マンションで民泊を始めるにあたり、最初に確認すべきは管理規約の具体的な条文です。
自分が所有する部屋であっても、管理規約で禁止されている使い方を、所有者の判断だけで始めることはできません。
一方、「民泊禁止と書かれていないから大丈夫」「管理会社がよいと言ったから開業できる」とも限りません。実際の規約と管理組合の決議を確認し、必要な手続を分けて考えることが大切です。
この記事では、主に住宅宿泊事業法に基づく民泊を検討している区分所有者に向けて、規約の読み方、定めがない場合の確認書類、規約変更と管理組合への説明手順を整理します。
購入や改修の費用をかける前に、まず自分の物件がどの段階にあるかを確かめましょう。
民泊の制度や開業までの流れを、全体から知りたい方はこちら。
-
-
リゾート民泊の始め方|許可・届出と物件選び、開業準備の進め方
別荘の使わない日を旅行者に貸したい。購入予定の空き家を、一棟貸しの宿にしたい。 そんな計画では、内装や集客方法を決める前に、希望する営業の仕方と、その場所・建物で使える制度が合っているかを確かめるとこ ...
続きを見る
マンションの一室で民泊はできる?管理規約と確認資料を調べる
管理規約を取り寄せたら、住宅宿泊事業について「禁止」「認める」「定めがない」のどれに当たるかを確認します。
ただし、特定の条件でのみ認める規約もあるため、結論だけでなく対象と条件まで読む必要があります。
| 規約の状態 | 判断のポイント | 次にすること |
|---|---|---|
| 住宅宿泊事業を禁止している | 禁止を無視して届出・営業を進めない | 規約変更の検討が可能かを管理組合へ確認する。難しければ別の物件・活用方法を検討する |
| 住宅宿泊事業を認めている | 認められた運営形態や条件に合うか確認する | 規約の写しを準備し、住宅の要件・条例・消防など、残りの条件を確認する |
| 住宅宿泊事業の定めなし | 記載がないだけでは実施できると判断しない | 総会・理事会で禁止方針の決議がないかを確認し、届出に必要な書類を整える |

先に内装や設備へ費用をかけるより、まず「この運営方法が規約に合うか」を確かめる順番をおすすめします。
認められる条件を運営計画に落とし込めれば、管理組合に何を説明し、役所に何を相談するかも整理しやすくなります。
管理規約の確認は、届出準備の一部です。住宅の要件・必要書類・180日ルールも先に把握したい方は、民泊新法の届出ガイドをご覧ください。
-
-
民泊新法の届出ガイド|住宅の要件・必要書類・180日ルールを解説
住宅宿泊事業法(民泊新法)とは、一般の住宅を活用して宿泊サービスを提供するための法律です。 住宅宿泊事業として始める場合は、住宅の所在地を管轄する自治体へ届出を行います。 ただし、届出さえ出せば、どの ...
続きを見る
「民泊」という言葉がなくても、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を禁止する規定などに該当する場合があります。
また、一部の運営形態だけを認める規約では、その範囲外の運営はできません。
観光庁の届出案内でも、この点が示されています。
ココに注意
規約上認められていることは、開業条件の一つを確認できたという意味です。すぐ営業できるという意味ではありません。
最新の管理規約と、関連する議事録を取り寄せる
標準管理規約はひな形。確認するのは自分のマンションの規約
国土交通省の「マンション標準管理規約」は、各管理組合が規約を作成・改正するときに使うひな形です。
標準管理規約が改正されても、各マンションの民泊に関する条項が自動的に書き換わるわけではありません。
標準管理規約には、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の規定例があります。
比較の参考にはなりますが、判断の出発点は、対象マンションで実際に効力を持つ規約です。
国土交通省は2025年10月改正の標準管理規約を公開しています。
区分所有者の方は、管理組合の理事長等または資料を管理する管理会社に、次の資料の入手・閲覧方法を尋ねてください。
購入前なら、売主や仲介会社に資料の取り寄せと管理組合への照会方法を相談します。
管理会社は資料を集める窓口にはなりますが、担当者の返答だけで規約が変わるわけではありません。
- 現在の管理規約と、その後の改正内容が分かる資料
- 専有部分・共用部分の使用に関する細則
- 民泊や宿泊利用の方針を扱った総会・理事会の議事録
- 規約変更や民泊に関する議案が現在検討されている場合、その内容が分かる資料
古い分譲時の冊子だけでは、その後に追加された禁止条項を見落とすことがあります。
資料を受け取ったら、取り寄せた相手に「この資料が最新版か」「冊子に反映されていない変更はないか」を尋ね、回答日と資料の版を控えます。
最新版か分からない間は、手元の冊子だけで民泊が可能だと判断しないでください。
「専ら住宅として使用する」という条文も、前後と併せて確認する
規約では、専有部分の用途、営業利用の制限、宿泊事業の扱い、共用部分の使用などを確認します。条文名や番号はマンションによって異なるため、「第12条だけを読めばよい」とは限りません。
「専ら住宅として使用する」という文言だけを抜き出して、民泊の可否を自己判断しないでください。ほかの禁止条項や例外、使用細則、管理組合の決議との関係まで確認する必要があります。
ココがポイント
管理会社の担当者への問い合わせは、資料を集める入口として役立ちます。ただし、担当者の口頭回答は、管理組合の決議や規約変更そのものではありません。「できると聞いた」で終わらせず、どの条項・決議に基づく回答かを確認し、資料と一緒に記録を残しましょう。
管理規約の内容に応じて、確認・変更・説明を進める
規約に定めがない場合は「禁止する意思がないこと」の確認へ進む
届出では規約の写しに加えて、誓約書や議事録等を確認する
住宅宿泊事業の届出では、区分所有の建物について、規約の写しが必要です。住宅宿泊事業について定めがない場合には、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類も必要になります。
観光庁は、この確認に使う資料として、届出時点で総会・理事会に禁止方針の決議がない旨を確認した誓約書(様式C・PDF)、または住宅宿泊事業法成立以降(2017年6月以降)の総会・理事会の議事録等を示しています。
様式Cを使う場合も、実際に確認していない内容を記入してよいわけではありません。
ここで大切なのは、単に「規約に民泊という文字がない」と説明するのではなく、管理組合として禁止する方針を決議していないか、届出時点の状況を確かめることです。
返事がない、資料を確認できない場合は、推測で誓約しない
理事長から返事がない、議事録の所在が分からない。
ここで「禁止されていないはず」と先へ進むのは避けましょう。
まず、管理組合への実施報告と、資料を集めるための管理会社への問い合わせを分けます。
観光庁の様式Cでは、実施を報告する相手は理事長等の管理組合役員とされ、報告日、役職・氏名、民泊に関する決議の有無などを記載します。
管理組合が管理業務を委託している管理会社は連絡先として記載できますが、その会社へ連絡しただけで確認が済むわけではありません。
管理組合の役員には、対象の部屋と予定する住宅宿泊事業の運営形態を伝え、現在の規約と、禁止方針に関する総会・理事会の決議の有無を尋ねます。
管理会社には、最新版の規約・使用細則・関連議事録の入手や閲覧方法を相談します。
回答を得たら、相手・日付・根拠となる条項や議事録を一緒に記録しましょう。
それでも確認できないときは、物件所在地の住宅宿泊事業の届出窓口へ、手元の規約、問い合わせの控え、確認できていない事項を示します。
「規約には住宅宿泊事業の記載がないが、禁止方針の決議を確認できていない。届出前に何を確かめ、どの資料を整える必要があるか」と具体的に相談してください。
確認が済むまでは、禁止意思がないと推測して誓約書を作成しないことが大切です。
通知書を送った控えや配達記録は、連絡した事実の記録にはなります。
しかし、それだけで管理組合に禁止する意思がないことを確認できたと扱ったり、必要な添付書類に自動的に代えたりはできません。
届出先の案内に沿って、確認方法と提出書類を整理してください。
禁止規約を変更するには、総会の決議と手続の確認が必要
禁止規約がある場合、理事長や管理会社の個別の了承だけで、規約を変更したことにはなりません。変更を提案するなら、管理組合の手続に沿って、規約改正案を総会で審議する必要があります。
ココがポイント
なお、住宅宿泊事業について定めがない場合に必要な「禁止方針がないことの確認」と、禁止規約そのものを変更する手続は別のものです。
2026年4月から、規約変更の決議要件が変わっている
2026年4月1日施行の改正区分所有法では、規約変更の決議について、従来の「全区分所有者・全議決権の各4分の3以上」という説明を、そのまま使うことはできません。
現行の区分所有法第31条では、次の条件を分けて確認します。
- 集会の成立に必要な出席(定足数):議決権を有しない者を除く区分所有者の過半数で、かつ議決権の過半数を持つ者の出席が必要です。規約でこれを上回る割合を定めている場合は、その割合以上が必要です。
- 可決に必要な賛成:出席した区分所有者の数と、その議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成が必要です。
- 特別な影響を受ける人の承諾:規約変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾も必要です。
同法第39条では、書面や代理人により議決権を行使した人も、出席した区分所有者の数と議決権に算入します。
「会場に来た人数だけ」を数えるわけではありません。
また、議決権は必ずしも1戸1票とは限らないため、人数と議決権を分けて集計します。
例として、議決権を持つ区分所有者が100人で各1票、規約による定足数の上乗せ等がなく、適法な書面・代理行使を含め60人・60票が出席した場合を考えます。
この場合、定足数を満たし、規約変更の賛成には45人・45票以上が必要です。
ただし、特別の影響を受ける人の承諾など、ほかの必要条件を省略できるという意味ではありません。
古い規約の記載と、総会の招集時期にも注意する
改正法に抵触する従前の規約の定めは、施行日から効力を失うとされています。
ただし、旧法に基づく総会の招集手続が2026年3月31日までに開始されていた場合は、会議の開催が4月以降でも、従前の例によります。
このため、過去の決議を確認する際も、開催日だけで新旧のルールを判断しないことが重要です。
国土交通省の規約改正手続の留意点(PDF)では、標準管理規約に準拠したマンションを例に、招集時期による違いを説明しています。
規約変更を提案する場合は、管理組合の理事長等に、議案を提出する方法と時期、招集手続、必要な資料を尋ねます。
管理会社が事務を支援している場合でも、規約変更を決めるのは担当者ではなく、所定の手続による総会です。
定足数と票の集計方法、特別な影響を受ける人の承諾も、規約案と併せて整理します。
規約の解釈や決議の有効性について対立があるときは、管理規約、該当する議案・議事録、相手とのやり取りを整理して弁護士へ相談してください。
「どの条文の解釈が分かれているか」「どの決議の効力が問題なのか」を伝え、争いが整理できないまま営業や改修を進めないようにします。
管理組合への説明は、住民の生活への影響から始める
管理組合に検討を求める際は、収益性や宿泊単価の話より先に、「住民の生活にどのような影響があり、誰がどう対応するか」を説明しましょう。
高価格帯の宿泊施設であっても、騒音やごみ出しの問題が起きないとは限りません。「良いお客様だけを呼びます」という約束ではなく、運営上の対策を示すことが大切です。
説明資料にまとめたい内容
次の表は、管理組合への説明資料に盛り込む内容の整理例です。すべてのマンションに共通する法定様式ではありません。
| 住民が気になること | 説明資料に書くこと |
|---|---|
| 誰が、どのくらい出入りするのか | 対象の部屋、運営者、予定する人数・利用形態、鍵の受渡し方法 |
| 夜間の騒音や共用廊下での会話 | 宿泊者への事前案内、禁止事項、問題発生時の連絡先と対応方法 |
| ごみが放置されないか | ごみの保管・回収方法、清掃担当、マンションのルールとの調整 |
| 苦情を管理組合が引き受けるのか | 事業者側の窓口、現場対応の担当、対応内容の記録・報告方法 |
| 共用部分に設備を設置するのか | 工事・設置の範囲、必要な承認の確認、維持管理と費用負担 |
| 約束が守られなかったらどうするのか | 改善の手順、管理組合への報告、運営を見直す条件 |
防犯カメラやスマートロックを提案する場合も、共用部分へ自由に設置できるわけではありません。
設置の承認、管理方法、費用負担などを別に確認します。
共用部分の清掃を申し出る場合も、既存の管理業務と調整せずに約束しないようにしましょう。
提案から決議までの順番を確認する
最初から賛成票を集めるのではなく、管理組合の理事長等に、民泊の計画を検討してもらう窓口と議案提出の手順を聞きます。
上の表を参考に運営計画を示し、住民が心配している点を聞いて、計画や規約案を見直します。
返答や検討の見通しが得られない場合も、それを承認とは扱わず、購入・改修などの支出を先行させないことが大切です。
規約変更が必要なら、所定の手続による総会の審議・決議へ進みます。決議後も、議事録、変更後の規約、効力が生じる時期や付された条件を確認してから、届出等の準備へ反映してください。
管理組合には、住環境を踏まえて民泊を認めない判断をする場合もあります。
説明を尽くせば必ず承認されるわけではありません。
合意の見通しが立たないまま購入・改修を進めず、別の物件や利用方法を検討することも大切な判断です。
開業に必要な準備と相談先を整理する
ココに注意
規約の問題を整理できても、それだけで開業の準備が完了するわけではありません。次の確認を並行して進めます。
- 住宅の要件・自治体のルール:住宅宿泊事業の対象となる住宅か、所在地の条例や届出手続に合うかを届出先へ確認します。
- 消防・建物の条件:図面と運営計画を用意し、管轄消防署や関係窓口へ相談します。必要な設備を面積比率一つだけで自己判断しないでください。
- 住宅ローン・保険等の契約:利用目的や補償の条件を確認し、民泊として使う計画を金融機関・保険会社等へ説明します。可否や必要な変更は、個々の契約に沿って確認します。
- 借りている部屋の場合:管理規約とは別に、賃貸人等から住宅宿泊事業を目的とする使用・転貸の承諾を得られるか確認します。
借りている部屋で進める方は、貸主の承諾と賃貸借契約で確認したい条件もご覧ください。
-
-
賃貸物件で民泊を始めるには|大家の承諾・転貸承諾書と契約前の確認
「賃貸物件で民泊を始めたいが、大家さんにどう切り出せばいいかわからない」「無断で始めて、後から契約解除されるのが怖い」。 賃貸物件で民泊を始めるなら、まず確認するのは、誰が、どの営業方法で使うことまで ...
続きを見る
消防については、消防庁の民泊に関する案内にも資料があります。住戸内だけで判断せず、建物の状況を示して必要な対応を確認しましょう。
旅館業の許可で運営する計画なら、住宅宿泊事業の届出とは条件が異なります。
また、制度を変えれば管理規約の制限を回避できるわけではありません。
どちらの制度で検討するか迷っている場合は、冒頭の総合案内で違いを整理してから、物件に合う制度を検討してください。
まず規約を手元に。分からない点を分けて、次の一歩へ
最初に知りたいのは、「この部屋で民泊をしてよいのか」「認められるなら、どんな条件があるのか」です。
まだ規約が手元にない方は、管理組合の理事長等や資料を管理する管理会社へ最新版を求めるところから始めましょう。
購入前の方は、売主・仲介会社に取り寄せと照会方法を相談してください。
資料が揃ったら、対象の部屋と予定する運営形態を管理組合の理事長等に伝え、該当する条文、民泊に関する決議、守るべき条件を尋ねます。
回答した人・日付・根拠の資料を控え、禁止なら営業を進めない、認められるなら残る開業条件へ進む、定めがなく方針も分からないなら届出窓口へ相談する、という順番で判断します。
「規約はあるけれど、自分の計画で何を整理すればよいか分からない」「管理組合と役所に聞くことを分けたい」。
その段階から、当事務所にご相談いただけます。
物件の住所、手元の管理規約・使用細則・関連議事録、予定する運営形態と、いま確認が止まっている点をお知らせください。
資料が全部揃っていなくても、あるものと足りないものを伝えていただければ結構です。
民泊の許可・届出に向けた役所への事前相談、必要資料の整理、申請書類の作成・提出、提出後の補正対応まで承ります。
管理組合の承認や許可を保証するものではありません。
まずは下の無料相談から、現在の状況をお聞かせください。
