住宅宿泊事業(民泊新法)では、届出住宅ごとに、所定の標識を公衆の見やすい場所へ掲示する必要があります。 玄関や門扉が候補になりますが、先に確認したいのは「自分の管理形態に合う様式」と「届出先自治体の交付・掲示の案内」です。
「マンションの部屋の前だけでよい?」「市販のステッカーを買ってもよい?」「電話番号まで載せる?」。こうした疑問は、すべて同じ答えになるわけではありません。この記事では、公式様式の入手から記載内容、戸建て・マンションでの掲示、設置後の点検までを順に整理します。
まず、住宅宿泊事業の標識かを確認する
住宅宿泊事業の標識は、施設の名称を表示する看板や、予約サイトのロゴ入りステッカーとは別のものです。住宅宿泊事業法第13条に基づく標識には、「許可番号」ではなく「届出番号」を表示します。
旅館業の許可や特区民泊の認定で営業する施設には、以下の第四号~第六号様式をそのまま使いません。住宅宿泊事業の届出自体をこれから確認する方は、民泊新法の届出ガイドもご覧ください。
旅館業の許可証や施設標識については、所在地の条例・規則・保健所の案内を確認します。「全国どこでも旅館業法によりロビーへの許可証掲示が義務」と一括りにするのは適切ではありません。例えば京都市は、営業者名、施設名、営業種別を記載した標識を施設外部から見やすい場所へ掲示するよう案内しています。これは京都市の制度として確認する内容です。京都市・旅館業の適正な運営と標識の例
公式様式は3種類。管理形態に合わせて選ぶ
住宅宿泊事業の標識は、住宅宿泊事業法施行規則第11条により区分されています。「家主居住型・家主不在型」という呼び方だけで選ばず、誰がどの条件で管理するかを確認してください。
| 様式・入手先 | 使用する区分 | 共通項目に加わる記載欄 |
|---|---|---|
| 第四号様式(公式PDF) | 自ら管理する事業者のうち、下の第五号・第六号に該当しない場合 | 緊急連絡先欄はない |
| 第五号様式(公式PDF) | 法第11条第1項第2号の省令で定める例外に該当し、自ら管理する場合。ただし住宅宿泊管理業者である者を除く | 住宅宿泊事業者の緊急連絡先 |
| 第六号様式(公式PDF) | 住宅宿泊管理業者へ管理を委託する場合。または、事業者自身が住宅宿泊管理業者で、宿泊中に不在となり自ら管理する場合 | 住宅宿泊管理業者の名称・登録番号・緊急連絡先 |
3種類に共通するのは、届出番号、届出年月日、届出を受理した自治体の長の名称などです。第六号様式では、住宅の届出番号と、管理業者の登録番号は別の欄に記載します。
第五号様式の例外は、生活の本拠が届出住宅と同一建物・敷地内または隣接する場所にあることなど、施行規則第9条第4項の条件に関係します。単に「近くに住んでいる」だけで選べるものではありません。委託が必要か迷う場合は、住宅宿泊管理業者への委託が必要になる条件を確認し、届出先に管理体制を説明して様式を確定しましょう。
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電話番号は、すべての標識に一律で書くわけではない
第四号様式には緊急連絡先欄がなく、第五号・第六号にはあります。全員に個人の携帯電話番号を公開させる共通様式ではありません。該当する欄と自治体の案内に従い、実際に対応できる連絡先を記載してください。
また、標識に連絡先欄があるかどうかと、周辺住民からの苦情・問い合わせに対応する体制を整えることは別です。連絡先を変えるときは、標識だけでなく、管理担当者との連絡方法も一緒に見直しましょう。
標識の入手・作成は、届出先の案内から始める
自治体から交付されるか、自分で用意するかを確認
まず届出先へ「標識は交付されるか」「いつ、どの方法で受け取るか」「自作や再発行の扱いはどうなるか」を確認します。例えば神戸市の現行ガイドブックでは、届出受理後、区分に応じて標識を発行すると案内しています。神戸市・住宅宿泊事業の案内
自分で用意するよう案内された場合は、観光庁の関連法令・様式集から「住宅宿泊事業関係様式」の標識を取得できます。同じページにある住宅宿泊管理業者の営業所用標識とは異なるため、様式名も照合してください。
サイズと色は、公式様式を基準にする
第四号~第六号の公式様式には、縦170mm・横120mmの寸法が示されています。地色は白、標章は青です。「A4サイズ以上ならよい」「建物に合わせて背景を黒や金に変えてよい」という説明で作らないでください。
PDFを印刷するときは、用紙の大きさと標識そのものの仕上がり寸法を区別します。印刷設定による拡大・縮小で寸法が変わっていないか、実物で確認しましょう。
建物の外観を整えたい場合も、先に標識の様式を守ることが基本です。保護ケースや固定方法を工夫する場合は、文字や標章が隠れないものを選びます。真鍮やアクリルなどの特注品を発注する前に、配色・寸法・記載欄を含む完成見本を届出先へ示すと、作り直しを避けやすくなります。
届出前は「準備」と「届出済の表示」を分ける
届出前に、掲示位置を検討したり、必要なケースを調べたりすることはできます。ただし、番号を推測して印刷したり、他の住宅の番号を流用したりしてはいけません。標識を購入・設置しても、届出の代わりにはなりません。
届出番号などが確定したら、届出先の通知・交付標識と照合し、営業開始に間に合うよう掲示を整えます。自治体から開業前の周知・掲示について案内を受けた場合は、それがこの記事の「届出済」の標識と同じものかも確認してください。
玄関のどこに貼る?法的義務と設置の目安
法令上の軸は、届出住宅ごとに、所定様式を公衆の見やすい場所へ掲示することです。一方、国の住宅宿泊事業法施行要領(29~30頁)は、次の方法を望ましいものとして示しています。
- 門扉や玄関などで、概ね地上1.2~1.8mの認識しやすい位置を選ぶ。
- ラミネート加工など、風雨に耐えやすい作成・加工を行う。
- 集合住宅では個別住戸に加え、共用エントランスや集合ポストなどへ簡素な標識を掲示する。
これらを「その高さから少しでも外れれば全国一律で違法」「必ず特定素材を買う義務」と読み替えないことが大切です。ただし、自治体の掲示案内も確認する必要があります。例えば神戸市はガイドブックで上記の高さを用いて掲示を案内しています。
戸建て:玄関だけで見えるかを確かめる
門扉や玄関ドアの横などが候補です。植栽で隠れないか、扉を開けたときに見えなくならないか、ガラス越しの場合は反射で読みづらくならないかを、現地で確かめましょう。
道路から玄関まで離れている住宅や旗竿地では、玄関だけに掲示しても分かりにくいことがあります。国のガイドラインでは、そのような場合に簡素な標識を追加することが望ましいとされています。「必ず公道との境界に新しい看板を立てる」という一律のルールではありません。
設置位置に迷うなら、工事を進める前に道路側からの写真、玄関付近の写真、掲示予定位置が分かる図を揃えて、届出先へ相談してください。
マンション:住戸用と共用部の案内を分ける
オートロックの内側にある住戸前だけでは、外から来た人が標識を認識しにくい場合があります。個別住戸の標識に加えて、共用エントランスや集合ポストなどにどのような簡素な標識を付けるかを検討します。
簡素な標識は、標識の一部を掲示可能なスペースに合わせて示す方法などが想定されています。共用ポストの小さな表示だけで、住戸の所定標識まで省略できるという意味ではありません。
分譲マンションでは、共用部に無断で貼り付けず、管理組合と掲示位置・固定方法を事前に相談しましょう。承諾を得られない場合も、見えない場所に移して終わりにせず、建物の写真と管理規約等を用意して、届出先と管理組合の双方に確認します。
設置した後も、読める状態と最新の内容を保つ
標識は、宿泊客がいる日だけ出すものではありません。国のガイドラインは、住宅宿泊事業を実施している間の継続掲示を求めています。入居者募集をしている住宅で、入居者が決まり賃貸使用している間も掲示が必要とされています。
標識の点検は、清掃や設備確認と一緒に行うと管理しやすくなります。
- 剥がれ、退色、汚れで届出番号や連絡先が読めなくなっていないか。
- 植木や荷物などで隠れていないか。
- 管理業者・緊急連絡先などが現在の届出内容と一致しているか。
- 固定が緩んだり、通行・扉の開閉を妨げたりしていないか。
取り付け用品は、壁材や設置環境に合うものを選び、製品の使用条件に従います。「強力テープなら外壁を傷めず必ず剥がせる」とは限らないため、賃貸物件では所有者等に固定方法も確認してください。
管理業者を変更するときは、標識の差し替えだけで手続が完了するわけではありません。管理委託の変更は事前の届出が必要です。変更手続と、新しい標識の交付・記載内容を併せて届出先へ確認しましょう。
設置前に確認したい5つのこと
- 自分の施設は住宅宿泊事業か。旅館業・特区民泊の表示と取り違えていないか。
- 管理形態に合う様式で、届出番号・届出年月日・必要な連絡先等が正しいか。
- 自治体の交付・作成方法を確認し、公式様式の寸法・配色を守っているか。
- 住戸、玄関、共用部などの掲示予定位置を確認し、必要な相談を済ませたか。
- 見やすさ、固定、通行の安全、変更時の差し替え方法を確認したか。
標識の様式や交付方法だけであれば、まず届出先に確認するのが近道です。窓口は観光庁・各自治体の情報・窓口案内から探せます。
管理委託の要否や届出内容も含めて整理したい場合は、所在地、予定する運営・管理方法、掲示予定場所の写真を用意すると相談が進めやすくなります。民泊の届出・運営準備について相談する