泊として宿泊施設運用すれば、うまくいけば賃貸の2倍〜3倍の収益を生むことも珍しくありません。

資産価値の維持と柔軟な運用

また、お金の面だけではありません。「資産を守る」という意味でも有効です。

  • 空き家の老朽化防止: 人が住まずに閉め切っている家は、湿気がこもり驚くほどの速さで傷みます。民泊として活用し、定期的に清掃や換気が入ることで、建物の寿命を延ばすことができます。
  • 自分も使える「別荘兼民泊」: 賃貸に出してしまうと、オーナー自身は使えなくなります。しかし民泊なら、「自分が使いたいGWやお盆は予約をブロックして家族で過ごし、それ以外の日を貸し出して維持費を稼ぐ」という、理想的な別荘ライフが実現できます。
  • 経費計上の幅が広がる: 事業として行うため、リフォーム費用や家具家電の購入費、固定資産税などを経費として計上でき、節税対策としても有効な場合があります。

注意すべきデメリットとリスク

一方で、ビジネスである以上リスクもあります。ここを甘く見ていると、「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。

【気をつけるべき3つのリスク】

  1. 近隣トラブル・騒音問題:これが民泊最大のリスクです。夜中にゲストがパーティーをして騒いだり、ゴミの分別をせずに捨てたりして、近隣住民からクレームが入ることがあります。最悪の場合、警察沙汰になり営業停止を余儀なくされることも。事前の丁寧な説明や、厳しいハウスルールの設定が必須です。
  2. 清掃・管理のオペレーション負荷:ホテル並みの清潔さが求められます。髪の毛一本落ちているだけで低評価レビューがつきます。ご自身ですべてやるのは肉体的にも精神的にも大変です。プロの清掃業者や管理会社への委託(アウトソーシング)が現実的かつ不可欠です。
  3. 法改正や条例の上乗せ規制:自治体によっては、国の法律よりも厳しい「上乗せ条例」を制定している場所があります(例:住居専用地域では平日営業禁止など)。知らずに物件を買ってしまうと営業できないリスクがあります。

特に近隣トラブルは事業継続に関わる死活問題です。だからこそ、私たち行政書士のような専門家が間に入り、法的な根回しやルール作りをサポートすることが重要なんですね。地域と共生できて初めて、民泊ビジネスは成功します。

今、狙うべきは「リゾート民泊」

ここまで一般的な民泊についてお話ししましたが、私が運営するこの「リゾート民泊の教科書」で最もおすすめしているのが、都心の狭いアパートを使った民泊ではなく、「リゾート民泊(ラグジュアリー民泊)」です。

なぜ都市型ではなくリゾート民泊なのか?

数年前までは、都会のマンションの一室に二段ベッドを並べただけの民泊でも儲かりました。しかし今は違います。そのような物件は供給過多で溢れかえり、激しい価格競争(値下げ合戦)に巻き込まれています。

一方で、海が見える別荘地、温泉付きの戸建て、自然に囲まれた古民家を活用したリゾート民泊は、競合がまだ少なく、圧倒的な「付加価値」を持っています。

「泊まる」ではなく「体験」を売る

富裕層のインバウンド客は、「安く泊まりたい」とは思っていません。「特別な体験をしたい」と思っています。

例えば、「一泊5万円、あるいは10万円以上でも予約が埋まる」ような高級貸別荘スタイル。彼らは、プライベートが確保された一棟貸しで、家族や友人とBBQをしたり、露天風呂に入ったりする時間を求めています。この市場はまだガラ空きで、これから大きな成長が見込める「ブルーオーシャン」なのです。

建設業許可を持つ私の事務所では、単なる許可申請だけでなく、こうした「選ばれる宿」にするためのリノベーションや空間づくりのご提案も行っています。ただ古い家を直すのではなく、「サウナを設置する」「和モダンな内装にする」といった、収益に直結する投資を行うことが成功の鍵かなと思います。

成功への第一歩は「事前調査」から

「よし、リゾート民泊をやろう!」と思ったあなたへ、最後に一つだけアドバイスさせてください。

物件を購入したり、リフォーム工事を契約したりする前に、必ず「その場所で許可が取れるか」の事前調査を行ってください。

「物件を買って、おしゃれにリフォームもしたのに、実は用途地域の制限で許可が下りなかった!」

「消防設備の見積もりを取ったら、想定の3倍の金額がかかって資金ショートした!」

これらは、実際によくある失敗談です。民泊ビジネスは、建築基準法や消防法が複雑に絡み合う世界です。不動産屋さんは「たぶん大丈夫」と言うかもしれませんが、最終的な責任はオーナーであるあなたが負うことになります。

【記事のまとめ】

・民泊は主に「民泊新法」「旅館業法」「特区民泊」の3種類がある。

・365日稼働させて高収益を狙うなら、ハードルは高いが「旅館業法」がおすすめ。

・一般的な賃貸より収益性は高いが、近隣配慮やプロによる管理体制が不可欠。

・これからは価格競争のない、高単価な「リゾート民泊」が圧倒的に有利。

民泊は、正しい知識と戦略を持って取り組めば、あなたの眠っている資産を「金の卵」に変えることができる素晴らしいビジネスです。法律の壁、工事の不安、運営の悩み……わからないことがあれば、いつでも私を頼ってくださいね。一緒に、世界中の人が憧れる素敵な宿を作りましょう。

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