民泊の営業日数180日と365日は制度で変わる(AIイメージ)

民泊の基礎知識

民泊は365日営業できる?180日制限と旅館業・特区民泊の選び方

住宅宿泊事業(民泊新法)の届出だけで、365日宿泊営業をすることはできません。 年間180日を超えて宿泊客を受け入れたい場合は、旅館業の許可や、対象区域で利用できる特区民泊の認定を検討します。

ただし、「年間日数の上限がない制度」と「その物件で365日営業できること」は別です。立地、建物、自治体の条例、管理体制などの条件を満たす必要があり、許可・認定があっても稼働率や収益が保証されるわけではありません。

また、残りの期間をウィークリー・マンスリー賃貸にする方法は、365日「宿泊営業」を認める制度ではありません。契約名を変えるだけでは足りず、住宅の賃貸としての実態を確かめる必要があります。

この記事では、希望する営業日数から制度を選び直すために、確認する順序を整理します。

住宅宿泊事業の180日制限は、何を数える?

住宅宿泊事業では、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないことが必要です。1年間は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで。正午から翌日の正午までを1日として数えます。

これは予約サイトへ掲載できる日数ではなく、実際に人を宿泊させた日数の上限です。複数の予約サイトを使っても、それぞれに180日ずつの枠ができるわけではありません。

さらに、自治体の条例によって、区域や実施できる期間が制限される場合があります。全国共通で「必ず180日使える」と考えず、所在地の条例と営業予定の曜日・時期を照らし合わせてください。

出典:観光庁・住宅宿泊事業の制度と日数の算定、よくあるご質問

日数が足りないときは、まず事業計画を分ける

目指しているのが、年間を通じて旅行者へ宿泊サービスを提供することなのか、住宅として貸す期間も組み合わせて物件を活用することなのかを、先に整理しましょう。

  • 宿泊営業を180日以内で行う:住宅宿泊事業の住宅要件や地域の制限を確認する。
  • 宿泊営業を180日を超えて行う:旅館業の許可、または利用可能な地域の特区民泊を検討する。
  • 宿泊以外の住宅賃貸も行う:宿泊と賃貸の実態を分けて検討する。日数だけで適法性を判断しない。

上限に達してから契約書の表題を変えて受け入れを続けるのではなく、募集や予約を受ける前に制度と運営方法を整理することが大切です。

180日を超える宿泊営業は、旅館業と特区民泊を検討する

制度手続き・年間日数最初に確かめること
住宅宿泊事業届出。年間180日以内法律上の住宅に当たるか、条例の区域・期間制限、管理方法
旅館業(簡易宿所など)許可。住宅宿泊事業のような年間180日上限はない用途地域、建物・消防、営業種別ごとの施設・管理基準
特区民泊認定。年間営業日数の上限は設けられていない対象区域、現在の新規受付状況、最低滞在日数、施設・運営条件

出典:観光庁・3つの制度比較

住宅宿泊事業と旅館業の違いを、住宅の使い方や不在時の管理まで比べたい方は、民泊新法と旅館業(簡易宿所)の違いをご覧ください。

旅館業は、日数だけでなく物件が許可基準に合うかを見る

旅館業には簡易宿所営業、旅館・ホテル営業などの区分があります。小さな建物だから必ず簡易宿所になるわけではなく、施設の構造や営業形態に応じて、所在地を管轄する保健所等と営業区分を確認します。

住居専用地域など、旅館業を行えない場所もあります。住宅宿泊事業として使える物件が、そのまま旅館業へ切り替えられるとは限りません。

建物についても、現在の用途、構造、階数、面積、避難経路、改修計画などの確認が必要です。用途変更の確認申請が不要となる場合でも、建築基準法などへの適合確認が不要になるわけではありません。 「200㎡以下だから改修も確認も不要」と判断しないでください。

出典:観光庁・旅館業法について、名古屋市・既存建築物の用途変更

簡易宿所を候補にする場合の要件や事前相談、申請準備は、簡易宿所営業許可の取り方で詳しく整理しています。

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特区民泊は、全国どこでも新しく選べる制度ではない

特区民泊は、認定を行う対象区域で、自治体が定める要件に適合する必要があります。年間日数の上限がない一方、最低滞在日数の条件があるため、1泊中心の事業計画にもそのまま当てはまるわけではありません。

大阪市では2026年5月29日をもって、新規申請と居室追加・床面積増加に関する変更申請の受付が終了しています。 これから新しく始める方は、大阪市で特区民泊を新規申請することを前提に物件を契約しないでください。

一方、受付終了は、認定済み施設が一斉に営業できなくなるという意味ではありません。新規開業と既存施設の継続・変更は分けて確認します。また、大阪市以外では取扱いが異なるため、「大阪府内なら同じ」と考えないことも重要です。

出典:大阪市・特区民泊の新規受付終了について、現在の手続き案内

大阪市の受付終了後の対応や2泊3日ルール、府内の地域差は、大阪の特区民泊ガイドをご確認ください。

ウィークリー賃貸との併用は「宿泊日数の抜け道」ではない

住宅宿泊事業と住宅賃貸を組み合わせる計画では、宿泊として受け入れる期間と、住宅として貸す期間を区別します。「180日宿泊+残りを賃貸」と書くだけで、通年の宿泊営業が適法になるわけではありません。

旅館業に当たるかどうかは、契約の名称だけでなく、施設の管理・経営形態を全体として見て判断されます。利用者に生活の本拠があるか、衛生上の維持管理責任を誰が担っているか、利用の目的や反復する受入れの実態などが重要です。

厚生労働省の通知には、利用中の清掃を利用者が行い、リネンサービスを行わない形でも、全体の実態から旅館業の適用対象とされた例があります。「清掃をしなければ賃貸」「30日以上なら許可不要」「予約サイトを分ければ適法」といった一つの条件だけで判断しないでください。

出典:厚生労働省・旅館業法運用上の疑義について(昭和63年1月29日)

賃貸との併用を考える場合は、募集内容、契約案、利用期間・目的、清掃や寝具の管理方法をまとめ、保健所等へ実態を伝えて確認します。定期借家契約の手続きと、旅館業に該当するかの判断も別の問題です。

詳しい区別と契約上の確認点は、ウィークリーマンションと旅館業許可・賃貸借契約の考え方をご覧ください。

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物件契約や改修の前に、4つの条件をそろえる

「年間日数の上限がない」という理由だけで制度を決めず、次の順序で物件と運営計画を確認すると、見直すべき点を整理しやすくなります。

1.所在地と条例を確認する

物件の住所を特定し、用途地域、自治体の条例、制度の対象区域や受付状況を確認します。保健所等には、希望する営業日数、宿泊定員、1泊中心か連泊中心かを伝えましょう。

2.建物・消防の対応を確認する

間取り図、各階の面積、構造・階数、現在の用途、確認済証・検査済証など手元にある資料をそろえ、建築担当部署・建築士、消防署に相談します。必要な改修や消防設備は、建物全体の使われ方によっても変わります。

設備費の一律の相場だけで予算を決めず、その物件の必要工事について見積りを取ってください。建物の調査・設計、消防設備、衛生設備などを分けて把握すると、計画を見直しやすくなります。

3.所有者の承諾と管理規約を確認する

自分の所有物件でなければ、賃貸借契約の使用目的や転貸の条件を確認します。分譲マンションでは管理規約等の確認も必要です。行政上の許可・届出だけで、所有者との契約や管理規約の問題が解決するわけではありません。

「民泊可」という説明だけでなく、今回予定する旅館業や特区民泊、住宅賃貸を含む利用方法が認められるかを、書面で確かめましょう。

4.開業後の管理を続けられるか確認する

清掃だけでなく、本人確認、名簿、衛生管理、近隣からの苦情、緊急時の連絡・現地対応について、誰が何を担当するかを整理します。住宅宿泊事業で家主が不在になる場合は、原則として登録された住宅宿泊管理業者への委託が必要です。旅館業や特区民泊は、それぞれの制度と所在地の管理基準を確認します。

出典:観光庁・住宅宿泊事業法の概要、厚生労働省・民泊サービスと旅館業法に関するQ&A

365日営業を前提にせず、使える制度から収支を組み直す

営業できる日数と、予約が入る日数は同じではありません。清掃・点検のために使えない日や、需要の少ない時期も考え、売上だけでなく管理費、修繕費、設備点検などの継続費用も確認しましょう。

日数を増やしたいのに、その物件で旅館業や特区民泊を利用できない場合は、無理に契約名を変えるのではなく、住宅宿泊事業の範囲内で計画を組み直す、住宅賃貸としての活用を検討する、別の物件を探すという選択肢があります。

大切なのは「365日営業できる方法」を先に決めることではなく、その場所・建物で使える制度と、続けられる管理方法を確かめることです。

自分で準備する場合も、まずは所在地の公的窓口へ相談できます。制度の選択や手続きについて相談したい方は、物件所在地、図面・面積、希望する営業日数・定員、現在の届出・許可の有無を整理して、民泊の相談フォームからお問い合わせください。

いきなり契約する必要はありません。依頼する場合は、対応範囲と費用を確認してから判断できます。

制度情報の確認日:2026年10月22日。

  • この記事を書いた人

小野馨

リゾート民泊専門の行政書士/リゾート民泊コンシェルジュ。 富裕層向けの別荘や高級マンションを活用した「高収益民泊」の立ち上げに特化。 旅館業法・特区民泊・民泊新法の複雑な法規制を紐解き、用途地域や上乗せ条例が厳しいエリアでも最適な許可取得スキームを構築する。 2025年の法改正も見据えたコンプライアンス重視の戦略で、資産価値を守りながら利益を最大化する「攻めと守りの民泊経営」を各分野の専門家とチームでトータルサポートしている。

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